最近、「シェアリングビジネス」や「シェアリングエコノミー」なんていう言葉をよく耳にしますが、どういう意味なのでしょうか。これについては、経済の流れを考える必要があります。バブル時代に象徴される「ハイパー消費経済」は、モノを過剰に所有する時代でした。しかしバブル崩壊、リーマンショック以後、モノを所有しているだけでは意味がない気づきが生まれ、個人所有のあらゆるモノを収入に結び付けたり、みんなで共有したりするほうが活かされるのではないかという意識へと変わっていったのです。これが所有からシェアする価値観への転換につながってきたわけです。

もともと共有するという価値観は、昔からありました。貸し本、貸し衣装、レンタカーなどという業種もあったくらい、モノを大事にしてきた経験、あるいは必要な時に借りる便利さを追求してきた経験があるのです。しかし、インターネットの普及やSNSによって、シェアする情報と機会が爆発的に拡大し、経済的効果も一気に膨れ上がってきました。

マーケティングリサーチの大手であるニールセンが2013年に実施した広告信頼度調査では、世界の消費者の84%が友人、家族の口コミをもっとも影響力のある情報源と位置付けていると報告しています。昔から、口コミによる宣伝効果が大きかったのですが、テレビなどのマスメディアの時代を経て、さらにその確信が強まったということでしょう。SNSを使えば、利用者の感想や評価が反映されるので、口コミと同じような効果が期待できます。TVCMや番組のやらせ感が誰にもわかる時代は、宣伝ツールがSNSの本音にとって代わろうとしています。それが今のシェアすることへの壁をなくしつつあるといえるのではないでしょうか。今後もシェアリングエコノミーの発展に注目すべきでしょう。

どんな業種で展開されているのだろう

持て余しているモノを役立てる方法はないか、という発想は、景気が低迷しはじめると当然起こるわけで、そこにIoTが加わって、シェアリング経済が拡大しているという流れは理解できたと思います。そこに企業が着目し、ビジネスを興すことで、シェアリングビジネスが生まれます。有名なのが、米国ボストンで2000年に始まったカーシェアリングのビジネス「Zipcar」。空いている車を貸し出して、安く乗れ、貸した人には収入があるというモノ共有ビジネスの一つです。
では現在、どんな業種でシェアリングビジネスが展開されているか、挙げてみましょう。

■モノ

自動車
自転車
工具

■スペース

家(シェアハウス、民泊)
ホテル
会議室
駐車場

■手段

相乗り(移動手段)
荷物の集配

■リソース

労働力
お金
技術

総務省がシェアリングエコノミーについて、<「シェアリング・エコノミー」とは、典型的には個人が保有する遊休資産(スキルのような無形のものも含む)の貸出しを仲介するサービスであり、貸主は遊休資産の活用による収入、借主は所有することなく利用ができるというメリットがある。>と捉えているように、さまざまな業界に及びます。

業界的なくくりでは、ホテル業、飲食業、自動車産業、ファッション、家庭用品、物流、資産運用、清掃、ベビーシッター、派遣、エネルギーなど幅広い分野に及んでいます。さらには、シェアリングにより発生する事故や補償問題を扱うための保険業界も動き始めています。しかし、シェアリングにおけるビジネスのくくり方は、業種業界というよりも、扱うアイテム、コンテンツによってビジネスが展開していくという風に考えた方がいいのかもしれません。つまりシェアリングエコノミーそのものがアイテムごとの新しい市場を作り出しているといえるでしょう。

シェアリングエコノミーはどこまで拡大するか

2016年にトヨタが、スマートフォンアプリでハイヤーを配車できるUber(ウーバー)に参入し、ドイツのダイムラーBMWがカーシェアリングサービスに参入するなど、自動車業界さえもシェアリングビジネスに乗り出した今、市場は、所有よりも共有に向かって拡大を加速しているように見えます。なお、市場拡大のスピードについては、2016年2月PWC調べの数字に表れています。そこでは、2013年に約150億ドル市場だったものが、2025年には3350億ドルにまで拡大するだろうという予想が発表されています。日本においても、2020年には600億円規模(矢野経済研究所)という予測が発表されています。

アメリカの経済学者は、今後20年間でシェアリングエコノミーは、エネルギー業界から家庭用品にまで範囲を拡大させ、ヒューマンリソースの分野でも「プロ」ではなくアマチュアのベテランの力を共有するような市場になっていくだろうと述べています。エネルギー分野では、すでに広まっている太陽光発電の電力シェアがさらに拡大し、10年15年後には巨大な市場になっているかもしれないといいます。

所有から共有へ、という価値観の移行は、現状でも生産性を向上させる力を秘めています。さらなる技術の発展は、また新しいビジネスのデザインをつくり上げていくことでしょう。
そんなシェアリングエコノミーについて、シリーズで追跡していきたいと思います。

取材・記事制作/ナカツカサ ミチユキ

ノマドジャーナル編集部
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