左:スガ(取締役)、中央:新(CEO)、右:鼈宮谷(広報)

前回の「地域の暮らしを旅する」をコンセプトに体験型の観光ビジネスを行うTABICAに続き、「旅」シリーズの第2弾として「すごい旅人求人サイト」SAGOJO(サゴジョー)を取り上げます。

2015年12月の会社設立から、翌2016年4月にサイトがスタートし、現在登録している旅人数はすでに5000人を超えています。「旅×仕事」というのは、一般的に「遊び」と「仕事」という対極にあるものを組み合わせる発想。旅好きにとっては、旅をしながら生きていくというのは理想でありながら、実現可能なのか気になるところです。

今回は、株式会社SAGOJOの代表取締役である新拓也氏と、取締役で事業開発担当のスガタカシ氏にお話を伺いました。※記事内容は2017年3月30日の取材をもとにしています。

“旅人”の能力を発揮できる仕事を開発していきたい

筆者:

旅人とは、どんな人のことをいうのですか?

スガ:

SAGOJOの旅人には、大きく分けてバックパッカー、旅好きな会社員、移動の機会が欲しいフリーランスの3層がいます。なので、「旅人」のイメージは一括りには語れないのですが、体感として旅人は仕事ができる人が多いと感じています。たとえば、外資系コンサルティング会社に勤めていながら、有給を使って世界を旅しながら、副業としてSAGOJOを使って仕事をしているユーザーさんもいます。あくまでも僕自身の考えですが、旅人は仕事へのモチベーションが高くて、スケジュール調整や対人コミュニケーションもうまい。専門を磨いてフリーランスになる人もいるし、必要と感じたら自分から事業を起こす起業家タイプも多い気がします。

筆者:

実際に旅人が行う仕事にはどのようなものがありますか?

スガ:

現在は、企業や自治体などから受けるWeb上のコンテンツ制作を中心に行っていますが、今後は自社からさまざまな企画を提案していきたいと考えています。たとえば現地で製品を仕入れるバイヤーや、逆に海外に日本製品を売り込む営業、現地調査など、旅人の力を発揮できる仕事を開発していきたいと思っています。利益を出せる仕組みをつくって会社としての基盤を強くすることで、旅人への報酬を上げ、地位の向上を図っていきたいですね。

旅には「世界を自分事にさせる」力がある

筆者:

そもそも、どうして「旅人」の求人サイトを作ろうと思ったのでしょうか?

新:

実は僕は、世界中を旅行している中で、旅のWebマガジンの「Travelers Box」を立ち上げたことがあるんです。でも、旅はまだ一般的に、遊びとか暇つぶしだという意味で低く捉えられていて。たとえば、世界一周した人が社会復帰するときにも、何も評価されないという現状を何とか変えたいと思ったんです。世界を旅して帰国しても、単にドロップアウトしただけに受け取られるのは残念ですからね。旅した経験をキャリアアップに結びつける方法はないかと考えました。

筆者:

旅することで、どんなことが得られるのでしょうか。

新:

国や地域についての知識が増えるのはもちろんですが、僕は旅には「世界が自分事になる」力があると考えています。いろんな国で友だちができると、その国で何か事件が起きたときに「彼らは無事でいるだろうか」と心配しますよね?つまり、他人事ではなくなるのです。
たとえば、僕はネパールを旅したことがありネパールには思い入れがあるので、ネパールで大震災が起きたときには僕自身にできることはないかと実際に動きましたし、現地で出会った多くの友達が協力してくれました。この経験を通じて、旅を通して個人と個人がつながれば、何かが変わるのではないかと感じたんです。

働き方改革の考え方にもマッチする「旅人」という仕事

筆者:

「旅をしながら仕事をする」というのは、地域おこしという観点からも有望ですね。

新:

旅人の「外者(ソトモノ)視線」が、地域おこしに役立っていくと思っています。最近は移住者もすこしずつ増えているようですが、地方にはない都市部の知見を持っている旅人が持つソトモノの目線によって、その地域にないスキルが補われていくと思うのです。

これから高齢者が増加し、少子化で人口が少なくなっていく中で、地域おこしを推進することで、都会からの人の移動は増えていくでしょう。そこにソトモノ視点のスキルが加わることによってさらに活性化させることができると思います。

筆者:

それでは最後に、今後どんなことをしたいか教えてください。

新:

今後ますます、人の移動は流動化し加速する時代になると思います。都市でも地方でも、国が違っても、どこでも自由に働ける世界の実現に、SAGOJOも貢献できたらいいですね。
具体的には、英会話やライティングや写真撮影など、旅をしながら仕事をするためのスキルアップのカリキュラムも合わせて展開していくことで、旅をキャリアに繋げる仕組みを整えていきたいと考えています。

まとめ

シェアリングエコノミーという軸で考えると、SAGOJOは旅先でのスキルシェア、あるいは「外者視点」「知見」シェアということになるでしょうか。旅人である個人にとっても、旅先の魅力を伝えるレポーターとしてだけではなく、バイヤー、営業、事業プロデュースなどいろいろなスキルを得て、発揮する機会になると考えられます。

また、地域の活性化という面でも、実際に旅人がその土地に定着し、新しいタイプの店を開いて繁盛しているというような例がメディアでもよく取り上げられており、その有効性は証明されているといってもいいでしょう。

旅人がつかんだ、よりリアルな情報を配信し、それをもとにして人々が実際に旅し、人と触れ合うことで地域が活性化していく。この構図は、将来の地方と都会との関係性を示唆しているように思えます。旅人は、民泊、カーシェア、スキルシェアなどにおいてシェアリングエコノミーに欠かせない重要な役割を担っているのは間違いないわけで、旅による収入増がかなえば、さらなる経済効果を生むことになるでしょう。旅好きの筆者としても、大いに応援したいところです。

取材・記事制作/ナカツカサ ミチユキ

ノマドジャーナル編集部
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