2005年6月29日に会社法が改正されて、特例措置だった「1円起業」がいつでも、誰でもできるようになりました。しかし実際に、1円で起業することはできるのでしょうか?検証してみたいと思います。
「1円起業」は本当に可能なのか
1円起業とは、資本金1円で会社を設立することです。会社法が改正される前までは、有限会社で300万円、株式会社で1000万円の資本金が必要だったため、起業の大きな壁となっていました。この最低資本金が1円になったことで、当時は主婦が起業したというニュースもよく見かけましたし、若者がスタートアップを立ち上げる後押しになっていることは、間違いありません。
なお、資本金が1円であろうと、会社設立の流れは構いません。もちろん合同会社、株式会社、どちらも可能なため、資本金の問題で設立する会社の種類を決めなくてもよくなりました。しかし、資本金が1円であっても、会社が1円で設立できるわけではありません。収入印紙や登記費用など、手続きにはさまざまな費用がかかります。最低でも、合同会社であれば6万円、株式会社であれば21万円が必要です。
リスクやデメリットを考えると、1円起業は割に合わない!?
資本金が少なくてすむことは、創業者にとって大きなメリットとなります。しかし、会社を経営していく中では、必ずしもいいことばかりではありません。
①信頼性が低い
会社としての蓄えがないと判断され、信頼を得ることが難しくなります。特に、新規で取引先をつくらなければならない場合、実績がないベンチャーは、資本金が大きな判断基準となります。目安としては、事業を展開する業界や想定される取引先の資本金と同等レベルの金額は必要になると考えておきましょう。
②融資が受けられない
創業時の融資は、自己資金が重要な「要件」として設定されています。また、融資を受けられる金額は、資本金の2倍程度というのが一般的です。これを踏まえると、融資はほぼ確実に受けることができないでしょう。資本金の平均は300万円ですが、そこに届かないまでも100万円程度は用意しておくべきです。
③運転資金が確保できない
起業してすぐに受注でき、売上を立てることができればいいですが、なかなかそう上手くはいきません。運良くすぐに仕事を獲得しても、納品しなければ請求ができません。つまり、キャッシュが入ってくるのはずっと後のことになるのです。そこで役に立つのが資本金です。売上がなくても事業を3ヶ月は継続させられるだけの金額を、資本金で用意しておくことが必要です。
「1円起業」で失敗しないために
上記で見てきたように、1円起業にはかなりのリスクがあり、成功する可能性は極めて低いと言わざるを得ません。それでもチャレンジするのであれば、現在の勤め先など、クライアント、取引先を確保しておくことだけは、やっておいてください。
起業をすることを伝えると、たいていの人は「独立したら、ぜったい仕事をお願いするよ」「応援するよ」「いつでも頼ってきてね」と言ってくれます。しかし、これを鵜呑みにしてはいけません。本当に依頼をしてくれるのは、10社中1社にも満たないと思います。中でも古巣=現在の勤め先は可能性が高いですが、それとて絶対とはいえません。できるだけ数多くの会社や担当者に声を掛け、できるなら契約書など書面の形にして残しておくようにしましょう。
記事制作/イソダ カツヤ
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