フライヤー×サーキュレーションの「知見と経験の循環」企画です。
経営者や有識者の方々がどのような「本」、どのような「人物」から影響を受けたのか「書籍」や「人」を介した知見・経験の循環についてのインタビューです。

日産自動車、外資系コンサルティング会社、日本コカ・コーラ常務を経て、経営者として頭角をあらわし、株式会社アトラスの代表取締役、株式会社イオンフォレスト(THE BODY SHOP Japan)の代表取締役社長、スターバックスコーヒージャパン株式会社のCEOを歴任し、「プロ経営者」として確固たる実績を上げてきた岩田松雄氏。

現在はリーダーシップ コンサルティング(http://leadership.jpn.com/)の代表として、経営論から人材育成、キャリア形成といった講演や経営者のコーチングなどを行っている。

彼のキャリアにおいて、どのような人たちから影響を受け、知見や経験をどのように人生に活かしてきたのかをお聴きした。岩田氏がプロ経営者として手腕を発揮するまでに、どんな原体験があったのだろうか?

左遷を乗り越え、ビジネススクールへ。一歩先をいく、キャリアの明かりをともしてくれる存在が。

Q:これまでのキャリアにおいて、岩田さんが影響を受けた人物を教えていただけますか。 複数のキャリアを経ていく中で、どのような岐路があり、その方々からどんな影響を受けたのかについてもお聴きできればと思います。

岩田松雄氏(以下、岩田):

影響を受けた人の一人は日産自動車に入社したときの同期のS君です。日産には関西の大学から入社する人は少ないので、同じ関西出身の彼とは入ったときから仲が良かったんです。彼は常に私の一歩先を行く存在。海外計画部という本社の花形の部署にいた彼とは、よく電話で励まし合うような間柄でした。

日産の業績が悪化していたころ、私はフォークリフトの小さな事業部に異動となりました。事実上の左遷でしたが、彼は「岩田、やめるなよ」と家まで来て引き留めてくれたんです。彼と一緒に日産を立て直すべく、社内改革組織である「脱兎倶楽部」を立ち上げました。

その活動が頓挫した時、彼が社内の研修制度を利用してスタンフォードのビジネススクールに2年間留学することになり、私にこういう制度があることを教えてくれました。私は彼を追いかける形で、2年後UCLAアンダーソンスクールに留学しました。

彼はスタンフォードから戻ってからコンサルティング会社に転職、いまは早稲田のビジネススクールで教授職に就いています。私も彼の後を追いかけて、海外から戻ってジェミニというコンサルティング会社に転職。いま早稲田のビジネススクールで非常勤講師をしているのも彼の誘いです。彼は私の一歩先を行って、キャリアの明かりをともしてくれる存在です。

ビジネススクールでは教わらない「経営者の凄み」

Q:素晴らしいご友人がいらしたのですね。ビジネススクール、日本コカ・コーラを経て、プロ経営者の世界へ入っていくときには、どんな方々から影響を受けましたか。

岩田:

私は日産での入社挨拶の時から「社長を目指して頑張ります」と公言するくらい、高い目標をという意識を持っていました。ビジネススクールの卒業後は、幾つかの外資系企業を経験するというのがキャリアの王道ですが、ずっとやりたかった経営に携わりたいという思いが強まり、コカ・コーラから家庭用ゲームソフトなどの企画・開発・製造・販売を行うアトラスというベンチャーへ転職し経営者の道を選びました。

アトラスの経営者として立て直しに関わった2年間は、私にとって大きな転機となりました。たたき上げの創業者から、事あるごとに「頭でっかちになるな。もっと地に足のついた話をしろ」と言われ続ける日々。「経営ってこういうものなんだ」と学びましたね。最初はこれまで経験していた外資系企業とのギャップも大きく、反発心もありました。ですが、命がけで経営をしている創業者の姿から、ビジネススクールでは教わらない「経営者の凄み」を知りました。

在任中に株式総会を3回経験しましたが、株価が低迷しているときには株主から「創業者をだせ!経営責任をとれ!」と詰め寄られるわけですよ。こういう経験を積むと、腹が据わってきます。アトラスの株主総会に比べると、スターバックスの株主総会などは、ファン倶楽部の集いという感じです。

ここで培った経営者感覚は、ザ・ボディショップやスターバックスで社長をしていたときにも活きています。サラリーマン感覚が抜けない役員に対しては「(新たに出店を検討する際に)あなたは自分のお金をこのお店に投資したいと思いますか?」と問い続けていました。

「論語も算盤も持っている」ハワード・シュルツ

Q:ザ・ボディショップやスターバックスで、それぞれの社長から影響を受けた出来事や出会いはありましたか

岩田:

著書『ミッション』に書いたように、ミッションを掲げることの大切さを学んだのは、ザ・ボディショップのアニータ・ロディックと、スターバックスのCEOハワード・シュルツの二人です。

二人ともカリスマ経営者ですが、こんな違いがあります。アニータは社会変革や社会貢献活動に非常に興味を持っていました。彼女に「パワーの源は何か?」と尋ねたら、「世の中の不正への怒り」と答えたのが、今も印象に残っています。しかし私は彼女を漢字一文字で表すと「愛」だと感じています。弱者や地球環境や動物などすべてのものに愛を注ぐ人ですが、その愛情表現が「怒り」なんですね。

一方、ハワードはまるで新興宗教の教祖のように人を魅了する力があって、その上でビジネスを回すうえでの怜悧な計算力、したたかさも兼ね備えたカリスマ経営者でした。「論語と算盤」の例にたとえるなら、アニータが主に論語をもっていて、シュルツは論語も算盤も両方もっているという感じです。※

この両方のカリスマ経営者をよく知っている日本人は私くらいなんじゃないかな。それは私の誇りですね。

※「論語と算盤」:論語つまり経営理念や倫理と、算盤つまり利益の追求を両立させて企業を発展させるという考え方

経営者の礎を築いた「才と徳の読書術」

岩田氏はこれまでどんな本から影響を受け、どんな本を未来のリーダーたちに薦めるのだろうか? 彼の読書術に迫ります。

小さい頃から本好きな彼が、小学5・6年生のときに夢中になった本とは?

※インタビューは、フライヤーのサイトから読めます。

岩田 松雄氏 
1982年に日産自動車入社。製造現場、セールスマンから財務に至るまで幅広く経験し、社内留学先のUCLAビジネススクールにて経営理論を学ぶ。
帰国後は、外資系コンサルティング会社、日本コカ・コーラ ビバレッジサービス常務執行役員を経て、2000年(株)アトラスの代表取締役に就任。
2005年には「THE BODY SHOP」を運営する(株)イオンフォレストの代表取締役社長に就任。
2009年、スターバックスコーヒージャパン(株)のCEOに就任。「100年後も輝くブランド」に向けて、安定成長へ方向修正。次々に改革を実行し、業績を向上。
日本に数少ない”専門経営者”として確固たる実績を上げてきた。2012年より約1年間産業革新機構に参画。2013年にリーダー育成のための(株)リーダーシップコンサルティング設立。

ノマドジャーナル編集部
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