フライヤー×サーキュレーションの「知見と経験の循環」企画第2弾です。

経営者や有識者の方々がどのような「本」、どのような「人物」から影響を受けたのか「書籍」や「人」を介した知見・経験の循環についてのインタビューです。

今回登場するのは、森川 亮氏。日本テレビ放送網、ソニーを経て、2003年にハンゲーム・ジャパン株式会社(現LINE株式会社)へ入社。2007年に同社の代表取締役社長に就任し、LINEを世界規模に成長させた人物です。2015年4月に独立起業し、ファッションやフードを扱う女性向け動画メディア「C CHANNEL」を立ちあげました。「日本を元気にしたい」という使命感を背負い、新しい挑戦を続ける森川氏の「背骨」をつくるきっかけを与えたのは、どんな方々だったのでしょうか。

好きではない仕事をやる中で、「社会人としてのプロ意識」を教えてくれた上司

Q:これまでのキャリアにおいて、森川さんが影響を受けた人物を教えていただけますか。日本テレビ放送網、ソニー、LINE、起業という複数のキャリアを経ていく中で、その方々からどんな影響を受けたのかについてもお聴きできればと思います。

森川 亮氏(以下、森川):

ビジネスのキャリアで最初に影響を受けたのは、日本テレビに入社したときの直属の上司です。彼は私に「学生と社会人の違い」を教えてくれました。社会人なら、その分野のプロとして雇用されているわけですから、周囲からの期待を超えるために何をすべきかを考えなければならない。ですが、最初に配属されたコンピュータシステム部門の仕事が、元々やりたいことではなかったため、当時の私はそれが顔に出てしまっていたんでしょうね。上司から厳しく指導されたことで、「期待以上の成果を出さないとプロ失格」だと学びました。

今思うと、社会人人生の初期に、好きでない仕事に取り組む経験ができて、かえってよかったのかもしれません。元々「好きなことしかやりたくない」という性格でしたが、好きなことを仕事としてやっても毎回良い結果がでるとは限らないですよね。好きなことだけやっていたら、仕事の本質を深く考えずにきてしまっていたと思います。

「社員の顔色はみない」、変われる勇気の大切さを学んだLINE時代

Q:ビジネスパーソンとしての振る舞いを教えてくれた上司だったのですね。その後のキャリアで影響を受けた方はおられますか。

森川:

(森川氏が社長になる前の)ハンゲームの社長ですね。「仕事は自分にしかできないことをやること」というのを彼から学びました。彼は方針をコロコロ変えるし、変更した理由もあまりきちんと説明しない人だったんです。例えば、金曜に言われたことが、翌週の月曜には変わるというのもざら。最初は腹が立ったこともあります。ですが、次第に「常にお客さんにとってより良いものを提供したいと考えているから、すぐに方針が変わってしまうんだ」と気づき、「変われる勇気」を持つことの重要性を実感しました。

それ以来、社員の気持ちや社内の空気を読みすぎないようになりました。社長が社員のことを気遣いすぎると、お客さんのことが二の次になってしまうんです。そうすると、結局お客さんが離れてしまって、社員だって幸せになれない。お客さんを第一に考えて行動することが、結果的に社員の幸せにもつながるという考え方にいたりました。経営者は、変わるべきタイミングで、「変わるんだ」という判断を下す必要があるのだと思います。

無口な創業者、目にあふれる情熱から学んだ「経営者としての指針」

Q:前職の社長からは、マネジメントの手法を学ばれたのですね。最後にもう一人、影響を受けた方について教えていただけますか。

森川:

韓国のNAVER(※1)やハンゲームの創業者からは、市場の見方や、事業を進めるうえでの基盤となる部分を学びました。サービスのクオリティとスピードのバランス、アクセルを踏むタイミング、そして新規事業への投資バランス、どういうフェーズでどんな苦労があるのかなど、数多くのことを会議室や居酒屋の席で教わりました。ゼロから売上1兆円規模の上場企業へと成長させるというのは、誰にでもできることではありません。それを実際に経験している人にしか言えないこと、経営の教科書には書かれていないようなことを、彼の背中や、飲み会での会話から学べたのは、非常に大きな収穫でした。無口な人だったからこそ、目に情熱が表れるんです。経営者としての本気度を間近で感じました。

(※1 韓国最大のインターネットサービス会社で、LINE株式会社の親会社)

Q:そのなかでも、印象に残った言葉はありますか。

森川:

ここで挙げきれないほどありますが、「(新規事業を始めるうえで)3つ新しいことをすると失敗する」という教えが印象に残っています。ターゲット、商品、価値観のすべてが新しいものに取り組むと、想像がつかない部分が多くて失敗してしまう。理想はこのうち1つだけ新しくすること。「C CHANNEL」を立ちあげるときも、この教えを活かして、なるべく新しい要素ばかりにならないようにしました。スマートフォンでニュースを見るのはもはや普通のことですが、そこに縦向きに見る「動画」という新しい要素を1つ加えたんです。枯れたものに1つ新しい味を足すくらいがちょうどいい。

また、「事業を始めるにあたって成功確率が7割じゃないといけない」という言葉も、自分の指針になっています。

Q:最後に、森川さんは影響を与える立場として、どういう人間でいたいという意識はありますか。

森川:

特に考えていないですね。「あるがまま」でいるようにしています。会社にとって、私自身は重要ではないと思っています。私は自分自身の人となりよりも、サービスの中身が大事だと思っているので、まわりの人たちにも私自身ではなく、サービスを見てもらえるようにと思っています。

本の要約サイト フライヤーのインタビューはこちらから!

「日本を元気にしたい」という使命感を背負い、新しい挑戦を続ける森川亮氏の「背骨」をつくった本選びの軸は何だったのでしょうか。彼の読書観に迫ります。

森川氏の著書、『シンプルに考える』の要約も公開!

森川 亮
C Channel株式会社 代表取締役社長
1989年筑波大卒。日本テレビ、ソニーを経て2003年ハンゲームジャパン(現LINE=ライン)入社、07年社長。
2015年3月、同社代表取締役社長を退任し、アドバイザーとして顧問に就任。現在C Channel株式会社代表取締役社長。

ノマドジャーナル編集部
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