専門家の知見を獲得するイベントの第2弾。5月30日(土)のサーキュレーター・サミット2015の登壇者の概要と事前インタビュー内容についてのレポートです。

急成長するベンチャーが直面する、そして致命的な失敗につながりやすい「組織の作り方」。当該テーマに対して、経営者の失敗談と専門家の知見によって光を当てます。シード、アーリー、ミドル、レイター、大型資金調達後や上場後も含めた様々なタイミングの企業に、各フェーズにおいてどのような課題感を持つのか、どのような打ち手が考えられるのかを議論し、その知見を吸収できる機会です。登壇いただく5名の方をご紹介します。

岩田 松雄氏

(登壇にあたって)
「組織をまとめ、企業を発展させていくためには、その企業の存在理由である【ミッション】がとても大切です。『リーダー』としてミッションを組織に伝えていくことがとても重要です。スターバックスをはじめ3社を経営した専門経営者としての経験を元に実例を交えながらお話しいたします。まとめとして『これからのリーダーに必要なこと』をお話しします。」

日産自動車でMBA取得後、日本コカ・コーラ常務執行役員、「THE BODY SHOP Japan」を運営するイオンフォレスト社長を経て、スターバックスジャパンのCEOに就任、日本には珍しいプロ経営者として確固たる実績を上げたその経験・知見について共有いただきます。

岩田松雄
1982年に日産自動車入社。製造現場、セールスマンから財務に至るまで幅広く経験し、社内留学先のUCLAビジネススクールにて経営理論を学ぶ。帰国後は、外資系コンサルティング会社、日本コカ・コーラ ビバレッジサービス常務執行役員を経て、2000年(株)アトラスの代表取締役に就任。2005年には「THE BODY SHOP 」を運営する(株)イオンフォレストの代表取締役社長に就任。2009年、スターバックスコーヒージャパン(株)のCEOに就任。「100年後も輝くブランド」に向けて、安定成長へ方向修正。次々に改革を実行し、業績を向上。日本に数少ない”専門経営者”として確固たる実績を上げてきた。2012年より約1年間産業革新機構に参画。2013年にリーダー育成のための(株)リーダーシップコンサルティング設立。

アカウンティング・サース・ジャパン株式会社 佐野 徹朗氏

クラウド会計・税務・給与システム「A-SaaS(エーサース)」を展開する同社ですが、登壇者の中でも非常に特徴的な点として、佐野社長は2014年に創業社長からバトンタッチされた二代目社長であることがあげられます。2009年の創業後の成長期のあとに訪れた停滞期の打開策として、佐野社長は、どのようにして組織を変革し、新しい成長軌道に乗せることができたのでしょうか。就任後の短期間での人心掌握、営業施策の打ち手、資金調達、事業の整理や組織の再編、さらに今後の展望について、ミッションを設定した戦略的な取り組みと、経営者としてのマインドについてお話しいただきます。

佐野 徹朗
アカウンティング・サース・ジャパン株式会社 代表取締役社長CEO
米国ケンタッキー州立大学会計学専攻。会計学修士取得後、デロイト&トゥシュ・ロサンゼルスオフィスにて多国籍企業の会計監査に従事(米国公認会計士)。
また、デロイト・グローバル・デベロップメント・プログラムのメンバーとして監査法人トーマツ東京オフィスに駐在し、日系大手金融グループの米国会計基準監査を担当。
その後渡英し、オックスフォード大学経営学修士および ロンドン・ビジネススクール金融学修士取得。
ボストン・コンサルティング・グループ東京オフィスに 入社し、経営戦略立案、組織再編や新製品ローンチ戦略の 策定支援等のコンサルティングを実施したのち、アカウンティング・サース・ジャパンに参画、代表取締役に就任。

株式会社おかん 沢木 恵太氏

オフィス向け簡易社食サービスを提供する株式会社おかん。

同社のサービスを導入することで、食事をかこんだ社員間のコミュニケーション増から、組織風土改善にもつながる、という沢木社長。過去に複数のスタートアップに立ち上げ含めて関与した経験のある同氏は、組織の作り方については戦略的な軸と柔軟さをバランスよく組み込んでいくとおっしゃっています。大学時代は稲盛氏の論文を書いた経験からも、「アメーバ経営が目指している組織イメージ」という同氏は、会社組織も少人数ながら業務を一部重複させつつ推進力と責任制をもたせた人員配置を心掛けているとのことです。当日は、まさに大きな成長途上にある同社の組織作りについてお話しいただきます。

沢木 恵太
株式会社おかん 代表取締役CEO
1985年長野県生まれ、中央大学商学部卒。株式会社ベンチャー・リンクにて教育系事業の立ち上げ、web系ベンチャー企業で事業責任者を経て、教育系ベンチャー株式会社すららネットにスタートアップメンバーとして参画。その後、2012年12月に株式会社CHISAN(現おかん)を設立。3児の父。

株式会社情報基盤開発 千保 理氏

アンケートなどの紙に手書きで記載されたデータを自動で入力・集計できるシステム「Altpaper」を開発・展開する同社は、2004年、ビジネスコンテスト荒らしをしていた東大生集団によって起業されました。「未踏ソフトウェア創造事業」への採択を機に、Altpaperを開発し、現在でも東大生エンジニアをインターンとしてR&Dを進め、研究室にも似た雰囲気の同社は、大学発ベンチャーの性格を色濃く残す組織になっています。徐々に事業拡張しながら手堅く収益を確保する、無理な組織成長はしないで従業員あたり生産性を高めていく組織をつくっています。東大発、大学発ベンチャーならではの組織風土など、お話しいただきます。

千保 理
株式会社情報基盤開発 最高財務責任者
東京大学大学院経済学研究科企業・市場専攻修士課程修了。
専門はコーポレートファイナンス、インベストメント、人的資源管理。
ニッセイ情報テクノロジー株式会社にて、生活協同組合向け共済契約管理システムの要件定義・設計・開発・テスト・保守の業務に従事。
2010年7月株式会社情報基盤開発入社。バックオフィス統括および、SI案件のPMを担当している。

専門家 守屋 実氏

守屋実さんは複数のベンチャーの立上げから成長フェーズまで役員として内部の現場で関わってきた新規事業専門家です。守屋さんはベンチャー組織について以下のように語っています。

「事業も組織も、成長するには突破すべき壁があります。壁は、次のステージのトビラでもあります。例えば、創業期の「とにかく売る」というフェーズでは、以下のような流れで壁→突破(→新たな壁)といったサイクルが繰り返されます。

  • 「仕組みがなく混沌」→「仕組化してスッキリ」
  • 「中途半端な権限移譲、不慣れな人心マネジメントでモチベーションダウン」→「権限移譲し活気が復活」
  • 「縦割りによる弊害が散見、官僚的行動と社内政治家の出現」→「組織再編、機能別から事業部制へ」
  • 「本社と現場の軋轢・・・」→「選択と集中、子会社化、分社化実施」

次のステージを予見しながらマネジメントをしていくことで、会社が陥る組織不全や非効率性を可能な限り排除することができるのです。」

当日は、このような専門家によるエッセンスの共有を頂きつつ、各ベンチャー経営者がどのような壁にぶつかり、突破してきたかを語っていただきます。

守屋 実
株式会社 守屋実事務所 代表、 ラクスル株式会社執行役員、ケアプロ株式会社取締役、メディバンクス株式会社取締役、ジーンクエスト株式会社取締役、株式会社サウンドファン取締役。1969年生まれ。92年に株式会社ミスミ入社、10年間、新市場開発室で業績を上げる。2002年 ミスミ創業オーナー田口弘氏と新規事業専門会社エムアウト創業、2010年守屋実事務所を設立し現在に至る。

ノマドジャーナル編集部
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