税金の課税方式には申告納付と賦課課税があります。サラリーマンが副業で何らかの成果を得たら、給与所得と副業で得た所得を合算し、所得税の確定申告をしなければなりません。その際には特典のある青色申告が有利です。

よく聞く「青色申告」具体的にどんなこと?

昭和22年、GHQの指導下で所得税と法人税に従来の賦課納税制度に代わって、納税者が、自ら税法に従って所得金額と税額を正しく計算し納税するという申告納税制度が導入されました。この時点では、白色申告、青色申告の区別はありませんでした。
 

青色申告とは申告書の表紙の色が由来?

この納税者は 「青空のように一点の曇りない申告をしています!」と誇りを持って申告できるステイタスシンボルとして申告書の表紙をライトブルーにしたことから青色申告という名称が付されました。

青色申告書制度が目指すものとは?

昭和22年頃の納税者には記帳の慣行がなく、また戦後の混乱期で軒並み過少申告や無申告が続出し、申告納税制度は危機的状況にありました。そこで、まず納税者が自らの手で取引を帳簿に記入して正確な所得を計算できるような体制をつくり、納税者と税務官吏が複式簿記という同じ土俵で算出された所得について税額を検証すべきだとして、広く簿記の普及を呼びかけました。その結果、「税金が安くなる」として簿記の習得熱が全国に広まり、経理学校、簿記学校が雨後の竹の子ように生まれました。

納税者に正確な記帳慣行を根付かせ税務官吏もその記帳を尊重した課税を行う制度を目指したということです。

青色申告と白色申告の違いとは?

白色申告とは表紙の白が由来、その詳細は?

昭和22年に申告納税制度を導入した際、表紙が白だったのが白色申告のはじまりです。

納税者自ら取引を正しく記録し、それに基づいて所得を計算するという記帳慣行が無いため申告納税制度は混乱しました、そこでまず帳簿に基づいて所得を計算するという慣行を徹底させるために、「複式簿記によって、正確に収益と経費を計算し正しい所得計算をします」と届出た納税者に種々の特典を与えました。それが青色申告のはじまりです。

青色申告と白色申告、どちらが有利?

  1. 納税時、青色申告控除で受けられる65万円だけで、最低税率5%の場合納税額が32,500円少なくなります。その他にも控除できるものがあるので青色申告の方が有利です。
  2. 青色申告は事前に「所得税の青色申告承認申請書」の提出が必要です。この部分は手間と言えます。
  3. 青色申告は複式簿記による正しい帳簿付けが要求されますが、白色申告は簡単な単式簿記による帳簿でよいことになっています。

青色申告するための手続き

所轄税務署長に「青色申告承認申請書」を提出

  1. 白色申告の納税者が青色申告の申請をしたい場合は、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。
  2. 新規開業した場合には、業務を開始した日から2ヶ月以内に「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

いずれの場合にも、税務署から許可しますという通知等はありません、申請書には控えを添えて提出し届出受領印をもらえばOKです。
  

所得を正確に計算する会計帳簿を整備

「収入や支出の事実が確定した時点」の日付で計上する現金主義ではなく、発生主義に基づく、複式簿記の帳簿を作成しなければなりません。

即ち、1年間の収益と費用を現金の収支を基準に帳簿に記入するのではなく、収益として実現しているか、費用として発生しているかを判定して、実現している収益と発生している費用とを帳簿に記入して、1年間の損益計算書と期末の貸借対照表とを作成します。

求められた利益が所得ですからこれに税率を乗じて税額を計算して、申告納付します。

青色申告の3つの利点と注意点

取引に係る帳簿を正確に誠実に作成する記帳慣行を根付かせるためのアメとムチです。

青色申告控除として最高65万円が認められる

不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいる青色申告者で、これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則により記帳し、その記帳に基づいて作成した貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付し、法定申告期限内に提出している場合は、原則としてこれらの所得を通じて最高65万円を控除することができます。

それ以外の青色申告者については、不動産所得、事業所得、山林所得を通じて最高10万円を控除することができます。  

配偶者や親族を専従者として支払った給与を経費にできる

青色申告者と生計を一にしている配偶者やその親族のうち年齢が15歳以上で、その青色申告者の事業に専ら従事している人(青色専従者といいます)に支払った給与は、事前に提出された届出書に記載された金額の範囲内で、かつ専従者の労務の対価として適正であれば、必要経費に算入することができます。なお、青色専従者として給与の支払いを受ける人は、控除対象配偶者や控除対象扶養親族にはなれません。
 

純損失の繰越と繰戻し処理ができます

事業所得に赤字の金額がある場合、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰越し、各年分の所得金額から控除できます。

前年も青色申告の場合は、純損失の繰越しの代わりに、その損失額を生じた年の前年に繰戻して、前年分の所得税の納付額から本年度の純損失額を還付を受けることもできます。

青色申告で注意すべき事項

  1. 青色申告をするときはあらかじめ届出が必要で、提出期限及び届出書に記載すべき事項が細かく規定されており、手続きが煩雑です。
  2. 取引に係る記録として、正規の簿記の原則に沿った会計処理が要求され、かつ帳簿記録に基づいて作成された貸借対照表と損益計算書の添付が必要です。
  3. 帳簿に不備があったり、隠ぺいや偽装があったり、会計処理に不正があれば青色申告の許可が取り消され、1年間は再申請ができません。

青色申告をしていても失業保険が受給できる?

雇用保険法では雇用保険に加入できる者は「事業者に雇用された者」と規定しています。青色、白色、個人、法人に関係なく雇用関係が成立していれば、それが終了した時点で雇用保険を受給できます。事業体が赤字でも黒字でも法定福利費として雇用保険料は納付しなければなりません。これをしっかり守っていれば雇用関係が終了した時にハローワークに出向き所定の手続きをすれば給付金を受給できます。

しかし被雇用者であるサラリーマン副業者は個人事業者ですから、雇用保険に加入できません。よって雇用保険の受給はできません。(失業保険という言い方もありますが、雇用保険が正式名称です)

まとめ

サラリーマンが副業で所得を得た場合所得税法は総合課税のため、サラリーマンとしての所得と副業による所得を合算して所得税の確定申告をしなければなりません。この際に、青色申告できるのは、不動産所得、事業所得及び山林所得だけです。所得があったら納税義務が生じますので、税制上有利な青色申告を覚えておくと、節税に役立ちます。

執筆者:久慈 伸樹

私立の専門学校専任講師として税務会計を担当、傍ら 千葉県の私立四大に時間講師として招聘され並行して勤務する。学園の配置転換により、系列の経営短大の専任講師として配属される。少子化によるリストラで、早期退職を打診され、これを機に退職し、大学の講師職も辞して、税理士登録し個人事務所を立ちあげる。