国家戦略特区とは

国家戦略特区概要

国家戦略特区とは「世界で一番ビジネスをしやすい環境づくり」を目的として、全国的に定められている法令、税制などの規制を緩和したり、優遇を行なったりする制度が適用される地区のことです。

言い方を変えると、個別規制を活用して、施策や事業の行いやすい地域環境を形成し、活性化を図っていくことが期待された地区です。

特区対象となる地域や事業分野は限定されていて、この特区法は平成25年度に関連法案が制定され、平成26年に施行されるようになりました。

国家戦略特区の認定区

国家戦略特区の認定区は、平成29年現在で10区域です。
東京圏(東京都、神奈川県、千葉市、成田市)、関西圏(大阪府、兵庫県、京都府)、新潟市、養父市、福岡市・北九州市、沖縄県、仙北市、仙台市、愛知県、広島県・今治市が指定されています。

国家戦略特区の規制改革メニュー

国家戦略特区法案が制定された平成25年度当初は6つの対象分野でしたが、平成29年度現在では国家戦略特区で措置された規制改革メニューは11の対象分野に広がっています。

都市再生、創業、外国人材、観光、医療、介護、保育、雇用、教育、農林水産業、近未来技術などが該当します。
参照引用元:内閣府戦略特区HP

国家戦略特区の施行システム

国家戦略特区のシステムは、政府からのトップダウン式で制定され各特区に言い渡されるものではなく、各特区の地方自治体や事業所からのボトムアップの提案や申請を受け、国、地方自治体、民間で組織された会議が開かれ認定決議が行われる流れとなっています。このため特区地区ごとに、活用メニューや事業の数、活用状況も異なっています。

提案や申請の多様化が進み、すでにある規制措置メニューや事業とは次元の異なる内容のものも増えてきているため、政府は「国家戦略特区ワーキンググループ」を設置しています。提案者~のヒアリング、関連省庁との折衝などを行なう民間の有識者を配置して対応されています。最終的な決定は総理大臣が行います。

全体での規制改革メニュー活用数は48、認定事業数は253となっています。

東京圏   26メニュー(86事業)
関西圏   16メニュー(27事業)
新潟市   10メニュー(21事業)
養父市   7メニュー(20事業)
福岡市・北九州市 17メニュー(44事業)
沖縄県   3メニュー(4事業)
仙北市   6メニュー(7事業)
仙台市   9メニュー(10事業)
愛知県   13メニュー(20事業)
広島県・今治市  8メニュー(14事業)

参照引用元:内閣府戦略特区HP

人事に関する国家戦略特区の中身

クールジャパン外国人材

国家戦略特区において、クールジャパン戦略に関連する事業の外国人人材の受け入れや就業促進のための施策も盛んになっています。

クールジャパン戦略に関わる事業とは、アニメやマンガ、ゲーム、映画や音楽といったコンテンツ分野をはじめ、日本の食文化を世界に発信したり、輸出を促進したりするための外食、加工食品、生鮮食料品などの食品産業、インバウンド外国人集客も含めた観光や宿泊分野、美容、ファッション、デザインの分野などが該当します。

このことを受け、国家戦略特区では外国人の入国管理法の特例が適用され、専門的な技術的分野の外国人材の入国や在留条件の緩和、就労する機会の拡大が図られています。

また、外国人を雇用する事業者のための相談窓口となる相談センターが設置されています。この相談センターでは弁護士や行政書士などの専門家が対応し、在留資格の許可、または許可されないケースの事例などの分析も実施されています。関連事業者のさまざまな疑問や問題を解決するための詳しい情報提供を行なっています。

農業支援外国人材

国家戦略特区での外国人の受け入れ措置は、農業の分野にも拡大されています。日本の農業力の強化が主となる目的です。外国人の人権にも配慮がなされた制度を設置し、日本で農業に就労する外国人からの苦情や相談を受けつける窓口の設置もされています。この窓口は母国語での相談が可能のようです。

日本側においても、受け入れ農業者の相談窓口も設置されています。就農外国人の農業の知識や経験を適切に評価する試験の実施、地域がスムーズに外国人を受け入れる体制づくりのサポート、また外国人にも働きやすい環境づくりが促されています。

雇用労働相談

国家戦略特区では、日本人か外国人かに限らず、事業主が的確で適正な雇用を行なっていくための相談窓口の設置も行われています。雇用労働相談センターは、ほぼすべての国家戦略特区に設置されています。雇用ルールや雇用に関するさまざまな相談を受け付けています。

国内でもグローバル化は今後も進むことが見込まれているため、外国人採用や雇用、契約内容に関する情報提供の機関の存在は経営者や人事担当にとっては心強いサポートとなるでしょう。

弁護士や社会保険労務士などが対応し、雇用に関連する就業規則や雇用契約書の作成など細かい業務もサポートしています。利用対象者は特区内の事業主(人事や総務)、および該当する特区内で働くことを希望している一般人です。雇用や就労に関する無料セミナーなども実施されています。

待機児童対策

国家戦略特区内において、増え続けている待機児童の解消させるため、小規模保育事業における年齢制限が撤廃されました。これにより、0歳児から2歳児限定だった小規模保育の3歳以上の受け入れが可能となりました。これにより受け入れできる保育サービスの事業者数が増えることも期待できるでしょう。

とくに待機児童の著しい東京圏などの、要望により制定された措置です。また、都市部の公園内の建設規定が緩められ、公園内に保育所を建設することも認められるようになりました。運動や遊び場のある保育施設が増やせることは幼児教育的にも理想的です。地域の土地の有効利用や地域の活性化にもつながっていくことが期待されています。

国家戦略特区の人事関連の事例

【東京圏】

東京圏では、テレワーク推進センターを設置が盛んになっています。社会の働き方の多様化ニーズを受けてテレワークを導入しようと検討している事業主のための相談窓口となります。

IT事業者はもとより、企業のワークライフバランス施策としてのテレワーク導入に関する情報提供、相談の受付を行なっています。テレワークでの雇用に関する人事や総務関連の相談対応、コンサルティングやアドバイスなどを実施しています。また、テレワーク助成金の受付も行われています。

【東京圏・神奈川】

東京都や神奈川県の特区では、家事支援サービス事業を行なう企業に雇用される外国人の入国や在留が可能となっています。2017年現在では、関西圏の大阪府、兵庫県などもこの措置の活用を予定した協議会が設置されているようです。

炊事、洗濯、掃除、買物などの家事支援サービスを提供している事業主が外国人を雇用し、各世帯にサービスを提供する形で実施されています。主にフィリピンなどからの人材活用が目立っているようです。

愛知県は、バウチャー制度での家事支援サービス事業を試験的に実施して調査を進めています。社内の女性の活躍やワークライフバランスに関心の高い企業の協力を経て、女性社員にバウチャーを配布し、サービスを利用してもらって意見や感想を収集しています。将来的に企業の福利厚生施策としても活用できる可能性も期待できるでしょう。

この措置は、女性の社会進出をサポートするため、また、女性が社会でさらに活躍していける環境を提供するひとつの手段として措置されたものです。少子化や高齢化が進む国内で、できるだけマンパワーを確保するための対策としても位置づけられています。

【福岡市】

福岡市では、創業人材支援マッチングサービスの措置を積極的に活用しています。福岡市は、創業特区としてスタートアップ企業を支援する特区として指定されています。

日本人や外国人のスタートアップの負担を緩和することで誘致を促進し、地域の活性化を図っています。外国人の事業主に対しては、事業者としての在留条件を緩和するスタートアップビザが適用されます。

スタートアップ時に必要となる法人登記、税務や年金の手続き、特例による減税措置などの利用もワンストップで行なえるように配慮されています。

また、雇用労働相談センターを有効活用し、スタートアップ時に難しいといわれている人材の確保をサポートしています。人材のマッチングサービスや情報提供を行なっています。この措置の大きな目的のひとつが、公務員の経験や知見をスタートアップ企業の成長に活かし、官民人材の流動化を図ることです。

公務員に対してはスタートアップ事業支援や他業種にチャレンジすることを認めています。さらに3年以内の公務員への復職を条件として、退職金への影響もゼロになるという特例が敷かれています。

国家戦略特区のアイデアが求められる

日本の経済力、人材力の停滞を再生させ、国際競争力を強化していくための国家戦略特区です。

国家戦略特区に指定されている地方自治体のホームページでは、それぞれの特区の強みや特色を活かして、さらにビジネスのしやすい環境を整えることにつながるアイデアが募集されています。また、特区の措置の活用を希望する事業者も歓迎されています。

国家戦略特区の存在を心に留め、事業展開や拡大の際の拠点の選定や人材戦略に役立てられてみてはいかがでしょうか。