10月5日、北里大学特別栄誉教授の大村智氏がノーベル医学生理学賞、10月6日には東京大学教授の梶田隆章氏がノーベル物理学賞を受賞しました。2日続けて異分野での受賞、さらに昨年の赤崎勇氏、天野浩氏、中村修二氏に続く2年連続の日本人のノーベル賞受賞ということで、日本中が一際沸き立ちました(中村氏は米国籍を取得済)。

大村氏の受賞理由は、アフリカで猛威をふるっていた感染症の特効薬「イベルメクチン」を開発したこと。梶田氏の受賞理由は、素粒子「ニュートリノ」に質量があることを裏付ける研究が評価されたことです。大村氏の発明は多くの人を救い、梶田氏の研究は宇宙の謎を解明する大きな一歩となりました。方向性は違いますが、いずれも偉大な研究であることに間違いありません。

長きにわたって常人以上の努力と研鑽を積み、未知の領域に挑み続けたノーベル賞受賞者たちの言葉は、多くの人たちの心を揺さぶってきました。また、大きな組織に守られることなく、独立心をもって仕事を行うビジネスノマドにとっては、学ぶところも大きいはずです。

人のために少しでも何か役に立つことはないかと考えてきた

大村智 北里大学特別栄誉教授

出典:毎日新聞

ノーベル賞受賞後の会見などで大村氏が語った言葉の中には、数多くの名言がありました。「楽な道、楽な道を行くと本当のいい人生にならない」「人のまねをするとそこで終わり。超えることは出来ない」「成功した人は、人より倍も3倍も失敗している」などなど……。どれも示唆に富み、人々を勇気づける言葉です。

その中でもとりわけ印象に残ったのは、大村氏が繰り返し語った「人の役に立ちたい」という言葉でしょう。これは大村氏の祖母の教え「情けは人のためならず、めぐりめぐって己(おの)がためなり」を忠実に守ってきた結果なのだそうです。

大村氏が発見、開発した「イベルメクチン」は、今なお毎年3億人もの途上国の人々を救っています。それだけではなく、200億円もの特許料を得て、それをもとに病院を建設しました。ビジネス面でも大成功を収めているのです。

お金儲けばかり考えていても、ビジネスはうまくいきません。人の役に立ちたいという考えのもと、一心不乱に仕事に打ち込めば、きっとうまくいくのです。大村氏だけでなく、多くの先人が証明しています。

カッコいいものは持ち合わせていない。
きちんと研究を進めてきたのがよかったと思う

梶田隆章 東京大宇宙線研究所長

出典:朝日新聞

宇宙から降り注ぐニュートリノを、ひたすらコツコツと観測し続けた梶田氏。地下1000メートルにある研究施設「カミオカンデ」、そして「スーパーカミオカンデ」にこもり、研究を続けていました。

ノーベル賞受賞につながる研究をすすめるきっかけになったのは、集めたデータが自身の予測と異なる結果になったことでした。「何かあるんじゃないか」と感じた梶田さんは、それから実に10年以上にわたって研究を続けてきたのです。

「きちんと(研究を)やっていけば、何かに結びつくんじゃないかと思ってきちんとやった。自分の進んでいる道が正しいと思って頑張った」
カッコよさとは無縁の世界で、ひたすら自分の信じる道をコツコツと歩み続けたからこそ、偉大な研究成果が生み出されたのです。

5年おきに会社辞めてほしいですよね。
そうやってどんどん自分を磨いて、自分を売り込んで、
どんどん収入を増やすとかやってほしいんですよね。

中村修二 米カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授

出典:The Wall Street Journal

青色発光ダイオード(LED)を発明した功績によって、2014年にノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏。地元四国の徳島にある一企業に所属しながら、日本の大手家電メーカーが数百億円をかけても成し得なかった大発明をほぼ独力で成し遂げましたが、その後はより良い環境を求めてアメリカに渡りました。

中村氏が語っているのは、決まりきったレールに乗って安全な人生を歩もうとする若者たちへの激烈なメッセージです。

「大学受験を頂点とした、胎内教育から始まるエリートコース、永遠のサラリーマン、定年間際に部長、これが日本のメインストリームですよ。大事なのはこのメインストリームから外れた人が日本では成功しているんですよ」

すでに日本では、「エリートコース」も「永遠のサラリーマン」も幻のもの。かげろうのように実態のない「メインストリーム」から自ら外れ、自分の力で道を開いていくことが必要な時代になったのです。

寄稿者:大山 くまお
ライター・編集。著書に『名言力 人生を変えるためのすごい言葉』(SB新書)、『平成の名言200 勇気がもらえるあの人の言葉』(宝島SUGOI文庫)、『野原ひろしの名言 「クレヨンしんちゃん」に学ぶ幸せの作り方』、『野原ひろしの超名言 「クレヨンしんちゃん」に学ぶ家族愛』(いずれも双葉社)などがある。構成を担当した書籍に『一生成長し続ける人が大切にしている五賢人の言葉』(小宮一慶著、SBクリエイティブ)など。

ノマドジャーナル編集部

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