三菱商事から43歳の若さでローソン社長へと転じ、2014年にはサントリーホールディングス代表取締役社長に就任して日本中を驚かせた新浪剛史氏。
創業家以外の経営トップ就任は、サントリーにとって初めてのことだったそうです。
新浪剛史 氏 (出典:TOKYO2020)
新浪氏はハーバード大学経営大学院(MBA)を修了しており、安倍政権では産業競争力会議の民間議員も務めています。
また、オリックス、アクセス、三菱自動車の三社で社外取締役を務めるなど、まさに日本を代表するプロ経営者の一人と言っていいでしょう。
大企業の中核で経営者として働く新浪氏ですが、複数回の転職を重ね、なおかつ同時に複数の職務をこなすビジネスプロフェッショナルです。
最強のビジネスノマドとも言える新浪氏の考え方から学べることも多いはずです。
僕たちは今、
非常に「短期」のサイクルの中で生きている。
新浪剛史 ローソン社長
これはローソン社長時代の2013年の言葉です。
元来、日本の企業社会は長い目で世の中に尽くすという考え方がありましたが、現在は欧米の「短期」的な仕組みに組み込まれてしまったというのが新浪氏の見解です。
企業の社員たちも、長期的な展望で会社のために働くという考え方がありましたが、世の中自体が変化していることに注意しなければいけません。
上の世代が語っている企業社会の感覚のままでいると、取り残されてしまう可能性があるということです。
新浪氏の活動の履歴を見ると、「短期」のサイクルを意識していることがよくわかります。
自分の時間は
九五%は基本の徹底に使っていた
新浪剛史 ローソン社長
業績が落ち込んでいたローソンの社長に就任し、「ナチュラルローソン」などの新機軸を推進したり、海外進出の基盤を作り上げ、コンビニの世界に新風を吹き込んだ新浪氏。
マスメディアを通じて、華々しい活躍や新しい派手な取り組みが注目されることも多いように感じられますが、実はそういったことは「ほんの五%もない」と明かしています。
競争相手に「派手なことをやっているな」と思わせておきながら、実は95%は基本の徹底に費やしていたといいます。
ビジネスノマドといえども、仕事の基礎を固めることはとても重要だということです。
面白い発想をしていく上では、
違う発想の人たちを迎え入れることが重要なんです
新浪剛史 サントリー社長
これはサントリー社長就任が決まっていた2014年の言葉です。
ローソン時代、新浪氏が大切にしていた考え方の一つが「ダイバーシティ(多様性)」です。
折に触れてダイバーシティの重要性を説いていた新浪氏は、自社の取締役会の過半数を社外取締役にしていました。取締役会の中でダイバーシティを保ち、成長のための活発な議論を呼び起こすためです。
新浪氏は「いつも成長しなければいけないが、同じ議論だけでは成長できない」とも語っています。
社外取締役をはじめとした、外部からの刺激、または異なる意見をどんどん取り入れることで、ローソンの業績は伸び続けていきました。
自由に働くビジネスノマドは、フリーランスという立場であるほど、他人の異なる考え方を拒絶してしまいがちです。
自分自身が一国一城の主ですから、他人の意見や考え方を取り入れる必要がないからです。
しかし、それでは成長は止まってしまいますし、面白い発想も生まれません。
新しい環境に飛び込み、多様性のあるところで仕事をすることが、ビジネスノマドの醍醐味だと思います。
また、自分が「違う発想」の持ち主として歓迎されるためにも、流行や社会の流れに身を任せるばかりではなく、自分の意見や考えをしっかりと持っていたいものです。
一方で、企業が外部人材の発想を取り入れたオープンイノベーションのために、ビジネスノマドを活用する事例も増えつつあります。
社外で、かつ多くの企業の経験をもち、新しい発想や事業に常に触れている複数企業で働く人材を、新規事業のディスカッションパートナーやブレインストーミングに活用するのは、
極めて有効な外部人材活用の考え方といえるでしょう。
ライター・編集。著書に『名言力 人生を変えるためのすごい言葉』(SB新書)、『平成の名言200 勇気がもらえるあの人の言葉』(宝島SUGOI文庫)、『野原ひろしの名言 「クレヨンしんちゃん」に学ぶ幸せの作り方』、『野原ひろしの超名言 「クレヨンしんちゃん」に学ぶ家族愛』(いずれも双葉社)などがある。構成を担当した書籍に『一生成長し続ける人が大切にしている五賢人の言葉』(小宮一慶著、SBクリエイティブ)など。
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