HR Techとは?

“HR Tech”という言葉を聞いたことがあっても、具体的に何を指すのかを知らない人は少なくありません。まずは、HR Techという言葉の意味について説明します。

先端のIT技術と人事関連業務の連携

HR Techというのは、“先端のテクノロジー技術と採用や育成といった人事関連業務を連携させたもの”です。

つまり、クラウドやビッグデータ解析、人工知能(AI)などの先端技術を利用することで、これまで人によっておこなわれていた作業の時間短縮・効率化を図ります。

これまで人が行なっていた業務を今より簡単で効率よくするには、テクノロジーとの連携が必要なのです。

HR Techは会社全体を円滑にするためにも必要なサービス

HR Techは、自分の仕事を効率的に回すだけでなく、チームや会社全体の業務を円滑にするためにも必要な手法です。そのため、人事に携わるビジネスマンはもちろん、人事担当者以外も押さえておきたい知識の一つであります。

これまでの労力ばかり消費する手法にこだわるのではなく、早い段階でHR Techを導入することで、組織全体が効率的に動くことが可能となるのです。HR Tech導入が進むことは、社員にとっても企業にとってもいいことしかありません。

HR Techが進んでいる分野とは?

ここでは人事関連業務の中でもとくにHR Techの導入が進んでいる5つの分野を紹介します。

1. 求人・人材獲得

1つ目は“求人、人材獲得”の分野です。

近年の求人・人材獲得はこれまでの”履歴書を送付するタイプの採用形態“から、社員や知人からの紹介による”リファラル採用“へと少しずつシフトしています。リファラル採用に特化したサービスも登場しているぐらいです。

こうした背景には、企業が積極的にFacebookやTwitterなどのSNSや通して情報発信をするようになったこと、Linked InやWantedlyなどを利用してのマッチングが行われるようになったことが挙げられます。

こうしたSNSシステムには解析ツールも備わっていることから、自社に興味を持っている人材の傾向や好みを把握することも導入が進んでいる背景にあると推測できます。

2. 面接やその準備

2つ目は“面接”の分野です。

通常の面接では、人事担当者が一つひとつ書類を確認し、募集内容別に仕分けしています。そのため、新卒の採用時期や中途社員を多く募集する時期には書類仕分け業務に人手が割かれているのが現状です。

こうした作業を簡略化するには、AIのレコメンデーション機能が有用ではないでしょうか。ECにおける商品紹介でよく使われている“おすすめの商品や品物を案内してくれる機能”です。

こうした機能を利用することで、効率よく自社にフィットする応募者を抽出してくれる可能性が高まります。最終的には人の目で人材を確認する必要はありますが、最初のふるい分けには有効に活用できるはずです。

実際の面接においても、IT技術の活用は有効です。遠距離の面接者や初回の面談にはWebサイト経由での面接を実施することで、応募者も企業も時間を有効に使用できます。そのため、「とりあえず対面でお会いしましょう」という機会が今後は減るのではないでしょうか。

3. 人事・組織編成

3つ目は“人事、組織編成”の分野です。人事異動や組織編成にはAIやそこで蓄積されたビッグデータの活用が期待されます。

従来の企業では、これまでの実績や評価はもちろん、社員としての扱いやすさや周囲からの評判などが考慮されて人事や組織内のチーム編成が決定されている場合が少なくありません。つまり、大なり小なり“人の感情が人事や組織の決定に関係している“のです。

チームメンバーの仲のよさも大切ですが、プロジェクトを成功に導くにはチームに足りない要素や経験をもつ人材も必要です。適切な人材をチームに組み入れるためにも、AIやビッグデータの客観的な指標が求められます。

4. 離職対策

4つ目は“離職対策”の分野です。

「離職者を減らしたい!」という気持ちは、どこの企業でも同じだと思います。ただし、“なぜ、社員が退職をするのか?”については理由を把握できていない企業が多いのが現状ではないでしょうか。

退職する企業に、本当の理由を語って辞める人は残念ながら少ないです。ですがAIやビックデータを利用すれば、これまでの勤務や給与条件、上司などの要素から離職の理由や要因を推測することができます。

離職者が多い部署やその傾向をつかむだけでも、会社ができる離職対策の幅は広がるのです。もちろん直接確認しなくてはいけないこともありますが、HR Techを利用することで、新しい視点が加わることには違いはありません。

5. 健康管理

5つ目は“健康管理”の分野です。

会社で毎年健康診断を実施しているとはいえ、社員の健康状態をタイムリーに把握することは予防の観点からも重要です。

最近では企業から貸し出しているスマートフォンやウェアラブルデバイスを利用して、”健康状態を管理するように!“とうながす企業もではじめました。歩いた歩数や、血圧管理などが可能となります。

こうした社内を挙げての取り組みを、福利厚生の一環として利用している企業も登場しました。健康管理における個人の目標を達成することはもちろん、企業が一つの目標に向かって頑張ることで社員の一体感を持たせるという効果もあります。

会社の財産は社員です。その社員たちにいつまでも健康でいてもらうためにも、HR Techを活用した工夫は今後どの企業にも求められるものではないでしょうか。

企業がHR Techの導入に積極的になった背景とは?

では、なぜこの数年で企業はHR Techの導入に積極的になったのでしょうか。その背景を3つの理由から考えていきます。

人材の多様化

最初は人材の多様化です。

これまで多くの日本企業では、国内の人材採用に注力していました。もちろん、外資企業の日本法人でも国内で働く人材の採用に積極的です。

近年では人材の多様性が求められることもあり、国内・国外問わず優秀な人材の獲得を目指す企業が増えました。その方法として活用されたのが、ビジネスで利用されるSNSやWeb面談です。

こうした方法をとり入れることで、人材を探す方法やふるい分けがすべて人力でおこなわれていた時に比べると、より効率的に求める人材をピックアップすることができるようになりました。

また企業からもSNSを通して情報を発信できるので、マッチングの成功率を上げることにも大いに役立っています。

デバイスの発展

次はデバイスの発展です。これま多くの企業では、パソコンを中心として仕事が業務の大半だったと思います。ですがスマートフォンの普及、タブレット端末の登場などによって、企業を取り囲むデバイスの発展は大きく変わろうとしているのです。

オフィスでしかできなかった業務が、どこにいても手軽にできるようになりました。こうしたデバイスの発展が業務の柔軟性と変化をもたらしているのは事実です。

HR Tech向けの各種サービスがそれぞれのデバイスに対応した状態でリリースされていることも、企業での導入が進む要因の一つです。一つのデバイスにしか対応していないサービスでは互換性はありませんが、複数のデバイスに対応することで使い勝手がよくなったといえます。

クラウド型サービス(SaaS)やテクノロジーの普及

企業にHR Techが導入された一番の理由は、クラウド型サービス(SaaS)やテクノロジーが企業の担当者でも使いこなせる形にまで普及したことではないでしょうか。

これまで、各種先端テクノロジーは特別な知識や技能をもつ人たちだけのツールでした。そのツールを特別な技能や技術を持たない実務担当者レベルにまで使用が可能なところまで落とし込めたことは、大きな一歩です。

直感的に使用できるサービスも登場しているため、人事関係者だけではなく営業や広報など幅広い職種の人に使用してもらえます。ユーザーの目線に立った使いやすいサービスの登場が、HR Techの導入を進めているといっても過言ではありません。

上司や人事担当者が理解しておきたいHR Techのメリット

ここからは、HR Techを導入したいと考える企業の管理職や人事担当の人たちに知っておいてほしいメリットを紹介します。

人事データの可視化ができる

まずは人事データの“見える化”です。これまでなんとなく肌感覚で感じていた値をデータとして確認できます。

データ化の利点は、認識の統一を図れる点にあります。どうしても肌感覚の共有だと、人によって感じ方に差が生まれてしまい、これまで社内では上手に認識を共有できませんでした。しかし、HR Techを利用することで、これまでなんとなく共有していた情報がクリアになるのです。

社内統制を図る上でも、データの可視化による認識の統一は重要です。

コミュニケーションの円滑化

コミュニケーションを円滑にする上でも、HR Techの導入は必須です。部署間はもちろん、上司や部下の間でも必要なツールとして有効です。

わざわざ口頭で伝える必要がないことを連絡できる手軽さや、記録に残しておきたいことをその場で書いたりできる便利さが重宝されます。

対面のコミュニケーションもビジネスでは必要ですが、相手の時間をとらせないコミュニケーションも今後は積極的に組み入れていく必要があるのではないでしょうか。

まとめ

HR Techの導入は企業の人事活動を新しいステージへと引き上げてくれます。ただHR Techを使うのではなく、その利点を社内で理解し、共有することが効果的な活用には重要です。