副業・兼業解禁の流れが加速しつつある2017年。政府も本格的にこの動きを後押しし始め、2018年にはさらにその流れが急速になることが予想されます。この記事を読み、兼業の意味、メリット、デメリットについて改めて学んでおきましょう。
「兼業」という言葉の意味
ここでは、兼業という言葉の意味について、現在の社会情勢も踏まえつつ解説していきます。
兼業という言葉の意味
兼業とは、簡単に言うと、
「ふたつ、もしくはそれ以上の仕事を掛け持ちしている状態」
を指す言葉です。
掛け持ちしている仕事のどちらが本業ということはなく、それぞれの仕事にかける労力はほぼ同程度の場合に用いられます。
また、「副業」という兼業と似た言葉もありますが、副業の場合は収入の柱となる本業が別にあるのが一般的です。そのため、本業よりも副業にかける労力は少ないことが場合が多いです。
この他、「複業」や「ダブルワーク」といった言葉も兼業とほぼ同じ意味で使われています。
ただ、これらの言葉の意味は文脈に依存することが多く、場合によってはほぼ同じ意味で使われたり、明確なニュアンスの違いがあったりするので気をつけてください。
日本で兼業・副業を認めているのは全体の約2割に過ぎない
株式会社リクルートキャリアが2017年1月に1,147社を対象に行った電話調査によると、正社員の兼業・副業を認めている企業は全体の「22.6%」というまだまだ低い数値にあることがわかっています。
日本では企業の就業規則において兼業が禁止されている場合が大半です。
ただ近年、兼業・副業を解禁する企業も増加傾向にあり、2017年には政府が「柔軟な働き方に関する検討会」を複数回実施するなど、民間だけでなく政府もかかわって企業の兼業・副業解禁を促す大きな流れができつつあります。
働く人が兼業をするメリット・デメリット
今はまだ認めている企業が少ないものの、これから広がっていくであろう「兼業」という働き方。一体どのようなメリットがあるのでしょうか?
まずは、働く人(=雇用される側)が兼業をするメリットとデメリットについて押さえておきましょう。
メリット
1:収入の増加
一番のメリットは何といっても収入の増加でしょう。会社員で月収を5万増やそうとすれば、企業によっては5年や10年必要な場合もあります。一方、兼業をすればこの程度の収入はすぐに手にすることができます。
2:スキルアップ
企業内で所属している部署ではスキルアップが難しい場合でも、別の仕事では自分の必要とするスキルを見つけることができるかもしれません。特に「◯◯の分野・能力について学んでいきたい」という明確な目的意識があって兼業を始めた場合はその可能性が高くなるでしょう。
3:充実感の獲得
現在の仕事で任されている仕事内容やポジションが自分の得意分野ややりたいこととかけ離れていた場合、仕事で充実感を感じるのは中々難しいでしょう。しかし、現在の仕事とは別に兼業で得意分野ややりたいことを思い切りできる環境があれば、充実感を得ることができます。
デメリット
1 :負担の増加
現在の仕事にプラスアルファで新しい仕事の負荷がかかるため、負担が増加します。特に、それぞれの仕事の相関性が低い場合は、負担が大きくなりやすいでしょう。
2:解雇のリスク
就業規則の中で兼業を禁止している企業も多々あります。兼業が確定申告などのタイミングでバレてしまうと、場合によっては解雇されてしまうこともあるでしょう。もちろん兼業は法律上だと原則合法であり、それを理由に解雇するのは違法です。
しかし、兼業が原因で現在の仕事に明らかな支障が出ている場合や、競合他社の役員に就職するなど勤め先に明確な損害を与えた場合は、裁判で「解雇は妥当」の判決が下るケースもあります。
企業が兼業を解禁するメリット・デメリット
それでは、企業が兼業を解禁するメリット・デメリットはどこにあるのでしょうか?働く側だけでなく、雇用する側の視点も身につけておきましょう。
メリット
1:優秀な人材の確保
ポータブルスキルを持っている優秀な人の中には「企業に行動を制限されたくない」と思っている人もいます。そういった人に対して「仕事で結果を出してくれれば兼業してもOK」というスタンスで付き合えば、よい関係が築けるでしょう。
2:人材育成
兼業をするということは、別企業の仕事を体験し、そこでスキルを身につけ成長しているということでもあります。自社以外でも人材育成できるのは、企業にとって大きなメリットと言えるでしょう。
デメリット
1:人材の流出
メリットの「優秀な人材の確保」と少し矛盾しますが、自社に魅力がなければ兼業先の企業に転職してしまうリスクがあります。かといって転職できないように就業規則をガチガチに固めれば、それにうんざりした人が増え、離職率は高くなるでしょう。
人材の流出を防ぐには規則を厳しくするのではなく、自社で働くことのメリットを明確にアピールする必要があります。
2:情報漏洩
競合他社で兼業をしている場合、情報漏洩のリスクがあります。「本人が何気なく喋った内容が、実はかなり重要な情報だった…」ということもあるでしょう。
3:業務効率の低下
兼業をすると負担が増えるため、現在の仕事に支障をきたす場合があります。「兼業により現在の仕事の業務効率が低下した」というケースは珍しくありません。
代表的な兼業スタイルとその特徴
実際に兼業する場合、どのような職種や手段があるのでしょうか?代表的な兼業スタイルをみていきましょう。
仕事が終わってからの兼業
一般的に「ダブルワーク」と呼ばれるようなスタイルです。昼は会社に出社して仕事し、退社した後は飲食店など、夜から活発になる職種で働く、といった具合です。この働き方は収入が増加しやすい一方、体への負担が大きいです。自分に合った働き方なのかどうか、しっかり見極める必要があります。
週末のみの兼業
平日は現在の仕事をしながら、週末だけ別の仕事をするスタイルです。引越しや日雇いバイトなどを選べばそれなりの収入を得ることができます。また、趣味を仕事にしたい場合やまったく別業界のスキルを学びたい場合もこのスタイルが向いているでしょう。
仕事が終わってから兼業するよりも体への負担は少ないですが、ある程度スケジュール管理をしないと休みがなくなってしまうので気をつけてください。
空いた時間の兼業
クラウドソーシングやココナラなどで「自分の都合の良い時間帯・タイミングで兼業をする」というスタイルです。兼業のとっかかりや、専門的なスキル・知識がある人にはこのスタイルが向いているでしょう。また、収益化までには時間がかかりますが、アフィリエイトなどのサイト作成・運営もこのスタイルに分類されます。
まとめ
データからもわかる通り、日本ではまだまだ認められていない「兼業」というスタイル。しかし、近年では国が力を入れて兼業・副業解禁に取り組んでいることから、兼業・副業自由化の流れは今後加速していくでしょう。
執筆者:河内 勝男
会社に勤めつつ2014年から副業を開始。2015年に会社を退職しフリーランスライターとして独立しました。会社員時代の副業経験を活かした記事はもちろん、ライター業以外にサイト運営もしています。