副業サラリーマンにとって、確定申告は天国と地獄の分岐点です。天国は税金を取り戻すこと。地獄は多額の納税を意味します。税金の計算方法を知ればこれらの理由が分かります。また副業が好調のときに、実は落とし穴が待っていることも納得できるでしょう。それでは、税金の計算方法について解説します。

副業サラリーマンの税金を計算する手順

サラリーマンが副業をすると、確定申告により自分で税金を計算・納税しなければなりません。そこで、税金を計算する手順について解説します。

1年間の所得金額を計算するところからスタートする

所得税・住民税を計算するため、まず1年間の所得金額を計算します。
所得金額とは、仕事で稼いだお金のことです。副業サラリーマンにとっての仕事は、勤務先と副業の2種類です。

  • 勤務先:給与所得
  • 副業:事業所得、不動産所得、雑所得のいずれか

この2種類の稼いだ金額を合算したのが、1年間の所得金額となります。

所得金額は、収入金額から経費を差し引いて計算します。

  • 収入金額:仕事で得た収入
  • 経費:仕事で負担した費用

所得金額から更に所得控除が差し引けるケースがある

所得税や住民税を計算する際、1年間の所得金額から所得控除を差し引きます。しかし、副業サラリーマンは年末調整により社会保険料控除などの所得控除が既に引かれています。

そのため、副業サラリーマンが所得控除により所得金額から差し引ける項目は次の3つに限定されます。

(1)医療費控除・セルフメディケーション税制

いずれか片方だけ選択できます。所得控除が可能な条件は次の通りです。

  • 医療費控除:基本的に医療費が10万円を超えること
  • セルフメディケーション税制:ドラッグストアで購入したOTC医薬品が1万2000円を超えること

(2)寄附金控除

ふるさと納税に代表されるように、基本的に市区町村などへ寄付した金額から2000円を差し引いた残額が所得控除可能です。

(3)雑損控除

基本的に次の金額から5万円を差し引いた残額が所得控除可能です。

  • 盗難、横領などの被害額
  • 除雪費用、シロアリ駆除費用などの負担額

所得金額に対する所得税・住民税を計算するのがゴール

仕事で稼いだ1年間の金額から所得控除を差し引いた所得金額に税率を掛けて、所得税と住民税を計算します。それぞれの税率は次の通りです。

(1)所得税

所得金額に応じて税率が高くなる累進課税制度を採用しています。

(2)住民税

所得金額に関係なく、税率は一律10%です。

所得税の納税額を計算する方法

1年間の所得税と納税額はイコールではありません。副業サラリーマンは給料から天引きされる源泉徴収税額により所得税を前払いしているなど、いろいろ要因があるからです。それでは、所得税の納税額を計算するプロセスを見ていきましょう。

適用される所得税率を把握する

所得税は累進課税制度を採用しているため、所得金額によって、次のように税率が変わってきます。

所得金額 税率
195万円以下 5%
195万円超~330万円以下 10%-9万7500円
330万円超~695万円以下 20%-42万7500円
695万円超~900万円以下 23%-63万6000円
900万円超~1,800万円以下 33%-153万6000円
1,800万円超~4,000万円以下 40%-279万6000円
4,000万円超 45%-479万6000円

納税額は1年間の所得税から税額控除を差し引いた残額である

副業サラリーマンは源泉徴収税額で所得税を前払いしているなど、次の項目について税額控除が可能です。

  • 給料や副業収入から天引きされる源泉徴収税額
  • 住宅ローン控除 など

確定申告で税金が取り戻せるケース

確定申告した際、税金が取り戻せるケースがあります。それは「1年間の所得税<源泉徴収税額と住宅ローン控除の合計額」となる場合です。

具体的に確定申告で税金が取り戻せるケースを見ていきましょう。

(1)確定申告で住宅ローン控除を受ける

マイホームを購入した年の翌年は確定申告しないと住宅ローン控除は受けられません。控除できる金額は次の通りです。

  • 「マイホームの購入費用のうちプライベート部分」と「ローン残高」の少ない金額✕1%=住宅ローン控除の金額

(2)副業を赤字で確定申告する

雑所得は赤字を計上しても、給与所得など他の所得から差し引けませんが、事業所得と不動産所得なら差し引くことが可能です。その結果、会社から天引きされた源泉徴収税額の一部を取り戻せます。

しかし、副業を赤字で確定申告すると、住民税は自動的に特別徴収です。最近は少なくなりつつありますが、市区町村によっては、所得の内訳明細などの個人情報が勤務先に伝わり、副業がバレるリスクがあります。

住民税の納税額を計算する方法

副業サラリーマンが所得税の確定申告をすると、市区町村が住民税の納税額を計算してくれます。しかし、計算の仕組みを知らないと思わぬ落とし穴が待っています。

住民税の納税額は所得税より1年遅れで計算される

所得税はその年の所得金額に対して課税されるため、稼いだ金額から納税する仕組みです。それに対して、住民税は1年遅れで計算されるため、稼いだ金額と比べて、相対的に納税額が多かったり少なかったりします。

また、住民税の税率は一律10%なので、所得金額の低い人にとっては、納税額が重くのしかかります。住民税はその年に稼いだ金額と比例しないからこそ、納税額を予測することが大切となります。

住宅ローン控除がある場合は控除できるかも?

住宅ローン控除の金額は多額となる傾向があります。たとえば、「マイホームの購入金額=住宅ローン残高」が1500万円の場合、1%の15万円が所得税から控除可能です。

ところが所得税が12万円の場合、15万円の住宅ローン控除のうち、3万円は引ききれません。その引ききれない金額は住民税から控除されます。

副業で稼ぎすぎた場合における2つの落とし穴とは?

副業で稼ぐとお金は残ると考えがちです。しかし、一歩間違えると所得税や住民税の納税額が多額になります。陥りがちな2つのケースをご紹介します。

所得税の納税額が急激に上昇するケース

所得税では所得金額に比例して税率が高くなる累進課税制度を採用しています。そのため、副業で稼ぎすぎると高い税率が適用され、納税額が急激に上昇することがあります。

たとえば給与所得600万円、副業での所得400万円とします。勤務先の年末調整では600万円に税率20%で源泉徴収税額を計算します。しかし、副業での所得と合算すると所得金額は1000万円となり、税率は33%になります。副業で稼ぎすぎると所得税の税率が高くなり、納税額は急激に上昇するのです。

ここで大切なのは、給与所得に対して用いる税率を把握することです。勤務先からもらう源泉徴収票から所得金額を読み取るのがポイントとなります。具体的には、源泉徴収票に記載されている「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を差し引いた残額です。

稼ぎすぎた翌年は住民税の負担が大変

住民税は1年前の所得金額に10%を掛けて計算し、納付します。そのため、退職などにより、収入が減ると、住民税の負担が相対的に増加します。

たとえば、去年は副業が好調で、給与所得と合算した所得金額が1000万円だったとします。その副業サラリーマンが今年になって独立した結果、業績不振で収入が月額平均15万円になったとしても、副業が好調だった去年の所得金額をベースに住民税は計算されます。

副業で稼ぎすぎた年の翌年は住民税が増えることを覚悟しましょう。

まとめ

副業サラリーマンが所得税や住民税の計算の仕組みを知るメリットは、納税額を予測するスキルが身につけられることです。特に副業が好調な年は、翌年の納税が大変になるため注意が必要です。所得税と住民税の納税に備えて、ゆとりを持つようにしましょう。

執筆者:阿部 正仁

TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。