長時間労働の問題とは

長時間労働の問題は1日の労働時間が8時間を超えて長くなり、その残業時間が月200時間を越えることです。これ以上残業をしている人もいます。このような長時間労働は以前から問題になってきましたが、特に近年、長時間労働による自殺者が大きくニュースで取り上げられるようになりました。

また国際機関からも日本の長時間労働が問題視されています。例えば国際労働機関事務局長のガイ・ライダーは「“過労死”は悪い意味で世界中に知られている」とし「労働需給がひっ迫している(必要な労働力が確保できない状態)からといって、既にいる労働者に長時間労働を求める、というのは明らかな間違い」であり、「これは日本政府も理解していると思うが、重要なのは、労働市場により多くの人を参入させることであって、既存の労働者を長時間働かせることに、未来はない」と述べています(「“世界の労働トップ”「過労死」世界で悪名」)。

こうした長時間労働を改善しようという動きは政府からも企業からも出てきています。特に働き方改革ではこの問題が議論されていますが、規制を強化する一方で、緩和するという考え方も出てきているのが現状です。

長時間労働に対する規制の強化

働き方改革の中で、長時間労働に関して次の3つが結論として出されています。ここではそれぞれの項目について説明します。

1.労働時間に上限を設ける

上限の原則としては月45時間、年360時間となり、違反に対しては罰則が科されるようになります。ただし、労使協定を結ぶことで年720時間までは時間外労働時間が許可されます。しかし以下の3つの条件を守る必要があります。

  • 休日労働を含み、2か月ないし6か月平均で 80 時間以内
  •  休日労働を含み、単月で 100 時間未満
  •  原則である月 45 時間(一年単位の変形労働時間制の場合は 42 時間)の時間外労働を上回る回数は、年6回までとすることが適当である。

このように上限が決められて罰則が強化される方向ではありますが、それでも労働時間の上限が長いと言われています。また、そもそも残業時間を申請しないという場合も考えられるでしょう。

2.勤務時間インターバル

終業時間と始業時間の間がほとんどなく働いている人もいます。こうした状況を改善するために、労働時間等設定改善法に新たに「「終業時刻及び始業時刻」の項目を設け、「前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息時間を確保すること(勤務間インターバル)は、労働者の健康確保に資するものであることから、労使で導入に向けた具体的な方策を検討すること」等を追加する」ようにすることにしました。

3.長時間労働に対する健康措置

過重な労働時間によって健康リスクを発症している労働者もいるはずです。こうした労働者に対して医師による面接指導や労働時間の客観的な把握をすることが求められます。会社としては労働時間に関係なく、健康リスクがある労働者を把握しておく必要があるでしょう。

長時間労働に対する規制の緩和

働き方改革では長時間労働の規制を強化する方向に向かっていますが、残業時間の規制を緩和するという動きもあります。こうした動きは働き方改革とは逆行する動きであるとの批判が多いですが、議論がなされていますので、ここで2つの規制緩和について紹介しておきます。

1.高度プロフェショナル制度

高度プロフェッショナル制度」とは「残業代ゼロ法案」とも呼ばれており、「年収1075万円以上の金融ディーラーら専門職を対象に、1日8時間、週40時間の労働時間規制を外し、仕事の進め方を労働者の裁量に委ねる仕組み」であり、「残業代や深夜・休日手当は支払われない」制度です。こうした制度は働き方を柔軟にするという評価もありますが、残業時間が増えるというのが一般的な見方でしょう。まだ成立していない制度ですが、今後の流れを見ておく必要があるでしょう。

2.裁量労働制の拡大

裁量労働制」とはどのような制度かというと、「業務の遂行方法が大幅に労働者の裁量に委ねられる一定の業務に携わる労働者について、労働時間の計算を実労働時間ではなくみなし時間によって行うことを認める制度」のことを言います。こうした制度を悪用すれば、一般社員に裁量労働制を導入して、残業代を払わないということも可能です。

実際に野村不動産が裁量労働制を不当に適用し、東京労働局から是正勧告を受けています。野村不動産は「是正勧告・指導を厳粛に受け止め、適切な労務管理に努めるとともに、労務時間の短縮を目指す」としていますが、裁量労働制を拡大すれば、こうした事例が増えることが予想されます(日経新聞2017年12月26日)。こちらの議論もどのようになるのか注目しておくべきでしょう。

長時間労働を社会全体で見直していきましょう

長時間労働は国の制度だけの問題ではありません。企業も長時間労働を無くす努力をする必要がありますし、労働者の側も長時間労働を減らす努力をする必要があります。長時間労働はすべきではないということを社会全体で共有し、見直していきましょう。そうすることで過労死がない社会を作っていきたいですね。

記事作成/ジョン0725