今回はフリーランシングに関する米国を中心とした世界の最新統計をご紹介しましょう。
まず最初は、企業がどのくらい非従業員(フリーランサーや外注)の労働力に頼っているかという調査です。サービスの調達・外部人事管理プログラムを管理する米国ソフトウェア会社SAP Fieldglassの『外部従業員労働力調査』では、「大企業で働く労働者の44%が社内従業員ではない」ことがわかっています。この報告書は「需要と外部労働者の競争の拡大」により、この先の数年間でこのシェアはより拡大するだろうと述べています。
企業がフリーランサーやその他の独立労働者について語るとき、非常勤人員にサービス会社(コンサルタント、マーケティングエージェンシー、施設管理会社など)も含んでいることにご注意ください。上記のチャートでも、アンケートに答えた企業が外部サービスプロバイダ(濃いオレンジ色)と外部の独立した労働者(薄いオレンジ色)に同じくらいの額を費やしていることがわかります。この報告書は「外部労働者が今やビジネスパフォーマンスの向上に不可欠である」ことも指摘しています。
下のグラフはほとんどの回答者が、社外の人材が企業でミッションクリティカル(業務の遂行に必要不可欠な要素)の役割を果たしていると感じていることを示しています。
フリーランスエコノミーが浸透している米国都市は?
世界最大のオンラインフリーランス・プラットフォームFiverrの『フリーランス経済の影響を理解する研究』は、「専門的なフリーランサー」と呼ばれるものに焦点を当てています。これらは専門的、技術的、創造的なサービスを提供する労働者のことです。
以下のチャートが示すように、米国には約250万人の専門的なフリーランサーがいます。Fiverrは、米国勢調査の非雇用者ビジネスデータを詳しく分析し、専門的なフリーランサー数の見積もりを作成しました。
最新のデータは2015年からのもので、その時点で約2,430万人の米国非雇用者ビジネス(ビジネスオーナーがいて、従業員のいないビジネス)があったことが示されています。そのうち専門のフリーランサーは約10%を占めています。
これらのデータは地理的詳細も示しており、米国の首都圏上位15都市の都市推定値も測っています。それによるとニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴが、専門的なフリーランサーの総数で上位3都市となっています。この結果には、多様な労働形態はやはり大都市からという感がありますが、日本の場合はどうでしょうか。
長期にわたる非雇用者ビジネスの統計を追うと、独立労働者の増加が米国で初めて見られたのは2006年だったことがわかります。非雇用者データは、受動的なビジネス、すでに営業を停止しているビジネス、大企業が所有するLLCなど、自営業に無関係な数値も含んでいるため、米国政府の他のデータのようには注意を払われませんが、米国の自営業に関する地域データの一つとして貴重なものです。
ギグワーカーはお金により注意を払っている
次にギグ労働者について、投資信託会社T. Rowe Priceの『ギグエコノミーへの経済行動の研究』から見てみましょう。この研究では、ギグ労働者は彼らのお金により注意を払っているという結果が出ています。「ギグ経済への参加は労働者の財政的責任を増進させている」というのです。下の図が示すように、調査されたギグ労働者の78%が、ギグワークを始めてから財政により深く関わるようになったと答えています。
一般的にギグワーカーは予測不可能な収入の流れに直面しており、財政に注意深くならざるを得ないことを考えると、これは当然と言えるでしょう。
予測不可能な収入の流れは、労働者をギグワークから遠ざけるだろうと思われる向きもあるでしょうが、現実はそうではありません。ギグエコノミ―についてのほとんどの研究結果と同様、T. Rowe Priceの研究でも、ほとんどのギグ労働者がギグ労働について積極的であることがわかっています。必要に迫られてギグ労働をしているギグ労働者(約32%)も、ギグ労働に積極的だという結果が出ているのです。
不確実でも、自営業者は企業労働者より幸せ
英国のシェフィールド大学とエクセター大学の教授によって、英国、米国、オーストラリア、ニュージーランドの5,000人の労働者を対象に行われた『自営業者と雇用された専門家の仕事の方向性、幸福、仕事の内容について』行われた学術調査があります。
この調査では、自営業者は伝統的な企業労働者よりもハッピーで、仕事に打ち込んでいるという結果が出ています。その理由は「企業労働者よりも自律性が高い」から。自営業者は自分の仕事をよりコントロールでき、能力を高めることができるからです。
自営業にはチャレンジ、不安、ストレスが付いて回ります。これには企業労働者が直面するよりも長い、より高いレベルの不確実性が含まれています。これらの欠点にもかかわらず、自営業者たちは伝統的な仕事よりも自営業の方を好むと報告されています。
自営業者のこのような好みを示す研究結果が圧倒的に多いにもかかわらず「自営業者の大半が自らの仕事に満足していることを信じない人が多い」というのは、面白い現象です。
この懐疑主義はリスク特性によるもの-ほとんどのアメリカ人は、自営業は危険すぎると考えています。これが、他人がこれらのリスクを容認できることに対して、彼らを懐疑的にしています。もう一つの理由は、自営業者の約30%が伝統的な仕事を好んでいるという事実です。したがって3割の自営業者はそうではないものの、大半の自営業者は幸せだという方が正確でしょう。
またこの調査結果には、平均してギグ労働者は企業労働者と同等の所得水準を保っていることも報告されています。
まとめ
上記にご紹介した統計は、主に米国のものです。これらをよりよく理解するために、近年の米国の経済状況も併せておきましょう。米国の失業率は2000年以来初めて4%を下回り、2010年以来低下を続けています。
フリーランサーは平均して「企業労働者と同等の収入を得られている」という結果が、さまざまな統計に見られますが、それも米国経済の安定があってこそ。あとはフリーランサーたちが社会保障を獲得することができれば、フリーランス経済が米国社会に本当に浸透したことになるわけですが、日本の現状ではまず、フリーランサーの最低賃金を確立したいところではないでしょうか。
参考記事:http://www.smallbizlabs.com/freelance/
記事制作/シャヴィット・コハヴ (Shavit Kokhav)