これまで、フリーランス経済先進国の米国、カナダなどに続いて、世界のさまざまな地域でフリーランスの労働形態が受け入れられつつあることをご紹介してきました。今回は技術分野のフリーランサーの活躍目覚ましいインドに焦点を当ててみましょう。

インドのフリーランス人口は世界第2

インドには推定1,500万人のフリーランサーがいると言われています。人口から見るとこの数は、米国の推定5,400万人に次いで世界第2位です。ちなみに欧州のフリーランサー数は、推定890万人と言われています。

 

これら1,500万人のインドのフリーランサーが、世界中で提供されているすべてのフリーランス仕事の40%を行っています。これに加えて、インドでは 毎年1,500万人以上のプロフェッショナルが学校を卒業して市場に出ています。これらの数字から、インドのフリーランス経済の台頭の著しさがうかがえるでしょう。

インドの契約雇用がキャッチアップ

ただし「米国に5,400万人のフリーランスのプロフェッショナルがいる」と言うとき、その半数は、一度に複数の企業と契約してコンサルタントとして働いていることを注釈しておく必要があります。それに比べて、インドの契約労働力は依然として初期段階にあります。

 

しかし、様々な産業のスタートアップ企業がコントラクターとして働くシニアプロフェッショナルを探しているため、インドのプロフェッショナルへの需要は高く、彼らはコントラクターとして働くことのメリットを実感しています。

インドで求められているスキル

 インドで求められているフリーランサーのスキルには、需要の高い順に以下のようなものがあります: クラウドと分散コンピューティング、コンテンツマーケティング、ユーザインタフェースの設計、グラフィックデザイン、デジタル/オンラインマーケティング、ウェブアーキテクチャと開発フレームワーク、Perl / Python / Ruby、データプレゼンテーション、モバイル開発、アルゴリズム設計、SNSマーケティング、ゲーム開発、シェルスクリプト言語、ミドルウェアと統合ソフトウェア、PRとコミュニケーション。

スタートアップ・エコシステムの発展とその背景

 

インドは、米国と英国に続いて、世界で最も急速に成長しつつあるスタートアップ・エコシステムを持つ、世界で3番目に多くのテクノロジーを導入したスタートアップ産業国です。2015年8月にナレンドラ・モディ首相によって発表されたStartup Indiaキャンペーンは、起業家精神を高め、雇用の創出を目指して、スタートアップ企業のための銀行融資を促進する計画に基づいています。このキャンペーン下の取り組みの中には、女性コミュニティの起業家精神の促進や、農村部のスタートアップ開発なども含まれています。

 

エンジェル投資家は、世界中のベンチャーキャピタル企業と同様に、インドのスタートアップ企業を積極的に探しています。インド政府からの多くのインセンティブで、2016年にはインドは真に理想的なスタートアップコミュニティとして有望視されるまでになりました。

インターネットの普及と品質の改善

もう一つよく知られていることに、インドのインターネットの普及率の高さがあります。インドのインターネットユーザ数は3億7,500万人と、世界第2位です。インド人のインターネットへのアクセスは過去15年間で7,000%以上。この増加もフリーランス産業の急成長に大きな影響を与えています。インド政府はGoogleやISROなどと協力して、遠隔地にも良好なインターネット接続性を提供して、アクセスを増やし、フリーランス経済の成長を促しています。

女性と退職者の貢献

技能の高い女性労働者や引退した専門家も、フリーランス経済の成長に貢献していると言えます。インドには、家族への義務や社会的慣習のために、修士や博士号を取った後も家の外で働くことのできない女性たちがいます。スマートフォンの普及がこれらの女性の労働力への参加を可能にしています。

 

また退職したプロフェッショナルも、副収入や、社会とかかわり続けることができるというメリットから、フリーランス労働に加わっています。フリーランス労働は、「独立性」と「最新の市場動向やテクノロジーに精通していたい」という欲求を満たしてくれるのです。

まとめ

スタートアップ企業が、あらゆる可能な方法でフリーランサーやコンサルタントを積極的に活用していることで、インドのフリーランスの雇用機会は伸び続けています。

 

インドのフリーランサーを雇っているのは、インド企業だけではありません。米国のスタートアップ企業の半数以上がインドのフリーランサーのサービスを直接/間接的に利用しています。これには、米国のスタートアップは仕事の質を維持しながら、コストを削減することができ、インドのフリーランサーは、インド企業でフルタイムで働く以上の収入を得ることができるという相互利益があります。

 

インドの雇用創出エコシステムの拡大は、政府の援助が基盤となっています。熟練したフリーランサーの豊富さ、インターネットの普及度の高さ、モバイルユーザの増加など、インドのフリーランス経済はこの先も躍進していくことでしょう。

 

高齢化の進む日本でも、経験のある退職者や女性がフリーランスやコンサルタントとして、より良く働くために、まず政府から動き出してほしいものです。

 

参考記事:

https://www.linkedin.com/pulse/indias-freelance-economy-booming-2016-rupak-das/

 

記事制作/シャヴィット・コハヴ (Shavit Kokhav)