今後10年間で、米国の労働力の大半はフリーランサーになるだろうと言われています。この予測は、大手フリーランスプラットフォームUpworkと米国の非営利団体Freelancers Unionの依頼で、調査会社のEdelman Intelligenceが行ったFreelancing in America: 2017という調査に基づいています。この調査では、米国のフリーランサーと非フリーランサー6千人を対象に、現在米国で成長しているフリーランス経済の実態と、それが将来のワークシーンにどのような影響を与えるかを探ったものです。

 

もちろんどのような調査も、10年後にどれだけのコントラクター(契約労働者)やフリーランサーがいるかを正確に把握することはできません。それどころか現在のフリーランサーの人口をつかむこともままならないのです。なぜならフリーランサーには、フルタイム、ムーンライター、週末労働者、ギグワーカーなど様々な形態があるからです。

 

しかしこのFreelancing in America: 2017の報告書を見る限り、米国のワークシーンが急速にフリーランスベースに向かっていることは疑う余地がなく、フリーランス業へのシフトの準備は早ければ早いほど良いということになりそうです。

Freelancing in America: 2017の内容

米国のフリーランス労働力は、2014年以来、全米労働力の3倍のスピードで成長しています。現在全米労働人口の36%がフリーランスです。年齢的には、米国のフリーランサーの約半数がミレニアルズですが、50代と60代の労働者のおよそ28%もフリーランサーだと報告されています。

 

フリーランサーの労働形態では、過去3年間にフルタイムフリーランサーの数が12%増えて、29%になりました。一方、パートタイムやムーンライターのフリーランサー数は減少しています。このあたり、どうやら本腰を入れてフリーランス業を行おうという人が、本当に増えているようです。そして、自らの意志でフリーランサーになった人は63%、これは2014年より10ポイント上昇しています。

 

一番気になる収入面ですが、米国のフリーランサーは財政的にも好調なようです。調査対象となったフリーランサーの3分の2近くが、雇用されていた時よりも多くの収入を得ていると回答しています。

 

仕事はどうやって見つけるかという質問には、過去1年間で調査対象者の4分の3近くが、オンラインで仕事を見つけていると答えています。

良いことづくめでないのは想像に難くない

しかし、いかにフリーランス経済が進んでいるとはいえ、米国のフリーランサーの生活に問題がないわけでないことは明確です。月1回ほど貯金に手を出してしまうフルタイムの企業労働者が20%なところ、フルタイムのフリーランサーでは63%という数字も、それを物語っています。

 

いつ仕事が入って来るのかわからない、予測不可能なワークフロー、変動するキャッシュフロー、米国では特に高い健康保険の確保と支払いは、多くのフリーランサーにとって大きな障害です。この調査対象のほとんどのフリーランサーは、手頃な価格のヘルスケアを手に入れていると言います。

フリーランサーとして生き残るために

米国ではフリーランサーになる人が着実に増え続けています。そこで米経済誌フォーブスは、将来フリーランスになる可能性が誰にでもあることを前提に、どう準備すべきかのヒントを紹介しています。

 

まず第一に、「絶えずスキルを向上・更新させておくこと」です。フリーランサーの55%が過去6カ月間に新しいスキルを身に着けたと答えています。したがって6カ月以上何のスキルも磨いていない人は、フリーランスとして生き残れないことになります。ちなみに非フリーランサーでは、過去半年間に新しいスキルを身に着けたと答えた人は30%でした。

 

フリーランサーの77%がこの先20年以内に、ロボットや機械に仕事の一部を取って代わられるだろうと答えています。この意味でも可能な限り、スキルベース、業界の専門知識、技術の優位性を多様化させておくことが必要です。

 

つまり「絶えず学べ」ということですが、その方法としては企業が提供している研修やワークショップの利用、授業料の払い戻しを得られるシステムの活用、手頃な価格のオンラインコースやコミュニティカレッジの利用が勧められています。

 

ネットワーキングの強化も重要なポイントです。仕事はオンラインで見つけられるとはいえ、知人を介した仕事の提供も十分あり得ます。この調査ではソーシャルネットワーキングの利用が第3位でしたが、LinkedInやTwitterで職業ネットワークにチェックインしておくのもよい方法でしょう。思わぬ出会いがあるかもしれません。

高収入のサイドビジネス

「何を学べばいいか」と言えば、それは高収入を上げられるスキルということになります。週4〜5時間仕事をすると仮定した場合、米国で高収入のサイドビジネスとして挙げられるのは、ディスクジョッキー(時給65.70ドル)、ミュージシャンまたは歌手(43.40ドル)、写真家(36.20ドル)、メイクアップアーティスト(34ドル)、ピアノ教師(31.20ドル)だそうです。

まとめ

「コントラクター(契約労働者)とフリーランサーの違いは何か」という議論がよく聞かれることも、米国でフリーランス経済が発展していることを感じさせる事象の一つです。これらの言葉の定義はサイトや団体によって微妙に異なりますが、大方コントラクターは「オンサイトで一日○○時間働く契約をしている労働者」、フリーランサーは「複数のクライアントを相手に単発仕事をしている人」という定義が成り立っているようです。

 

日本では、米国ほどはっきりフリーランス経済へ向かっているという方向性は見られませんが、労働形態は確実に多様化し始めています。その意味で、将来フリーランスの可能性を考える人には、米国の動向は見逃せないものでしょう。

 

参考記事:

https://www.forbes.com/sites/nextavenue/2017/10/30/3-steps-to-take-to-start-freelancing/#f618a88655e4

 

https://www.thebalance.com/are-freelancers-contractors-or-independent-contractors-3515143

 

記事制作/シャヴィット・コハヴ (Shavit Kokhav)