米国Freelancers Unionとオンラインフリーランス・プラットフォームUpworkの調査結果で、2014年には米国労働者の約3分の1がフリーランスとして働いていたことは、すでにご紹介しました。このフリーランサーの増加傾向は、米国だけに限られたことではありません。この動きはアジアにも確実に広まりつつあります。

 

たとえば、社会経済に苦難の歴史を担ってきたベトナムは、2013年にはすでに「中所得国」に移行しています。ベトナムの人口の13.3%が自営業で、世界の「起業家精神の高い国」の第5位にランクされています。

世代交代の著しい中国

自営業が人口の10.2%の中国は、起業家精神ランキングでは世界11位です。中国の若者の間には「自治権を求める」欲求が強く、より多くの自由、起業家精神、専門技術を追求する若者と、伝統的な中国人との世代交代が顕著です。

 

これまでは「大学を出て安定した企業に入る、できることなら国有企業が望ましい」というのが中国の中流階級のあり方でした。しかし昨今、肥大化した中国国有企業が労働力を削減するにつれ、ギグタスクで働くフリーランサーの数が上昇しています。

ミレニアルズに人気のDouMi

パートタイムのポジションに焦点を当て、インターネット代理店とマーケティングサービスとの間に派遣代理の要素を融合したDouMiは、中国最大の検索エンジン BaiduやソーシャルネットワーキングTencent Holdingsの後押しで、短期間の雇用を求める中国の若者を惹きつけ、わずか6ヶ月間で毎月のアクティブユーザ数が2倍の2千万人に増えました。

 

北京の街頭で、スポーツ用品のコンベンションで訪問者を案内する仕事を持つ、21歳の会計学専攻生ツァング・チェンさんもDouMi使用者の一人です。2日間の仕事で240元(約4,000円)のこのギグタスクについて「報酬は少ないけれど、私は面白い人生を求めているの」と説明します。

 

短期間の仕事の「柔軟性」は、中国の若者に強くアピールしているようです。DouMiのユーザはスーパーで牛乳の箱を並べたり、街頭でパンフレットを手渡す仕事で、約130元(約2,100円)の報酬を得ることができます。ちなみに18~28歳の美しい女性なら、男性向けのライブストリームでモデルをすれば、この4倍は稼げるのだそうです。

 

DouMiの最高経営責任者チョウ・スーヨン氏は、「毎月30万から40万件のギグタスクを掲載している」と語っています。「若者の多くは、社会補償が無いことはそれほど気にならないようです。もともと一所に長くいるつもりがないからでしょう。」

 

DouMiの求職者のほぼ半数は大学生で、90%が35歳以下です。大学生1万3,000人を対象とした2016年の世論調査では、48%が伝統的な労働市場には加わりたくないと答えています。

経済的理由によるパートタイム労働

「1990年以降に生まれた中国人は、もはや彼らの両親たちのようには勤勉でない」とは、厦門大学のバイ・ペイワイ経済学教授の発言です。「彼らは自由と余暇を重んじ、職場の上司に制限されるのを嫌います。」

 

中国はこのところ、過去25年間で最低の経済成長を示しており、不完全雇用率(フルタイムの標準に達しない労働時間・日数などの条件で雇用された状態)は2010年にほぼゼロだったものが、昨年は5%以上も上昇しています。不採算国営製鉄所や炭鉱労働者の 多くが賃金削減やシフトの削減に甘んじ、無報酬で仕事を去らなければならない人も出ています。2012年以降、製造業、鉱業、建設業の雇用数は減り、より多くの労働者がより柔軟に雇用されるような経済に集まる傾向が見られています。

 

「国有企業の安定した伝統的な仕事を望まない人はいませんが、これらの仕事はもはや、特権を持たない大卒や移民労働者には手に入りません」と、人民大学のシュウ・セオツェン教授は語っています。

まとめ

技術がこれまで以上に地球の多くの部分に浸透するにつれ、人々の基本的な欲求はますます複雑になってきています。多くの人が単に仕事を求めるのではなく、仕事と生活のバランスをより良く保ったり、情熱を持てるキャリアを選んだり、自分がボスになれるように、仕事の仕方をコントロールしようとしているのです。

 

ギグエコノミーはこれまでにない規模で、それらを可能にしています。WeWorkは最近、中国国内に数か所、インド、オーストラリア、香港、韓国にもコワーキングスペースを開きました。同社の創設者兼最高経営責任者のアダム・ニューマン氏は「中国のスタートアップ企業の急成長と、国をあげたイノベーションや起業家精神への奨励は、スタートアップにとって大きなチャンスです。もちろんWeWorkにとっても、世界第2位の経済の中で仕事をする絶好の機会です」と語っています。

 

中国のパートタイム労働者の比率は、米国や日本のような多くの先進国と比べるとまだ低いのですが、上記のような経済的理由から、この先高齢者のパートタイム労働力の増加が予想されています。DouMiでも最近は、年配の労働者の数が増えてきているそうです。

 

参考記事:

http://www.straitstimes.com/asia/east-asia/chinas-millennials-dig-the-gig-economy

 

記事制作/シャヴィット・コハヴ (Shavit Kokhav)