アマゾンやアスクル、楽天も小売業の新発明といえるでしょう。成長著しく、確実に業界をリードしています。この発明を私たちも利用してみましょう。EC物流を産業の課題解決、ソリューションとして活用していくことに大きな可能性があります。

21世紀のモノづくり。クラウドファンディングによる事業立上げリスク最小化

クリス・アンダーセンの『MAKERS』では21世紀のモノづくりを紹介しています。

SNSで世界とつながり、3Dプリンターで多品種少量生産が可能となり、クラウドファンディングで資金不安や投資のリスク軽減ができると、たった一人でもメーカーになれます。

その流れは直ちに日本にも広まり、例えば、3DプリンターサービスもDMMが始めました。

製造業の課題は何と言っても投資資金の不安です。何が売れるか分からない霧の中から、新商品を量産化しなくてはならないからです。

けれども、デジタル設計図とクラウドファンディングというEC(電子商談)を経験すれば、事業立ち上げのリスクは最小限に抑え込むことができます。

クラウドファンディングは、何か新しい仕組みのように聞こえますが、実は随分前からありました。「ラーメンファンド」、「レーベルファンド」はお聞きになったことがあるでしょう。脱サラで資金がないからラーメンの回数券をまとめて買っていただくのが、ラーメンファンド。ミュージックバンドで自主製造CDの資金を集めてくれるのが、ミュージックセキュリティーズ(MS)という会社でした。MS社は音楽CD以外にも東日本大震災のために多くの資金を集めて、被災者支援の大きな功績を残しています。その名も「佃煮ファンド」「かまぼこファンド」「〜〜食堂ファンド」など、広く薄く資金を集めています。

アマゾンのフルフィルメントサービス(AFS)。価格、機能仕様、量産化前の試作品評価が、EC通販の利用によって解決できる

事業資金の老舗はKICK starterでスマホ連動の腕時計Pebble watchは数十億円を集めて大成功を収めました。Apple Watchのはるか2年も昔のことです。

自信のある商品やアイデアがあればそれを画像やイメージ動画にして公開するのがクラウドファンドの公式です。お客は納得して予約金、寄付、支援金を拠出します。プロジェクトが成功しない限り(商品化と販売可能とならない限り)、資金は運営会社によって保証されます。(成功すると運営会社は2割程度の手数料を徴収します)

決して個人だけに限定したものではありませんから、企業でも事業部や商品単位で応募してみれば良いのです。何より社内の企画書であれこれ言うより、市場やナマのお客様の反応がわかるからです。モノづくりの資金不安は解消されました。

次は試作品や量産モデルの初期打ち出し商品を「数量限定レーベル」としてネット通販サイトで販売をかければ、お客様や市場の反応がわかります。価格感度や機能仕様をテストマーケティング可能なわけです。ヤフーでは、このような利用の仕方を「ABテストモデル」として、多くの出店者(こちらも個人だけでなく企業もあります)が存在していることを明らかにしています。
メーカーにとっての価格決定、機能仕様の決定、ネーミングやカラーリングの量産化前の試作品評価が、EC通販の利用によって解決できるのです。少量商品の販売一式を引き受けるサービスを、アマゾンはフルフィルメントサービス(AFS)と呼んでいます。

「立地と品そろえ」から、「リピート化と高単価商品開発」へ

小売業は規模を問わずに、「立地と品そろえ」に尽きると言われてきました。多くのお客様を呼び込むには、「駅ナカ」という交通事業者の流通への進出が脅威ではありますが、やはり多くの来店客を仕掛けることが必須と言われてきました。反面には商品のコモデティ化という価格破壊も不安です。「売れれば売れるほど安くなる」ジレンマです。

立地と品そろえを超越した発明がECネット通販ですから、小売業の次の課題は、「顧客のリピート化と高単価商品開発」です。お客様から愛される店作りと客単価の上昇です。こちらにも優れたモデルが実はありました。ここでは高級外車のショールーム販売とハンドメイドセーターのECショップの事例をご紹介します。

「気仙沼ニッティング」は週末だけオープンする、手作りセーターのショップです。わずか4種類、平均価格は7万円と高額です。「気仙沼」というブランド作りに成功したとも言われていますが、高単価商品を限られたお客様だけに売り続けるモデルとして理想形とは言えないでしょうか。

同様に、男性用アパレルサンプルだけを展示してお客様との会話を楽しむ予約型ショールームを展開するGUIDESHOP”BONOBOS”もユニークです。店は路面店ではなく、ビルの地下や上層階でネット予約によって制限をかけています。販売する商品は、一点だけのサンプルであり、カラーサイズはデジタルカタログで選ぶようになっています。まさに、自動車のショールーム販売方式です。ショールームという販売方式は、立地や品そろえの設備投資を極力排除する仕組みといえるでしょう。現金を扱いませんから従業員や店舗のセキュリティ不安を解消します。品そろえのための在庫も最小限となり、タブレット端末などでの電子カタログを利用することでネットと店舗の同時化・融合化も図れます。

ECと物流の組み合わせで始まる新しい業態やサービス

このように新しい業態やサービスがECと物流の組み合わせで始まっています。話題を集めるベンチャー企業群のように見えていますが、レガシーと言っては失礼だけれども既存の事業や成熟産業であっても実はこの手法は使えるのです。

今、ECと物流を単なる小売業の発明として捉えるだけでなく、私たちのビジネスの課題解決ソリューションとして見直してみると、様々な分野で活用応用が可能になっていることに気づかれたでしょうか。

専門家:花房 陵(ロジスティクス・トレンド株式会社 代表取締役) 
1955年生れ東京都出身 慶応大学経済学部卒 証券会社を経て、生産・物流コンサルティング歴30年。28業種200社の物流センター開発と改善指導に携わり、多くの商材でSCM実現化課題を解決してきた。2012年より月刊誌ロジスティクス・トレンド発行人。主な著作に「見える化で進める物流改善」、「物流リスクマネジメント」共に日刊工業新聞社刊。

ノマドジャーナル編集部
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