コンサルティング業界において、大手企業ではブランド力やグローバルネットワーク、マンパワーなどを活用し、小規模事業者では難しい大規模プロジェクトを手掛けています。ただ、この業界への開業には、必要な資格や届出は必要ありません。そのため、参入障壁は低く、独立系の小規模企業や個人事業主が数多く存在します。
今回はその中でも、戦略コンサルティング・ファームについて取り上げます。日本でもマッキンゼーやボストンコンサルティンググループなどは知名度があり、人材輩出企業としても一部では認知されています。就職を希望している学生も比較的多いのではと思われる同領域ですが、実際にどの会社の評価が高く、働きやすいといえるのでしょうか?
今回は、米Vault社によるサーベイ調査による、どのコンサルティング・ファームの評価が高いかのランキング結果を掲載いたします。
コンサルティング・ファームで働く際に重要視するのは「文化」?
どのコンサルティング・ファームで働きたいかを選ぶにあたっては、どの点を重視するでしょうか?おそらく、企業の評判を重視する人は多いと思います、この点はもちろん重要だと思いますが、調査によると、どこで働きたいかの選択時にはその他の多くの要素も重要性を増しているそうです。例えば、コンサルティング・ファームの転職候補者の40%以上が、ファームのもっとも重要な要素はそのファームの「文化」であるとしています。その他、評判や報酬以外の重要な要素としては、「業務執行能力」や「ワークライフバランス」が重要視されているようです。
そもそもどのファームがよいかを選ぶのは、外からはわからないことも多い業界のため、難しい問題です。ただ、実際にコンサルティング・ファームで働き出すと、自分の時間の多くをそこで過ごすことになります。その点で、「ワークライフバランス」は意外と重要かもしれません。一方でその他の要素、「働いている社員の満足度」や「キャリアアップしていくスキルが身につくか」といった観点も重要でしょう。
働きたいコンサルティング・ファーム、ベスト10
このサーベイでは、「評判」、「社員の満足度」、「報酬」、「ファームの文化」、「ワークライフバランス」、「事業の見通し」、「昇進の基準」、「チャレンジできる能力」などを独自の重みづけの中で評価しています。
米国の調査ですが、やはり比較的名前を耳にしたことのある会社が多いのではないでしょうか?上位についてはグローバルなファームがランクインしていることがわかります。
なお、各ファームについての実際のコメントは次のようなものです。
日本でもメジャーで、多くの著名人を輩出しているマッキンゼーが同調査でも1位です。前年の2位から1位上昇していますが、人材レベルや事業の規模、社会へのインパクトが魅力のようです。
コメントとしては、良い点として、「高い人材レベル」、「グローバル展開や事業規模」、「優秀な同僚のいる環境」、「事業のインパクトの大きさ」、さらに、「キャリアの次のステップの機会が大きいこと」、などがあげられています。
一方でネガティブなコメントとしては、「出張が多い」、「コミットを求められる」、「消耗する(顧客からもその点を期待されている)」といった点です。出張などは他のファームでも目につきましたが特に国土の広い米国では大変なのかもしれません。
その他コメントとしては、「コンサルティング・ファームのハーバードといえる」「セルフィッシュ(自己中心的)なカルチャー」といったものも有りました。
ちなみに、2位のベインアンドカンパニーについては以下のようなコメントが寄せられています。
良い点として、「違いを生み出すことができる、だからこそ働く意味を感じられる」「能力にあふれ、サポーティブなビジネスリーダーと働けること」「顧客とその最大の経営課題解決のために働くことで、自分が大きく成長できる」などです。
悪い点としては、「他のプロフェッショナルファームと同様、非常に要求度が高い」「大きな仕事、プロジェクトにかかわることでのストレス」「スライド作り」。その他としては、「新卒でキャリアを始めるにはベストな会社」「エリート」といったコメントがありました。
現役コンサルタントに聞く「コンサルティング業界の実態」
会計系、戦略系の大手コンサルティング・ファームを経て独立したコンサルタントに、外からでは分からない「コンサルティング業界の実態」について伺いました。
「きっちり隙なくタイプ」と「洞察ひらめき重視タイプ」のコンサルタント
Q:コンサルティング・ファームごとの性格の違いはあるのでしょうか?
A:コンサルティング・ファームごとにカラーの違いはあります。
あえて誤解を恐れずに当時の印象別にいうと、大きく分けて、マッキンゼーアンドカンパニーは「きっちり隙なく」に対して、ボストンコンサルティンググループやドリームインキュベータは面白さや洞察、ひらめきを重視しているような傾向に有りました。
また、コンサルティング・ファーム自体は多くありますが、その中でも上位と中位以下のファームでは人材やアウトプットのクオリティには大きな差がある印象です。一方で、そうであればトップファームの人材であれば皆優秀かというと、中でも人材のレベルは相当に差があるというのが現実です。
Q:コンサルタントごとのスキルや性格の違いはありますか?
A:実態として相当に違いがあります。おそらく個人としての資質もありますが、コンサルタントは徒弟制に近いような形で上司について働くことが多いので、その中で上司の傾向を受け継ぐような印象もあります。ファームによっても傾向がありますが、大きく2タイプ、ロジックやストーリーで勝負するタイプと、分析で勝負するタイプに分かれます。別の表現をすると、きっちり手順を追ってファクトを積み上げて結論を導くタイプと、小さな「何か」から本質的な洞察を見出して結論付けるタイプに分かれるとも言えます。「きっちり隙なくタイプ」と「洞察ひらめき重視タイプ」といえばわかりやすいでしょうか
Q:今と昔でコンサルタントが変わったという印象は?
A:あくまで印象としてですが、戦略コンサルも現在は業界として認知されていて、ブランディングもできているので、いい大学の優秀な人達が集まってくるようになりましたね。以前はコンサルタントもそれほど知られていない仕事だったので今でいう起業マインドのあるような人材が集まっていました。そのために、性格というか志向性は結構変わったと思っています。
例えば、コンサル先に出向して事業再生をハンズオンでやってみるといったことは、昔は皆手を挙げていたものでしたが、今は皆、行きたがらない。理由を聞くと「コンサルをやりたいから」とのことです。自分の思い描いているイメージ通りの「コンサルタント」としての仕事をやり続けたい人が多いということかもしれません。
コンサルタントというと卒業後、起業して成功した人が多いという印象が世の中一般には強いかもしれませんが、コンサルティング会社に勤務したからというより、そういった企業マインドの強い人が集まっていたということの方が要因としては強かったのかもしれません。コンサルタントとして出世して成功していくタイプと実際に事業再生やプロ経営者として現場で成功するタイプは必ずしも同じタイプではないと思います。
今回は外からではわからない「コンサルタントのキャリア」について実際のところを伺いました。弊社サービス「Open Research」では複数のコンサルタントからヒアリングをすることが可能です。より詳しくコンサルティング業界について知りたい方は下記よりお問い合わせください。
取材・記事作成/畠山 和也
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