写真左:川崎 悦道氏、右:河原 大介氏
エイチ・アイ・エス代表取締役会長の澤田秀雄氏が創設した澤田経営道場は、「世界で闘う実践力」の習得を目指し、ベンチャー経営者の育成に取り組んでいます。2015年に第1期がスタート。現在は第2期の道場生が集い、幅広い領域のプロフェッショナルを招いて経営実務を学んでいます。
澤田経営道場はどのような思いから生まれたのか。2年間におよぶプログラムの特徴とともに、その全体像に迫ります。澤田経営道場事務局の河原大介さん、カリキュラムの編成を担当するKマネジメントデザインの川崎悦道さんにお話を伺いました。
前編では、道場創立の経緯と、カリキュラム設計で「実務的なスキル」「財務」「人を見る目」の3つの観点を盛り込むという澤田会長からのオーダーについて伺いました。後編は道場のカリキュラムのハイライトともいえる、ハウステンボスでの実地研修について伺います。
ハウステンボスの現場で経営を実践
Q:初めの6カ月で経営者としての基礎学力を学んだ後、1年半はハウステンボスでの実地研修に参加するというカリキュラムになっています。現地では、具体的にはどのようなことに取り組むのでしょうか?
河原大介さん(以下、河原):
最初はテーマパーク内のショップやアトラクション、レストランなどに副店長として配属されます。いきなり中間管理職として現場に飛び込み、上司である店長やエリアリーダー、お店で働いてくれている社員やパートスタッフとともに、座学で学んだことを生かして売上や集客を伸ばす試行錯誤をしていくわけです。これが約4カ月間続きます。
その後は、各人の希望部署を選んで実践的に活躍していきます。「将来は商社を作りたい」という受講者の例では、仕入れ部門に異動し、世界中からいろいろな商材の情報を集め、見積りを取って経費を削減するという仕事にあたっています。
Q:受講生という立場にとどまらず、経営者目線での結果が求められるのですね。
河原:
はい。数字的な成果は必ず求められます。前年に比べてコストをいくら削減できたか。売上に換算するとどうなのか。各人の試行錯誤の結果を、毎月澤田にプレゼンするんです。
最初の4カ月間については毎月報告会を設け、自分が担当する店舗の業績や改善策はもちろん、「店長はどんな人か」「ともに働くスタッフはどんな人か」といったことも報告します。座学ではなかなかフォローしきれない「人を見る目」を、この現場で学んでいきます。
他にはない「巨大な実験場」が舞台。ハウステンボスはモナコ公国と同じぐらいの広大な私有地
Q:澤田会長と直に接しながら鍛えられていく貴重な場ですね。
河原:
はい。エイチ・アイ・エスの中にいる限りでは、一般社員が澤田と直接話ができる機会はなかなかありませんが、ハウステンボスは距離が全然違う。澤田と直接やり取りをし、教えを受けられるのが、この道場の大きな特徴です。
また、ハウステンボスはモナコ公国と同じぐらいの面積を持つ広大な私有地です。私有地なので、例えば免許がなくても車を運転できる。ロボットを歩かせるなど、他ではできないことも実験できるんですね。「この巨大な実験場を使って新しいビジネスを開花させよう」というのが、ハウステンボスで過ごす期間の醍醐味です。
Q:座学では「知識」を徹底的に身に付けるというお話がありましたが、実地研修にはどのように接続されていくのでしょうか?
河原:
財務については、半年間の学びをいよいよ現場で生かせることになります。小規模な店舗でも、大規模なイベントでも、運営に携わる際には収支計画を作って澤田にプレゼンをします。第1期の受講生は、こうした場面で座学の学びがとても役立っていると話していました。部署が変われば、ガバナンスやコンプライアンスについての知識を生かす機会も増えていくと思います。
川崎悦道さん(以下、川崎):
座学で学ぶ経営シミュレーションも、現場の運営に大きく生かされます。リーダーシップや組織運営の訓練も行うんですよ。受講生が2チームに分かれ、シミュレーションの中でそれぞれのチームのリーダー役であるCEOを決め、その下で役割分担をする。リーダーがリーダーシップを発揮してロードマップを作り、作業分担して、最終的にレポートにまとめるんです。
ただ、知識を得ただけでは本当の力は身に付きません。だからこそ現場の真剣勝負で得られるものは大きいですね。
意欲ある応募者が、思い描く事業を形にできる場へ
Q:今後、澤田道場を通じてどんなことを実現していきたいとお考えですか?
川崎:
講座全体のカリキュラムとしては一応の形はできましたが、これからもある程度の試行錯誤が続きます。コアになる講師陣でチームを組んで、より系統立てて整備していきたいとも思います。今はビジネスの第一線で活躍している方々の教えを請うているわけですが、今後は政治などの領域からも講師をお招きするかもしれません。成果を見据えて、ベストなバランスを考えていきたいですね。
河原:
第3期の募集を積極的に行っているところなので、意欲的な応募者に集まってもらいたいと思います。カリキュラムをより充実させ、実学としての経営を教える場として発展させていきます。奨学金をもらいながら勉強できる場ですが、それは闇雲に提供しているわけではありません。学びながら、その分以上に稼ぐつもりで実習していただきたいと思っています。投資額としては、1人あたり年間1000万円近い予算となります。それぐらいの稼ぎを実践できる実習を用意しています。これはとても貴重な経験になるはず。その先に、受講生の皆さんが思い描く事業を形にできるよう、事務局としても力を尽くしていきたいと思います。
《編集後記》
澤田経営道場の詳細は公式サイトをご確認ください。
1999年、株式会社エイチ・アイ・エス入社。
音楽鑑賞専門デスクや海外ウェディング専門店である「アバンティ&オアシス」横浜店、表参道店所長を経て、2015年より本社人事本部、澤田経営道場事務局長。
2016年より、一般財団法人SAWADA FOUNDATION 事務局長兼務
1976年、株式会社日本興業銀行入行。
IBJ Australia Ltd., Managing Director (豪州興銀社長)、みずほコーポレート銀行シドニー支店長(3行統合)、株式会社パソナ(現パソナグループ)取締役を経て、2010年に合同会社Kマネジメントシステムを設立。
津田塾大学監事のほか、民間企業数社の経営顧問も務める。
専門家と1時間相談できるサービスOpen Researchを介して、企業の課題を手軽に解決します。業界リサーチから経営相談、新規事業のブレストまで幅広い形の事例を情報発信していきます。