いよいよ最終回となりました本連載。これまで23回にわたって外国人労働者について考えてきましたが、今回の24回目では、全体の総括をしたいと思います。
この本連載の目的は、多くの方に外国人労働者の受け入れについてもっと現実的に考えてもらいたい、もっと危機感を持ってもらいたい、というものでした。いままでご紹介したデータや現状を踏まえ、記事を読んでくださった方が自分なりの意見を持ち、外国人労働者受け入れについて考えてくださるようになれば幸いです。
外国人労働者受け入れの懸念と見切り発車
いままで外国人受け入れに対する多くの懸念事項について考えてきましたが、日本は外国人労働者問題に対してあまりに楽観視しすぎています。
移民として外国人が増えた場合、社会保障の支出や教育はどうなるのか。企業は外国人労働者をしっかりと受け入れられるのか。不法入国に関してはどう取り締まるのか。
そういった現実的な部分があいまいで、外国人労働者を都合のいい存在だと決め付けているように思えてなりません。
その一方で、日本人の仕事が奪われるだとか、治安が悪くなるだといったことを心配しています。そもそも労働力不足だから外国人を受け入れるのに、日本人の仕事が奪われるという主張は筋が通りません。治安に関しても、外国人だから犯罪を犯すと決め付けるのは偏見というものでしょう。
欧米諸国を見ていればわかることですが、見切り発車やキレイごとで外国人労働者を受け入れれば、混乱は避けられません。特に宗教が絡む場合、文化摩擦を「解決」することはほとんど無理です。
ちがう言語を話し、ちがう文化を持ち、ちがう宗教を信仰する人が大量に流入するということは、日本という国を根本から覆す一大事なのです。それなのに、なんとなくなし崩しで受け入れを進めてしまっていいのでしょうか。
日本という国はどういう国なのか
わたしは個人的に、日本は外国人労働者を積極的に受け入れるべきではないと思っています。自分自身が海外にいるのになにを言ってるんだ、と言われてしまいそうですが、日本という国を考えれば、外国人労働者受け入れは相容れるものではないことがわかるはずです。
日本は世界最古の王室である皇室が現在も続いていて、極東アジアのちっぽけな国ではあるものの欧米の植民地にされることもなく独立を守ってきました。長い間鎖国していた歴史もあり、地理的にも島国としてまわりの国と一線を画しています。
ヨーロッパでは国境の変化が著しく、フランスでも公用語がドイツ語の地域や公用語がいくつもある地域、戦後の和平条約でトレードされた地域など、その地域がどの国に属すかは流動的なのです。
そのため国を超えた移動にさほど抵抗がなく、自国にいろいろなバックグラウンドを持つ人がいて当たり前、という認識になったのです。そういった理解があるからこそ、移民を受け入れることにも繋がったのでしょう。
ですが、日本にはそういった「理解の土壌」がありません。そもそもヨソから人を受け入れるような国として、歴史を歩んできてはいないのです。
たしかに、国際関係を考えてある程度譲歩して外国人を受け入れるべきかもしれません。ですが日本が欧米のような移民国家を目指せば、「日本」という国は跡形もなく消え去ってしまうのではないでしょうか。
日本はもっとできるはずだ
わたしは日本から離れた身ではありますが、常々思っていたことがあります。それは、「日本はもっとできるはずなのに」ということです。
労働力が減ったから外国人に頼るのではなく、ではどうやったら女性が産み、育てやすい環境になるのかをもっと本気で考えてほしいのです。長時間労働で恋愛や結婚する余裕がない人が、パートナーと充実した生活を送るためになにが必要なのか。お金がなくて結婚をためらう若者には、どんな援助ができるのか。日本国内でできる工夫は山ほどあります。
もちろん国としてはいろいろと対策を練っていますが、どれも抜本的な本気な改革とは言いづらい印象を受けます。
外国人に頼るより前に、やれることがあるのではないか。外国人に国をよくしてもらうよりも先に、日本人が日本のためにできることがあるのではないか。これがわたしの率直な思いです。
出来る限りの工夫をしても対応できない場合は、外に目を向けることも選択肢のひとつです。ですがまずは自国内でできることをやるのが、独立国家としてあるべき姿なのではないでしょうか。
外国人労働者の受け入れ自体が悪いというわけではありません。ただ、できることをやらずに外国人に頼ろうというのはあまりに腑抜けているというだけです。
どうやったら戦略的に外国人労働者を受け入れられるかはもちろん重要な課題ですが、そもそも出来る限りのことは日本人でやっていく、という原点に立ち、もう一度外国人労働者受け入れの見直しをすることも必要なのではないでしょうか。
本連載記事を機に、「外国人労働者の受け入れとはどういうことか」について、以前より少しでも現実的に考えてくださる方がいらっしゃれば幸いです。
取材・記事制作/雨宮 紫苑