独立開業したプロフェッショナルの中でも、金融系で多いのはFPなどの個人向けの資産運用アドバイスを行う人たちだろう。最近ではIFA(Independent Financial Advisor)も増えてきており、マネープランだけでなくよりアクティブな投資計画も相談に乗れるようになってきている。

個人事業主の悩みトップ3は「資金繰り」「専門知識不足」と「顧客開拓」

日本政策金融公庫総合研究所が行った新規開業に関する調査では、起業家の悩みのトップ3は、「資金繰り・資金調達」「財務・税務・法務の知識不足」と並んで「販路・顧客の開拓」だった。会社勤めとは違い、独立した個人事業主は仕事がなくなるとたちまちやっていけなくなる。

【参照 日本政策金融公庫 総合研究所 「2014年度新規開業実態調査」 ~アンケート結果の概要~ p14】

FPやIFAには金融機関勤務の時代に資格を取ったという人が多いだろうが、必ずしも会社員時代に培ったネットワークを持って独立した人ばかりではなく、独立後にいかに顧客を増やすがカギだ。そこで実際に独立しているFPやIFAに営業のコツを聞いた。

今回話を聞いたのは、数は多くないが男女ほぼ半数の、複数のFPやIFA。実はそのうち半分くらいは、「特に営業はしていない」との回答だったが、独立当初から営業しなかった訳ではなく、リピーターが獲得できた今だからこそ、特別に営業しなくてもいいということなのだろう。

発信して知名度をあげるのも営業

証券会社勤務から結婚して退職、事務所を開設しているFPはちょうど30歳。ウェブメディアでの発信に力を入れている。そのため編集者への営業をメールなどで行っているという。

これはFPやIFAに限らず、個人事業主や事業者、独立プロフェッショナルには情報発信して自分という存在、名前を知ってもらうことが重要だ。原稿を制作する上で気をつけているのは、「記事の執筆において、自分しか書けないポイントを盛り込むように心がけること。媒体の読者層が資産運用の初心者なのか、女性なのか、投資のベテランなのかを分析し、それに合ったレベル感で記事を執筆すること」という。

その一方で、「誰かが言っていることのコピーはしない。自分の意見と編集者の意見が対立した時、自分が正しいと思わないなら、内容を無理に変更しない」と言い切る。

仕事選びで重視しているポイント

また関東在住の別の40代のFPは、ほとんど営業をしていないというが、「過去のWEBコラム記事や業務マッチングサイトからホームページなどに新規にお問い合わせいただくことも多い」と話す。こちらの例もウェブ記事が営業につながっているようだ。その際の注意点について聞くと、「その際は執筆や業務提携など記名やプロフィール掲載などブランディングにつながる案件をある程度優先しています」という。

しかしその一方で、「何度もお引き合いいただく方からのご依頼は、報酬の多寡にかかわらずなるべくお引き受けするようにしています。これもご縁だと考えているからです」とも付け加える。そのうえで、「逆に、一方的に利益誘導するようなコンテンツ制作や私自身まだ十分な知識を持っていないと思われる案件、納品期日がキツイものはお引き受けせずにお断りしています」ともいう。

これは原稿執筆に限ったことではない。目の前の売り上げも重要だが、長期で考えた時、それが本当に自分のためになるのか、お客さんや社会のためになるのかは考えて仕事を選ばなければいけない。

関西在住の50代のFPは、「FPの主な収益源としては、執筆・相談・講師業の3つがあると思いますが、私の感触だと講師業で食べている人が多いようですね」と一般論として話したうえで、「特に営業活動はしていませんが、メルマガ・ブログ・HPの作成には力を入れていますね」と答えてくれた。

セミナー開催や昔の知人に積極的に面会

もちろん講師や執筆だけではない。近畿在住の50代のFPは長らく兼業でやっていたため、一本立ちしてまだ数年。遅めのスタートではあるが、基本的な営業方針をしっかりと守って幅を広げている。たとえばこういったものだ。

  • 自分の強みを前面に出せるよう得意分野をより磨き、勉強を怠らない
  • 会社員時代に懇意にしていた友人や昔からの知人にできる限り会い、業務や強みを伝える
  • 地域で開催している起業家むけのセミナーなどに出席し、人脈をひろげる
  • 所属している協会や資格者団体の会合にはできる限り出席して、開業している方の仕事を参考に聞かせてもらう
  • 自分で開催しているセミナーのチラシを作成し、会場近くの一般家庭にポスティング

ちなみにこのFPは保険営業時代、口下手で営業トークがうまくなかったため、ミニ新聞を作り、会社を訪問したときに配っていたという。こうした工夫、試行錯誤も重ねてこそ今があるのだろう。

人脈づくりで投資サークルに入会

また東京在住の40代のIFAは、投資に関心がある人が集まるサークルに会費を払って入会してネットワークを広げたという。既にそのサークルは活動していないというが、そこで年長のメンター的な存在と出会い、さらに人脈を広げられたという。

ただし、こうしたサークルで難しいのはあからさまな営業目的、顧客開拓目的では煙たがられるということ。「素敵な出会いを増やす中で、いいお客さんに会えればいいな」くらいのつもりで臨んだほうがよいかもしれない。

彼もまた雑誌などに売り込みをすることで投資の専門家としての記事連載を獲得している。一定の年齢以上の人たちや資産を持っている層はウェブよりも雑誌のほうが響くようで、「書店に並ぶ雑誌に、毎月載ったことは大きかったですね。その意味では書籍の出版に熱心な方が多いのもうなずけます」と振り返った。

当たり前のことを大事にすること

北海道在住の40代のFPは、「仕事は人とのつながりから出てくることがほとんどです。特に仕事を選り好みすることはなく、勉強も兼ねるつもりでほとんどお引き受けしてきました」と話す。

そんな彼が大事にしていることは何だろうか。「時間を守る事だけは気を付けています。当たり前ですが1分遅れそうなときでも連絡を入れます」という。会社の看板を背負わなくなったからといっても、そうした些細なことを守らなければ、「次また仕事をお願いしよう」とは思われなくなるだろう。

時間を守る、連絡するといった社会人としての常識は、聞けば「当たり前じゃないか」と思われるだろうが、実際には意外と守れていない人も多い。企業に勤務している人も、独立して働いている人でも、「また仕事をお願いしたい」と思われる姿勢や考え方、行動は同じなのだ。

ノマドジャーナル編集部
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