まずはこのビデオをごらんください。ノルウェーの男の子と女の子がペアで一つのタスクをこなしています。ペアの男女がするのは同じ量の仕事。タスクが終わると「目をつぶって」と指示があり、子供たちが前へ伸ばした手の中に渡された報酬はコップに入ったスイーツ。ですが、男の子と女の子に渡されるスイーツの量は同じではありません。

それから子供たちは「どう思う?」と質問されます。みんなけげんな顔つき。そこで「モリ―、あなたがトーマスよりも少ない量のお菓子を受け取ったのは、あなたが女の子だからよ」と説明がつづきます。これに納得できる子はいません。「でも彼女は僕と同じ量の仕事をしたよ」と発言する男の子。それから子供たちは、二つのコップの中味が同じ量になるよう、自らスイーツを分け合います。

これが子供が理解する平等さですが、世界のどこを見渡しても、大人の世界の事情は違っています。

英国の場合

日本とよく似た、伝統を重んじる歴史の長い島国の英国でも、2018年現在、男女の賃金格差は解消されていません。

女性の平均賃金が男性のそれよりも低いという、明らかに不公平な現実にもかかわらず、性別賃金格差(男性と女性の収入の中間値の差で、男性の収入に対する割合で表示され、産業、業種、地域によって違いが見られる)は女性の生涯所得を減らし、その結果女性の年金を減らし、人生後期の女性の貧困の大きな原因にもなっています。

英国で賃金格差の問題が最初に提起されてから120年、性別賃金格差は依然として存続しています。

男女の賃金格差はどのくらいあるのか

英国のフルタイム労働者の平均賃金格差は14.1%、パートタイム労働者も含めると、その割合は18.4%に上昇します。賃金格差は時間の経過とともに減少しているはずですが、進歩はなかなか見られません。

英国には250人以上の従業員を抱える全公的機関と民間団体に、男女に支払う額の差額を報告することを求める新しい法律があります。今年3月の時点で、3,000社近くの企業のうち77%が女性よりも男性に多く賃金を支払っていると回答しており、賃金格差を解消していると答えた企業はわずか9%にとどまっています。

言い換えるとこれは、(男性と比べて)英国女性は年に67日間無料で働いていることを意味します。それでもこの数値は、他の欧州諸国よりも英国女性に有利な数値なのだそうです。

さらにこの数値は特定分野でより高くなる可能性があります。たとえば教育部門では、賃金格差は26.5%、これは教育部門の平均女性労働者が(男性と比較して)年に90日以上無償で働いていることを意味します。金融・保険業界の賃金格差は35.6%とより大きくなっています。

英国紙インディペンデントは、「同僚男性に比べて不当な支払いを受けていると信じる120人以上の女性BBC社員」が、ジャーナリスト・ナショナル・ユニオン(NUJ)にこのケースを持ち込んだことを報じています。このケースをさらに悪化させているのは、不均等な報酬の背後に、性差別の文化が広く見られること。特に昇進のパターンや、女性が出産休暇を取った後にそれが如実に現れていることです。この辺り、日本人にも耳が痛いところではないでしょうか。

性別賃金格差は、外見よりもはるかに複雑な問題で、多くの異なった理由が男女間の収入の不一致を引き起こしている可能性があります。

英国女性は賃金格差とどう戦っているか

女性労働者による抗議運動、ストライキ、さらには雇用主を合法的に訴えるという従来の手段のほかに、英国女性たちはもっと静かな方法も取り始めています、フリーランスになることです。

IPSEは、2008年から2017年の間に、個人の自営業者数が34%増し、現在全英労働人口の14%を占めるようになったと報告しています。これは約440万人の熟練した専門職労働者に相当します。全自営業者に占める女性の割合は35%です。

このように女性の自営業者数は急増していますが、自営就労の母親の増加はさらに驚異的です。高度に熟練した母親フリーランサーの総数は、2008年からほぼ倍増しています。

別の調査では、自営の女性は企業に雇用されていたときよりも、自給で約43%増の収入を獲得しています。それでもほとんどの女性が、フリーランスになった動機は労働時間の柔軟性だと答えています。

まとめ

ギグエコノミーには、性別賃金格差を修正する可能性がたしかにあると言えそうです。男性よりも低い賃金に甘んじることを好まない女性がそれを社会に訴えるだけでなく、フリーランシングに切り替えるというポジティブな行動に移っていることは、好ましいことと言えるでしょう。

しかし現実には、多くの英国女性フリーランサーが企業労働時の倍の収入を得ている一方で、男性の同業フリーランサーよりも低い報酬を提示して「自己サボタージュ」している女性も少なくないと言われます。自信不足、クライアントからの圧力、業界内の激しい競争が、女性フリーランサーをこのような行動に走らせている原因です。賃金格差を埋めるためには、女性のフリーランサーはスキルアップを怠らないだけでなく、自信を持って交渉する方法を学び、仕事相応の価格を請求する技をも身につけなければならないということでしょう。

こういう見方が出てくるあたり、英国女性の地位はすでに「守られるもの」から「自立したもの」にシフトを完了していると言えるのではないでしょうか。

参考記事:https://blog.peopleperhour.com/blogroll/gender-pay-gap-in-the-freelance-economy-what-weve-learnt-so-far/

記事制作/シャヴィット・コハヴ (Shavit Kokhav)