今年1月末、米国のビジネス誌Forbesは「2018年にテクノロジーが3つの面でギグエコノミーを変える」という記事を掲載しました。今回はこの記事をもとに、ギグエコノミーを産み、育んできた米国の見るテクノロジーとギグエコノミーの関係をご紹介しましょう。

まずこの記事の書かれた時期の米国経済ですが、不況を脱して「ほとんどの求職者にとって売り手市場となっている」とあります。米国労働省労働統計局の最新の統計は、失業率が5%未満であることを示しており、これは人々が市場で前例のない選択肢を持っていることを意味しています。たいへん好ましいことです。続いて「しかし今日の求職者は、人材業界がこれまで長年にわたって受け入れてきた伝統的なアプローチを覆す、新しい仕事を探している」とあります。これは、ギグエコノミー、フリーランスエコノミーのことです。

Forbesの記事は、2018年にはギグエコノミーで競争力を維持するために、ビジネスが必要とする機敏性を提供するためのテクノロジーがより進化するだろうと予想しています。この変動の原動力には「3つの傾向」があるのだそうです。

新しいマーケットプレイスの出現

ほんの数年前まで、見知らぬ人のアパートに泊まったり、タクシーではない、一般人の運転する車に乗るというアイデアは、非常に大胆なものだったと言えます。AirbnbやLyftのようなユーザフレンドリーなアプリケーションが登場したことで、今では消費者はこれまでにない選択肢を提供してくれるマーケットプレイスへのアクセスを得ています。

Airbnbの創設者ジョー・ゲビア氏が、他人を家に泊めるというビジネスが可能だと発見した成り行きを、「信頼のエコノミー」という名のビデオで語っています。「見知らぬ人=危険」と子供の頃から教え込まれてきた現代人に、信頼を設計することは可能なのか、というのが彼のスピーチのテーマです。

ゲビア氏はこの会場で一つの実験を試みます。それはビデオの5分33秒あたりから始まります。会場の人に「皆さん、ご自分のスマホを取り出してスイッチを入れ、それを左隣りの人に手渡してください」と言うのです。会場がざわめきます。「そうです。この心地悪さがちょうど、他人に自分の家を貸し出す時の感覚なんです。」

ある日、赤の他人を成り行き上自分のアパートに留めることになった自らの経験から、友達を作りつつ、家賃を浮かせることができると知ったゲビアさん。このような意識の転換が共感を呼び、テクノロジーの発展と相まってシェアリングエコノミーという名で現代アメリカに広まったわけですが、そのテクノロジーはこのエコノミーにどう貢献していくのでしょうか。

Forbesの記事は、今年は人々をさまざまなサイドギグの機会につなげる、テクノロジー主導の市場が出現するとしています。人材系のテクノロジー・プロバイダが、スキル、スケジュール、経済的ニーズに見合ったギグタスクを人々が見つける場を提供するようになるのだそうです。

これらのテクノロジーが成熟して、より多様な労働人口がギグエコノミーに参入すると、彼らの望む仕事と頻度、追求したいスキル、希望の職種タイプについての新しいデータが収集されます。このビジネスモデルが稼働し始めると、貴重なデータトレイルが残されて、労働者が市場を動き回る傾向についての洞察が得られます。

データサイエンスチームが重要な質問に答える

この記事では、これまで人材派遣業界が抱えてきた不満を、非効率な古代の漁業と比較しています。過去の人材獲得方法は、海に広い網を投げて大量の労働者を獲得し、最高の者もうまく網にかかることを望むだけでした。収穫が不十分だった場合には、企業は別の人材プールを探したり、さまざまな網を試したり、より多くのリソースを配備したりしました。

適切な情報を収集分析しようとしている人事担当者にとって、昨今の溢れかえるような量のデータは、海の透明感を濁してしまうものでした。よい魚が見えなくなったのです。HRIS、ATS、VMSツールは膨大な量のデータを収集しますが、その膨大な量は非常に複雑です。組織はより戦略的な労働力の決定を推進するデータを推測するのに、常に苦労してきました。

しかし新しいテクノロジーにより、2018年には仕事のパターン、ニーズ、欲求など、ギグ労働者に関する正確で関連性の高いデータを企業が収集することができるようになります。今日のアルゴリズムは、労働者を評価するために開発されているからです。2018年には組織が、労働者の嗜好や習慣に関する先見的で豊富なデータを提供してくれるソリューションを実装するようになるでしょう。 企業は「どうして十分な魚(あるいは正しい種類の魚)を捕まえられないのか?」と尋ねることをやめ、その代わりに特定種の魚がどこにいるかを知らせ、適切な餌を決めるためにデータからの洞察を利用するソナー (水中音波探知装置)のような技術を展開するようになります。広い網を張るのではなく、企業は適切な労働者がどこにいるのか、何を望んでいるのか、どんな頻度でどのような報酬を得たいと考えているのかについて、データ・サイエンスを活用するようになります 。

ギグ労働者の人口は爆発する

MBOパートナーズの2017年の独立国家報告書によると、現在米国の約4,100万人が自らを何らかの形で独立した労働者とみなしています。そして今後の5年間で米国の成人労働者の半数が、独立した仕事を提供できるようになるだろうと予測しています。

成人労働者の半数というのは圧倒的な数字で、これはギグ労働者のプロフィールが現在の定義から進化することを示しています。この変化を加速させるのは、人々が望むときに見合った仕事を見つけるのを助けてくれる、使いやすいアプリケーションの出現でしょう。

まとめ

米国では、テクノロジーは、2018年のギグエコノミーの爆発的な成長の基盤となると考えられています。前進的で柔軟な組織基盤をもった企業は、すでに変化を始めている労働力モデルに取り残されないために、これらの技術を採用しなければなりません。

記事はリーダーシップの観点からも、「働くことにどんな意味があるのか」、「誰がその仕事をすべきか」、「どのようにすべきか」などの適切な質問をすることで、将来の仕事を創り出すための道を歩むことができると結んでいます。

米国でギグエコノミーの成長に疑いの余地はないようですが、働くことについての適切な質問は、組織レベルでも、個人レベルでも常に考えるべきことですね。

記事制作/シャヴィット・コハヴ (Shavit Kokhav)