「アジアは世界で最も急速に成長している地域の一つです。企業はこのダイナミックな地域でビジネスを推進するために、適切な才能と人材戦略を持つことが不可欠です。一方、変化する経済とテクノロジーは、組織がどう才能を活用するかに制限がないことを意味しています」とは、グローバルな人材獲得と管理ソリューションのRandstad Sourcerightアジア太平洋地域担当部長、ループ・カイサさんの言葉です。

タイの起業家ヴァサ・ランスリさんは、フリーランサーを「自分が好きなライフスタイルを維持しつつ、お金を稼ぐ人たち」と定義しています。今回はこのランスリさんが立ち上げた、タイで初のフリーランサー・マッチングサイトをご紹介しましょう。

Fastworkの誕生

2015年12月ランスリさんは、タイ初のフリーランス・マーケットスペースFastworkを設立しました。彼は子供の頃アーティストになりたいと思っていましたが、母親は、多くの親がそうであるように、確実に収入の入るキャリアを追求するよう諭します。そこで彼は、不動産業のキャリアをスタートさせました。

後に学生時代をニューヨークで過ごした彼は、地元の大学でプログラミングコースを教え、フリーランスの背景を持つアポン・パラヌウェチさんと、データ科学のスタートアップを立ち上げました。二人は2015年初めにタイに帰国すると、起業したいと思いましたが、アイデアが浮かびませんでした。そこで当面フリーランスとして働くことにしたのです。二人にとってこれは新しいことではありませんでした。ニューヨークではフリーランサーとしても働き、デザインとテクノロジーの仕事を受けていたからです。

ランスリさんはこう回想します「私たちにはコネがなく、タイではどこにも仕事を見つけることができませんでした。マッチングサイトのようなものもなかったんです。そこでFastworkのアイデアが生まれました。」他の共同設立者二人を加え、彼らは同年末にスタートアップを開始しました。

現在のFastwork

Fastworkはタイのトップフリーランシング・プラットフォームとして、現在50種類の専門分野の4千人のフリーランサーをクライアントに提供しています。その中にはCitibankやUnileverなどの大企業も含まれています。

代理店、中小企業、スタートアップ、起業家とプロのフリーランスを結びつけ、ソフトウェア開発、デザイン、ビデオ編集などのプロジェクトに取り組んでいます。ユーザはフリーランスのさまざまなカテゴリを閲覧して、フリーランサーと会話を始めることができます。その結果、需要に合致すれば、発注することができます。

Fastworkの成功の秘密

Fastwork以前のタイでは、フリーランサーと彼らの雇い主は、メッセージボード上でビジネスを行っていました。これではフリーランサーが成果物を納品しても、支払いは保証されません。Fastworkではフリーランサーがただ働きを強要されないよう、エスクローシステムを導入しています。この方法では、クライアントは納品された成果物の質が満足なものになるまで、出金を保持することもできます。これはグローバルなマッチングサイトUpworkなどでも採用されている方法ですが、Fastwork以前のタイには、フリーランサーとクライアント両方を保護するシステムはありませんでした。

ちなみにFastworkが仲介料としてフリーランサーに課す取引手数料は9〜17%と、大手マッチングサイトの20%よりも低くなっています。

またFastworkは、タイ人に特化しています。サイトがすべてタイ語であるだけでなく、依然としてクレジットカードが普及していないタイの現状に合わせて、口座振り込みを可能にするなどのローカライズも行われています。

Fastwork は量より質を優先します。Fastworkに雇われるためには、フリーランサーは平均以上の能力を持っていなければなりません。現在同サイトのフリーランサー数は4千人ですが、応募者は5万人いるそうです。

このサイトで働くためには、国の身分証明書とポートフォリオの他に、企業や学校からの推薦状(フリーランサーの大半がムーンライターであるため)と、卒業証明書も求められ、フリーランサーが行った仕事がその人の物であるかどうかも確認されます。

こうすることで、クライアントにもFastworkのフリーランサーの質の高さが理解され、新しく加わったフリーランサーは7日以内に就労が保証されるそうです。

ランスリさんは「Fastworkはコミュニティに信頼を還元している」と言います。またFreelancerのような成熟したマーケットプレイスとどう競っているのかという問いには、「地元の企業との忠実で強いつながりや、フリーランサーが積み重ねた評価やレビュー」が効果的に働いている」と述べています。

まとめ

Fastworkは、タイのスタートアップ500社が創設したTukTuksと、タイのTelco Telenorの子会社であるDtacから、未公開のシード資金を調達しています。Dtacのアクセラレータプログラムのバッチ4でファイナリスト10にも選ばれました。

ランスリさんはFastworkの収益を開示していませんが、Dtacのブートキャンプに入ってから4カ月間で11倍に成長したと語っています。これまでフリーランサーの上げた売り上げは30万ドル(約3,379万円)、この数字は月に37%伸び続けています。

しかしランスリさんと共同創業者たちは、これに満足しているわけではありません。

タイは30〜40万人のフリーランサーをもつ大きな市場です。私たちは、フリーランスに真剣に取り組む人々を捉えることに重点を置いて活動を続けているのです。

このような良心的なマッチングサイトが増えることが望ましいですね。

参考記事:

http://inc-asean.com/editor-picks/freelancing-platform-changing-way-thai-people-work/

https://www.techinasia.com/fastwork-freelance-marketplace

記事制作/シャヴィット・コハヴ (Shavit Kokhav)