日々肉体的・精神的トレーニングを積むアスリートとビジネス起業家の間には共通項が多いと思われませんか。それを実証しているのがこの人、米国の元陸上競技アスリート、中長距離走を走り、2006年と2010年に5千メートル走で全米チャンピオンとなったローレン・フレッシュマンさん(36歳)です。彼女は現在Picky Barsの共同創設者、コーチ、二人の子供の母親という役割をこなしています。そんな彼女が口にするのが「ただ一つのことから生計を立てるのは難しい」ということ。
サイド・ギグは新しい収入の安全保障
ローレン・フレッシュマンさんは、プロのランナーとしてのキャリアに終止符を打つ決心をするのにたいへん苦労しましたが、それはお金の必要のためではありませんでした。彼女は、国内外のレースでさまざまな表彰台に上る結果を出しつつ、すでにサイドワークとして情熱を傾けられるプロジェクトを育成していたからです。2016年に34歳で引退するまで、彼女は新しいキャリアのために十分な仕事のラインアップを揃えていました。
競技生活からの彼女の引退を、ニューヨークタイムズは「走者のキャリアは終わるが、彼女のミッションはさらに先へ進む」という記事で伝えています。
トップアスリートとして名前が知られていたことで、ブランド名としての利点はすでにあったものの、彼女のケースは、アメリカ人労働者の間に増えつつあるサイド・ギグの傾向の一部と言えそうです。オンライン雇用情報センターCareerBuilderの2017年の調査では、米国人労働者の約3分の1がサイド・ギグを行っており、35歳未満ではその率は41%とさらに高くなっています。「サイドワークは新しい収入の安全保障だ」と「サイドハッスル:アイデアから収入まで27日間」の著者クリス・ギルボー氏は書いています。「より多くの収入はより多くの選択肢」、「より多くのオプションはより多くの自由」を意味するというわけです。
すべてはブログから始まった
フレッシュマンさんにとって、すべてはブログから始まりました。彼女は2009年に「ローレン・フレッシュマンに聞こう」というブログを立ち上げ、舞台裏の話をファンと共有し、競技に出られない怪我からの回復期にも読者に価値あるコンテンツを提供してきました。ボディイメージ、競技のプレッシャー、さらには妊娠後のたるんだお腹などのトピックもタブーとしない誠実さで、短期間に献身的なフォロワーを獲得しました。
ブログはまた、彼女自身の競技へのモチベーションを高め、自身の心の声に耳を傾けるのを助け、〝アマチュアランナーの改善から、スポンサーシップやアンチドーピングなど、スポーツ全般の変化に影響を与える″という彼女のミッションを明確にしてくれたそうです。
トレーニングジャーナル
多くのアスリートの課題の一つは、精神的なゲームに勝つこと。フレッシュマンさんの知るランナーの多くも、自分のワークアウトを紙に記録していましたが、彼らは手当たり次第にオンラインでインスピレーションやトレーニング計画を検索していました。
そこに目を付けた彼女、組織化とロジスティクスに優れたアイルランドのオリンピック障害物走者ロイジン・マクゲティガン-デュマスさんと組んで、モチベーション・エッセイや競技のヒントを含むログブック「Believe Training Journal」を完成させました。二人はソーシャルメディアとフレッシュマンさんのブログ購読者のメールリストを使って、ウェブサイトBelieve I Amから直接このジャーナルを販売しています。初版1,500部は2011年に売り切れ、再版2,500部も2012年末までに完売、VeloPressとの出版契約が始まりました。現在このジャーナルはフレッシュマンさんの主な収入源の一つとなっています。
アスリート用スナックバー
彼女はまた、夫でトライアスロン競技者のジェシー・トーマスさんと共にPicky Bars を創設しました。「当初これがビジネスになるとは思いませんでした」と彼女は笑います。彼女はトレーニングの結果夫に起こるガスの発生を助けたいと考えていました。しかしアスリートのために栄養のバランスのとれたスナックバーや、グルテンや乳製品を含まないスナックバーはどこにもありませんでした。Picky Bars 社は2017年に2百万ドル以上の収入を上げ、現在11名の従業員をもつ事業に成長しています。フレッシュマンさん自身は日々の業務を離れ、製品開発に携わっています。
引退後の活動の数々
2013年の男児出産後も彼女は競技を続けました。引退後の彼女は、ソックスブランドのStanceと女性用ランニングアパレルメーカーOiselleとのスポンサー契約で株式を保有し、収入を上げています。レースや企業イベントでも話し、1ギグあたり2千ドルから1万ドルの収入を得ています。Strava(衛星ナビゲーションを使ってアスレチック活動を追跡し、そのような活動をアップロードして共有するためのアプリ)にも執筆し、米国陸上競技委員を務め、エリート女性ランナーチームを指導するボランティアもしています。彼女の最新案は、昨年始めたライティング「Wilder」。SNSではTwitterに5万人、Instagramに6万1千人のフォロワーを持っています。
まとめ
毎日の鍛錬と努力では共通項があるものの、実際のアスリートが起業家となるには、どのような背景があったのでしょう。フレッシュマンさんはロサンゼルス郊外の、時に不安定なアルコール依存的な家庭で育ったことを「子供の頃の環境が、起業家精神を育む準備に役立った」と考えています。「私は災難を事前に捉えて、それにどう対処するかに多くの時間を費やしてきました。若い頃から問題解決のために脳を訓練していたんです。満たされていないニーズへの解決策を図ることは自然にできるようになりました。」
多方面にわたる活動をこなす彼女の構想のかなめについては「私のプロジェクトを結んでいるテーマは、私が実際に努力して学んだことを、より多くの聴衆とどう分かち合うかということ」と語っています。
昨年の第2子の誕生とともに、今は子供のための時間をより多く作るよう調整中とのこと。「私はいつも新しい方向にドアを開けています。人生に夢のある空間がなければ幸せではないですからね。」
こちらまで元気が出て来そうな彼女の言葉です。
参考記事:https://www.outsideonline.com/2288221/lauren-fleshman-side-gig-queen
記事制作/シャヴィット・コハヴ (Shavit Kokhav)