三谷幸喜脚本、堺雅人主演のNHK大河ドラマ『真田丸』。稀代のヒットメーカーとも呼ばれる三谷とドラマ『半沢直樹』で驚異的な視聴率を叩き出した堺の組み合わせで、戦国時代の中でも人気の武将・真田幸村(信繁)をどのように描くかが大きな注目を集めています。ここまでの視聴率も好調のようです。
舞台は戦国時代の後期、戦国大名としてその名を轟かせていた武田家が滅亡するところから物語は始まります。信濃国の真田家はかつて武田の忠実な家臣でしたが、いまや東の北条、北の上杉、南の徳川に囲まれた状態。諸大名が肥沃な信濃の地を狙う中、弱小勢力である真田家は当主の真田昌幸(草刈正雄)、兄・信幸(大泉洋)、弟・信繁(堺雅人)を中心に、さまざまな策を講じてサバイバルしていきます。
有力大名たちに無理難題をふっかけられながらも、真田家が一致団結して知恵と工夫でやり返していく様は、まるで大企業と渡り合うフリーランサーやビジネスノマド、あるいは小規模なベンチャー企業の奮闘ぶりを見ているかのようでもあります。
そこで、今回は『真田丸』の名言をピックアップしてみました。大きな力に頼ることなく、自力で運命を切り開いてきた真田家の面々の言葉から学ぶことは少なくないはずです。
朝令暮改の何が悪い!
より良い案が浮かんだのに、
己の体面のために前の案に固執するとは
愚か者のすることじゃ!
真田昌幸
戦国大名の庇護がなければ生き残ることが難しい戦国時代。一度は織田信長の家臣になった真田家でしたが、本能寺の変で信長が死を遂げると情勢は一変。誰につくか意見を変え続ける昌幸に対して、信濃の国衆(小さな領土を治めるが、大名に属する存在)の一人は「なんたる朝令暮改」と責めたてますが、昌幸の態度は堂々としたもの。結局、昌幸は息子たちに、どの大名にも従わず、逆に大名たちを操ってみせると宣言します。
常に情勢を先読みしつつ判断を下していく昌幸は、いわゆる戦国時代の常識にとらわれない発想の持ち主です。厳しく難しい局面を乗り越えなければいけないときに、体面や体裁にこだわっている場合ではありません。意見も態度も柔軟に。それがサバイバルの秘訣です。
思うようにいかぬのが、この世。
大事なのは、思うようにいかぬとき、いかに振舞うか。
源次郎、諦めてはなりません。
望みを捨てなかった者のみに、道は開ける。
とり
源次郎(信繁)は、ずっと自分がデキる男だと思っていましたが、実際に仕事を任されると失敗続き。人質にとられていた祖母・とり(草笛光子)と幼馴染のきり(長澤まさみ)の救出を昌幸に命じられましたが、これもあえなく失敗してしまいます。落ち込む信繁ですが、とりは優しく教え諭します。
戦国時代も、2016年の現在も、まさに同じぐらい”思うようにいかない世”だと思います。思うようにいかないのは当たり前、大切なのはそのときの態度です。悲観的になって立ち止まるか、諦めずに前に進むのかで、大きく結果は変わってくるでしょう。
面白くなくては、人は動かん。
真田昌幸
失敗続きの信繁ですが、父・昌幸は柔軟に知恵を働かせる信繁を「面白い」と評します。真面目に働き、信頼を築くことも大切ですが、それでは大きな組織に守られている人に差をつけることができません。大きな力を持たないフリーランスが人を動かすには、面白いアイデアと面白い人物であることが必要なのです。
真田昌幸と真田信繁は、まさに戦国の乱世を駆け抜けた「面白い人」でした。旧態依然とした常識にとらわれず、真田家を守るために知恵を尽くす昌幸と信繁のまわりには、常に多くの人が集まってきて、彼らの力になりました。
『真田丸』には、力を持たない者の悲哀も描かれていますが、それ以上に、たくましさ、したたかさが描かれています。織田信長、豊臣秀吉、徳川家康らの戦国大名の物語も面白く、ためになりますが、ビジネスノマドなら圧倒的に『真田丸』を見るべきでしょう。
ライター・編集。著書に『名言力 人生を変えるためのすごい言葉』(SB新書)、『平成の名言200 勇気がもらえるあの人の言葉』(宝島SUGOI文庫)、『野原ひろしの名言 「クレヨンしんちゃん」に学ぶ幸せの作り方』、『野原ひろしの超名言 「クレヨンしんちゃん」に学ぶ家族愛』(いずれも双葉社)などがある。構成を担当した書籍に『一生成長し続ける人が大切にしている五賢人の言葉』(小宮一慶著、SBクリエイティブ)など。
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