「10年後も同じ会社で勤めることができるだろうか……。」
終身雇用の崩壊や機械化によって今ある仕事がどんどん代替されていく、そんな時代を生き抜くために社会との関わりかたを見直している人が増えています。

今回は、20代からファッション流通コンサルタントとして独立を目指し、38歳のときに実現した、現インディペンデント・コントラクター(IC)協会の理事長でもある斉藤孝浩氏の、独立に至るまでの経緯と独立に向けた準備の仕方についてご紹介いたします。

※本稿は「ファッション流通のプロ 斉藤氏の働き方」(2015年11月12日より連載開始)の記事を元に再構成したものです。

将来のヴィジョンから逆算する生き方とは?

「40歳で独立、50歳で出版、55歳でセミリタイヤして海外に行く。そして、2年後には日本に帰国し再起業。自分の体力と気力が続くまで仕事をしたい」(斉藤)

これは、20代の頃に掲げた斉藤氏の将来に向けたヴィジョンです。もともと、斉藤氏はインテリアショップを夫婦経営する親のもとで育ち、商売人の父の背中を見てきました。そのために、「将来は独立したい」と考えて過ごしてきました。そして、独立するまでの時間を10年単位で区切り、目標とするマイルストーンを置きながら毎日を過ごしてきたといいます。

「時には知人と夢を語り合ったり、時には自分への言い聞かせとして語り続けたヴィジョンは、『運』が近づいたときに気づく感受性を養い、『縁』を磁石のように引き寄せてくれました。その後の数年間は、自分自身で決めたヴィジョンから逆算して何をすべきか考えてきました。その時間があったからこそ、さまざまな角度で物事を見つめ、視野を広げて考えられるようになりました。」(斉藤)

では、どのようにしてヴィジョンから逆算することができるでしょうか。マーケッターであり、コンサルタントでもある神田昌典さんが提唱するプロダクトライフサイクル理論にそのヒントが隠されていると斎藤氏は話します。

人生のターニングポイントは40代? 10年ごとにブラッシュアップする生き方

20代から企業に就職するなど社会に飛び込み、働き終える60代の定年退職までの40年間。斎藤氏はマラソンにたとえて、ちょうど折り返し地点となる40代がビジネスマンの独立するタイミングだと話します。

「プロダクトライフサイクルはご存知でしょうか。市場に自社製品などが登場してから姿を消すまでのサイクルのことをいい、神田さんの著書「2022 これから10年、活躍できる人の条件(PHPビジネス新書2012年1月)」では、40年間の過ごしかたをプロダクトに置き換えて、時代の変化に合わせてブラッシュアップすべきだという一節があります。そこに共感しました。

とくに、成熟期から衰退期に差し掛かる40代から10年間が重要です。例えば、管理職などそつなく守りを固めると50代は間違いなく定年退職までカウントダウンでしかありません。

まずは、独立するという目標を持つことで20代から続く成長軌道を維持できます。他にも、転職したり、同会社内でゼロから新規事業を立ち上げてみたり、社内起業プロジェクトに参加すると良いでしょう」(斉藤)

年齢を言い訳せずに、新しいことにチャレンジすることが自分自身の成長サイクルを回転し続けることにつながり、自身の人生設計もリ・ブランディングできるのです。

20代から心がけたい 「独立後に役立つ仕事術」

2016年から「新卒フリーランス」のように、企業に勤めないで大学卒業後そのまま個人事業主になる若手ビジネスパーソンが登場しました。もちろん若いうちから社会に出て経験を積むのも良いですが、企業に在籍しながら独立を見据えた仕事術を身につけることもできます。

具体的には、以下の3つを心がけるとよいでしょう。
●自らの専門性を高めるインプット術
●仕事を体系化して引き継ぐアウトプット術
●意思決定のガイドライン

まず1つ目は、社内外の相談者ネットワークを作ることです。例えば、商品に最も精通する他部署の先輩や仕事の仕組みに詳しい管理部門の方とコネクションを作っておきましょう。さらに、社外の業務委託先の専門家、そしてお取引先の担当者などとネットワークを作り、意識的に教えを乞うことで人一倍、いや人三倍情報を吸収できます。

2つ目は、自分の担当業務などは誰かに引き継ぐことを前提に仕事をすることです。個人に依存する形で仕事を受注すると、自分が怪我や病気することで納期などが遅れてしまい、お取引先や会社に迷惑をかけてしまいます。これは、独立したときも同様です。そのため、誰かにいつでも引き継げるようにすることで、自分は次の新しい仕事にも取り組める状態になれるのです。

3つ目は、企業の経営者ならどのような決断するのか、また顧客に最適なものを考えておくことです。どんな業界やどんな仕事をしていようが、最終的には消費者につながっていくことは言うまでもありません。会社のトップになったつもりで企業利益と顧客からの信用がもらえるような意識決定のガイドラインを作りましょう」(斉藤)

独立する前に準備したいこと

現在では、独立後の働きかたとして「雇うか、雇われるか」の2択に限られるのではなく、さまざまな形態があります。例えば、複数の企業と契約して報酬を得ていく独立業務請負人(インディペンデント・コントラクター)やパートタイムとして企業で働きながら、投資先の企業からストックオプションをもらって生計を立てるような社会の関わり方があります。
そして、最も理想的な独立の仕方として自分が勤めてきた企業が最初のクライアントになることだといいます。

「自分が勤めてきた企業が最初にクライアントになることは、実力を評価してもらえているということ。専門性の理解もあり、ポテンシャルを引き出してくれます。

企業から退社する前に勤務先との円満な関係性や独立することを伝える種まきをはじめておくと良いでしょう。しかし、私自身退職前に独立したら仕事をお願いするといっていただけた取引先が3社ありましたが、退職後、実際に契約をしていただけたのは1社でした。そのため、独立のための蓄えとして3年分の生活費を用意すると安心でしょう」(斉藤)

まとめ:

斉藤氏にご自身の経験をふまえ、独立しようと思ったきっかけから実際に独立するまでの準備の方法をご紹介していただきました。今後、人生をより良く過ごすために、仕事のキャリアを見直し、独立するまでの準備と心構えを企業に勤めるときに整えておくことで第2のキャリアの実現が近づくはずです。

記事作成:水澤 陽介

専門家:斉藤 孝浩(インディペンデント・コントラクター:独立業務請負人) 
グローバルなアパレル商品調達からローカルな店舗運営まで、ファッション業界で豊富な実務経験を持つファッション流通コンサルタント。
大手商社、輸入卸、アパレル専門店などに勤務時代、在庫過多に苦労した実体験をバネにファッション専門店の在庫最適化のための在庫コントロールの独自ノウハウを体系化。成長段階にある新興企業からの業務構築や人材育成のコンサルなど、これまでに20社以上の企業を支援。
著書に「人気店はバーゲンセールに頼らない(中央公論新社)」や「ユニクロ対ZARA(日本経済新聞出版社)」がある。本業の傍ら、独立業務請負人の働き方の普及を目指すNPOインディペンデント・コントラクター(IC)協会の第3代理事長も務める。有限会社ディマンドワークス代表

ノマドジャーナル編集部
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