いつか独立しても、市場で競争力をもったまま仕事を継続的にしていくには何が必要でしょうか?

学生のうちにやっておくことはないか?
会社に入っても3年以内にやめてしまうのはいいのか?

「隣の山に飛び移る」複数の専門性をもつことを推奨する青山学院大学経営学部マーケティング学科講師を務める、ビジネスノマドの働き方を実践してきた元博報堂山本直人氏にお話を伺いました。

今回は、ノマド予備軍としての立ち位置からでてくる次のような質問についての回答集をお届けします。

Q:第1回で、キャリアは幾つかの山を渡り(並列する別のスキルをつける)、オリジナリティを作る話があったが、学生の場合はどう過ごしたらいいですか?

山本 直人さん(以下、山本):

学生時代はまずは1つをやりきるのがおすすめです。

なぜかというと、1つのことができない人は2つ目ができないから。
例えば、よく新入社員が最初コピー取りや会議室取りを担当するよね。
こういうの不満持つ新人もいるけど、なんでこんなことをやらせるか?
それは、1つのことができない人は2つ目のこともできないってことなんだよね。
それだけの理由なんだよ。

逆に、下手でも何でもいいから1つのことができたら、また次のこともできる。
スポーツだってそうだけど、たとえばいきなり3回転半ジャンプはできない。
1回転、2回転って少しずつレベルアップしていく。

仕事だと、フィギュアと違って誰でもできそうに見えちゃうから、そういう不満が出るし、理解しづらいとは思う。
でも会議室取ってちゃんとみんなに連絡するところすら満足にできない人が、重要な交渉任せられたら絶対失敗するよ。
時間通りに来るとか、そういうのも全部積み重ねなわけじゃない。

1つやり切った人の方が、次はじゃあこれができるだろう、っていうのが想像しやすいんだよね。

Q:最近は会社に入って3年以内にやめる人も多いですが、どう思われますか?

山本:

それも同じことが言えて、何かはやり切っておいたほうがいいと思う。
そこの完結させたものが深い必要はなくて、例えば一つの事業取り仕切ったとかでも良い。
その際大事なのは、自分の中で工夫して、自分なりの方法を編み出したって部分。

言われたことだけじゃなくて、例えばアルバイトでも、自分なりに考え抜いた形で遂行した、こういう風に考えて完結させた、というものがあれば、話した時にその人の考え方が伝わるよね。
単に1つのことを「やる」のと、自分なりに考えて、「やり切ること」は全く違う。

いまは「とりあえずやってみることが大事」って言われがち。
それでやってみるのって、結局誰かの言いなりになって、「これやってみたら」って言われてやってみてるだけのことも多いんじゃないか?

大事なのは、自分で考えて始めてるかどうか。

まあ「とりあえず」転職にトライして成功出来たとしたら、「とりあえず」なんかじゃなくてそれまでのことが何かしら評価されているから転職出来ているんだと思うけど。きっと。

Q:なぜ山本さんは独立するときに会社形態にしなかったのでしょうか?

山本:

認知を集中させるっていうブランディング・マーケティングの大原則に則って、会社じゃなく「山本直人」という個人で信頼を得られるなら、その方がいいなと。

個人名に仕事がくるようにしたかったんだよね。
最初の顧客はある大手自動車クライアント。会社じゃなくて個人でもすぐ契約書結んでくれた。
その後も食品メーカーとか飲料メーカーとか、ナショナルクライアントも多いけど、「個人だから」という理由で断られたことは一度もない。

Q:独立後は、会社員に比べると情報が入ってこなくならないか?

山本:

それね(笑)会社やめるときに先輩に心配されたんだけど、大丈夫(笑)
会社員の方が世の中の情報が入ってこないと思うよ、内側の視点の情報ばっかりになって。
頭のなかの7割とか8割が内向きになって、世の中のことをしらない。

会社にいると同じ情報にみんな群がっちゃうんだよね。かえって。

興味ごととかもやっぱり似るじゃない。今特に、タイムラインで共有共有みたいになってるじゃない、ナレッジマネジメントの逆のマイナス点。
一頃新聞を読まない時もあったけど、今は日経電子版とNHKのBS-1で朝やっているワールドニュースが基本かな。コンパクトな有料メディアを読むのが結局一番良いと思うよ。いらないと思えば止めればいいんで。

もちろんネットで関連ニュースを調べて読んでみるとかもやっています。
ネット上探してもいいし。電子版は今本当にすごく保存がきくから。テーマ別にクリッピングできていいね。
もちろん日経だけでは足りないけれど、適宜補ったり、追加で調べていけば、あれだけで十分情報を得ることは可能だと思います。

取材・記事作成/林智彦
撮影/加藤 静

【専門家】山本直人氏
コンサルタント(マーケティングおよび人材育成)/青山学院大学経営学部マーケティング学科兼任講師
1986年 慶応義塾大学法学部卒業。同年博報堂入社。制作局コピーライター、研 究開発局主席研究員(兼)ブランドコンサルティングコンサルタントを経て人事 局人材開発担当ディレクター。2004年8月独立。
マーケティングスキル、スキル開発を中心とした人材育成コンサルティング/ト レーニング、および商品開発、ブランディング、経営理念開発をおこなう。著書「世代論のワナ」「電通とリクルート」「ネコ型社員の時代」「グッドキャ リア」他多数
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ノマドジャーナル編集部
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