副島雄一氏は、スマートフォンゲームのアプリ開発会社、キャラクタービジネスの会社など、7社で取締役を務める。そこでの主な仕事は経営支援であり、一部ゲームアプリの現場プロデューサーも担当する。
「マーケティング」「開発」といった一本路線ではなく、経営企画、事業戦略、イラスト制作、国内外での拠点開発新事業立ち上げなど、副島氏は、2つだけでなく、かなり様々な職種のスキルを統合することで独自の強みや方法論を形成している。そのような新しい働き方を実践する副島氏に、働き方、契約、仕事のコントロール術などを伺いました。
複数社取締役という働き方。パフォーマンスを約束し高価格で契約
Q:それにしても、なかなかない働き方をされていますね。
副島雄一さん(以下副島):
この働き方が特殊だと言われますが、そんなことはないと思っています。例えば営業職をしている方は、複数社のクライアントをお持ちなのが一般的だと思います。
社員の場合は所属している会社を介し、会社全体の利益からお給料をもらっています。私はそのクライアント各社と直接契約を結び、直接お金をもらっているだけです。
商社の営業職のように何十社も担当している方がずっと大変だと思います。私はそんなに沢山の会社と取引する自信がありません。(笑)
取締役など経営陣としての業務以外に、個別契約として現場業務を行うこともあります。ある会社ではプロジェクト単位でのコンサルタント契約、ある会社では社長室の名刺を持ち新規事業系の業務を行っているが、契約上は社員ではなかったり。
ただ、この働き方は誰にでもオススメはしません。パフォーマンスを常に発揮して、抜けると引き止められるくらいの実力が必要です。複数社を掛け持ったり、短時間の業務契約となるため、パフォーマンスを約束し高価格で契約する関係上、費用対効果が悪いと判断されたら真っ先に切られるリスクがあるためです。
私の場合は長期契約だったり、役員としての収入が確保できる会社をメインで持ち、その周りに得意なことを活かして複数の仕事をポートフォリオ的に持つスタイルで安定して一定以上の収入を確保しています。
スキルと契約業務の視覚化と詳細化をいかにするか
Q:このような働き方を実現している中で気をつけていることなどはあるでしょうか。解決するテーマが多様な領域にわたるように思いますが、契約の結び方や業務の明確化などはどのようにされているでしょうか?
副島:
自分の働き方の特徴として、1社との契約のなかでも、自分の提供するスキルを入るプロジェクトごとに明確化・細分化し、契約自体を分けることがあります。各事業部やプロジェクト、タスクに対して費用対効果を個別に話し合うことが目的です。それにより、契約単位でお互い納得する費用とタスクを調整できることで、継続的な契約につなげることができます。
スキルの視覚化については、逆に自分が採用側としてもよく行います。
例えば、現在の組織や、埋まっているポジションの特徴を図にして整理することで、同じ開発事業部のマネージャーでも、ここは現場とコミュニケーション能力の高いマネージャーが必要、ここは技術理解があるマネージャーが必要。などと言ったより具体的な要件を視覚化するといったこともしています。
自分がひるまないために、事前に徹底的に調べきる
Q:様々な業界の会社から依頼が来ることも多いと思います。副島さんは異なる業界の会社でも中に入り込んで実働支援している印象ですが、そういった際は、どうやってキャッチアップするのでしょうか?
副島:
新しい業界に入る際には、短期間でその業界のディープなところに入るために、事前に1から10 まで徹底的に調べ、学びます。
例えばシステム開発会社のモンスターラボに入る前は開発会社の経験がなかったため、書籍を買い漁り1ヶ月以上徹夜でプログラムを書き続け、最低限のプログラムや業界知識を学びました。同時に様々な勉強会に出る、知人を作るなどして、何かあった際に相談できる環境を作ります。
そうすると、本職ほどではないまでも最初からある程度理解を持って話せるため、後でこの業界きたのそんな最近なの?と驚かれることも多いです。
プログラミングなど自分が実際に仕事では使わない技術/知識でも必要と判断すれば、自分の業界知識の浅さにひるまず、現場と共通言語で意思疎通し、正しい判断をできるよう、業界に入る際は出来る範囲で徹底的に取り組みます。
目的意識があれば、辛い作業でないです。それよりもパフォーマンスを出せなかったり、「にわか」扱いされる方が辛く、怖いです。
「内部原価より安い」という説得
Q:外部人材で困るのは、自身の適性価格です。副島さんは受ける仕事も多様なので、その目線感も一つではないように思いますが、報酬の設定はどのようにされているでしょうか?
副島:
事業計画のコンサルティング仕事の場合、こんなに高いの?と言われることがあります。しかし、パフォーマンスベースでみた時、経営者の視点として決して高くないことを説明する必要があります。
スキル・経験の低い社員で何ヶ月も試行錯誤して内部原価を積み重ねるより、経験のある外部を使って短期間で仕上げたほうが安いということがあります。加えて、経験から成功確率が高かったり、外部のノウハウが社内に残るとなれば、外部に任せようという判断になります。
例えば、社員の原価を仮に60万/人月とした場合、3人で3ヶ月かければ540万となります。外部コンサルタントが週に2日の契約で、社員は1人担当。この体制で2ヶ月で仕上げた場合、内部原価120万+コンサル費200万でも200万以上安いということになります。同時に社員が外部のノウハウを学ぶ機会となると同時に、「1ヶ月の時間」というお金で買えないメリットが残ります。
週2日で1ヶ月100万という金額だけを見ると高い安いという議論になってしまうため、費用対効果で話をすることが大切です。
Q:お仕事とあわせて、さらに格闘技のトレーニングもされていると伺いました。
副島:
はい、今は柔術を中心に週に3日朝5時に起きてトレーニングしてから仕事に向かいます。経営を中心に業務を行っていると、責任の重い選択や業務が中心となります。そんな時に、考えや気持ちを切り替えるのに非常に良いです。
中学生の頃から格闘技を習っていて、実は学生時代から独立を意識していたのですが、最初は、、、会社が大きくなったらメンバーに経営を任せて自分は好きなこと(格闘技)をしていられたらいいな~という不純な動機でした。学生の妄想なので許してください。(笑)
他にも今回のインタビューでは触れていませんが、実は刀匠といった職人のキャリアも過去にあります。自分ではそう思っていませんが、周りからは黒歴史だと言われます。(笑)
取材・記事作成/林 智彦
撮影/小林 宥太
1980年愛知県生まれ。3DCGデザイナーとしてWEB3D表示技術の特許開発に関わったのをきっかけに、新規事業に傾倒。株式会社モンスターラボ統括事業部長、株式会社アプリカ新規事業部長などを歴任。スマートフォンの隆盛に合わせゲーム開発を目的とした株式会社イルカアップス設立、取締役就任。株式会社DLEの社長室プロデューサーも兼任し、同社オリジナルアニメやコンテンツを用いたデジタルコンテンツ事業、東京ガールズコレクションなどの新規事業に関わる。複数社の役員として新規事業、ゲーム/システム開発を得意分野としマルチに活動中。
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