SIとしてシステム系のスキルや知識を習得した後に、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)のソリューションカンパニーであるベルシステム24のマーケット開発事業部にてノウハウを築き上げた株式会社モンリッチの代表取締役・山田耕造さん。
現在は複数社に対して、CRMのマーケティング手法を伝授しつつ、ニーズ分析や課題点抽出のための分析をサービス化し、プラットフォームとして活用できる環境の構築を目指しています。

今回は、会社員時代から独立後の話や、企業からの相談を受けるきっかけとなった専門家相談サービス『Open Research』の相談事例、果ては専門家相談サービスが秘める可能性や活用するメリットまで、興味深い話を伺ってみました。

多くの企業へのオペレーション改善で身に付けたCRMの知識、独立後も多くの企業をサポート

Q:もともとCRMに興味をもったきっかけは?

山田耕造さん(以下、山田):

社会人になってからは、最初は、SI(システムインテグレーション)に従事していました。システムを販売していたんですけど、その時に運用の課題や顧客接点の課題が徐々に見えるようになったことが、CRMに興味を持ったきっかけですね。

Q:CRMについての知見はどこで身に付けたのでしょうか。

山田:

SIの経験を積んだ後に、CRMのソリューションカンパニーである株式会社ベルシステム24に転職しました。ベルシステム24では、CRMを軸に多くの企業様と関わらせていただきました。

Q:ベルシステム24では具体的にはどういった業務領域を担当されていましたか。

山田:

CRMを軸にした売上の拡大やコストの削減がメインテーマでした。
顧客接点を再設計して、セールスやマーケティングの最適化を支援することや、アウトソース戦略や業務設計などを行い、運用コストの最適化を支援するなど、顧客サイドと企業サイドの両面のCRM改善をディレクションさせて頂いておりました。

顧客接点に深く入り込むと、本当に多くの改善項目が見えてくるんです。それらの課題を、戦略的に優先順位をつけて改善していった経験や、この施策をすると現場ではどのようなハレーションが起きるかなど、そういった現場での経験を積めたことで、CRM改善におけるディレクションノウハウやスキルが身に付きました。

Q:それから独立をされて起業されたようですが、どういった事業を展開されているのですか。

山田:

最近は顧客ニーズの移り変わりが早くなっている中、企業競争は活発化しており、またデータやAI(人工知能)を駆使した先進的なサービスも展開されています。
それらにCRMを適合させることが肝なんじゃないかと考えて起業に至りました。CRMの重要度は増していると考えています。

自社の事業としては、CRMのマーケティングカンパニーという立ち位置で、展開していこうと思っています。具体的には顧客アンケートなど、顧客の声を軸に具体的なニーズを把握し、企業活動の改善をするアセスメントをしています。

Q:これまでの経験を最大限に活かせる業務ですね。今後はどのように展開される予定ですか?

山田:

今後は、一部開発中なんですけれども、ニーズ分析や課題点抽出のための分析をある程度、サービス化してプラットフォームとして提供し、企業のビジネススピードを早めていくお手伝いができればと思っています。

CRMのマーケティングに必要な要素とは

Q:ちなみに、現在提供されているCRMのコンサルティングについて、どういった業界や企業の依頼が多いのでしょうか。

山田:

多いのはメーカー企業ですね。最近だったらネットサービスを展開している企業、特にO2O(Online to Offline)とか。シェアリングエコノミー的なサービスの企業からの依頼も増加していると思います。

Q:CRMのマーケティングの業務を遂行していく上で、どういったスキルが重要になりますか。

山田:

CRMのマーケティングは、部門横断型で絡むケースがとても多く、顧客を軸に経営の最適化をしていくアプローチです。組織が一連になって売り上げを伸ばしていかなければいけない活動であり、そういう意味では別々の部門でも同じ視点で目標に取り組めるような具体的な指標を提案する必要があります。
改善点を出すのはそれほど問題ないのですが、そこから優先順位をどう設定していくのか、ビジネスを考慮し、複合的に考えて、どう着手していくか。後はどう社内プロジェクトを円滑に進めるか、というコミュニケーション能力が必要になると感じています。

Q:その他の専門家やコンサルタントと比較して、山田さんの強み・特徴については、どういった部分が挙がりますか。

山田:

これからの時代に適合させたCRMノウハウを持っているところかと思います。
少し話が広がってしまうかもしれませんが、そもそも私がこの会社を創業しようと思ったきっかけが、CRMのマーケティングを提供するサービスがとても少ないと思ったことなんです。WEBマーケティングの事業を展開している企業は多くあるんですけど、顧客の声を軸にしたマーケティングは少し弱いというか、ニーズ分析から改善のディレクションをサービス化している企業は意外とありません。

CRMのマーケティング企業が今後重要度を増す、三つのキーワード

山田:

そもそもCRMマーケティングが、何で必要なのかと言うと、世の中の変化という背景が大きいと思います。大きく三つのキーワードがあって、一つ目が「人口減少」。二つ目はサービスの「コモディティ化」。三つ目はビッグデータの「パーソナライズ」です。

Q:人口減少とコモディティ化とは、どういったことでしょうか。

山田:

まず、少子高齢化しているので、生産年齢人口が60%以下に減少しており、企業側としてはコア人材がなかなか採用できなくなっています。経営の意図を理解しながら現場に落とし込むことのできる人材が不足しているのが一番の問題です。そういったインストラー的な役割はCRMのソリューションはとても向いております。攻めも守りも含めて、利益に直結する顧客接点の改善に近道できるからです。
また、定めた戦略をアクディブに実行していくことが最も重要になります。それで外部からのディレクション力が必要になるのではないかと考えています。

コモディティ化は技術革新のスピードが速いために、画期的なサービスを出しても、市場が拡大すると大企業が投資を増やして技術レベルがどんどん上がって、類似サービスがあっという間に増えてしまう可能性が高まっているということ。コストパフォーマンスの競争が始まる一連のサイクルが、すごく早くなっていると感じています。
そういう意味で、初期段階からCRMのマーケティングを活かしていくと、他社に真似できない差別化されたオペレーションのノウハウが生まれ、それらは顧客ロイヤルティの最大化に繋がり、一度獲得した顧客シェアの維持拡大を支えます。コモディティ化された市場でも継続的な収益が見込めるということです。こういったCRMマーケティングの概念が重要になってきます。

Q:そしてビッグデータのパーソナライズですね。

山田:

最近、よく人工知能が話題になっていますが、私としては人工知能によって人の役割が変わるのではと考えています。人工知能には得意領域と不得意領域がまだまだあって、人が人工知能を駆使し、人工知能の成長を育てる必要があるのではと。
パーソナライズの領域で言うと、大量のデータを決められたロジックで解析して、瞬時に回答に導く一連の動きはサービス適用レベルですが、問題はそのロジックとデータベースをどうやって構築するかです。実はそれらの構築要素はCRM活動で得ることのできる、業務フローの考え方やデータベースの構築ノウハウが、意外と相性が良いんです。
こういった先端技術を駆使したパーソナライズ領域にも、CRMマーケティングは大きく活用されていくと思います。

(後編に続く)

取材・記事作成:山田 貴大

写真:宮本 雪

ノマドジャーナル編集部
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