少子化社会が、親の意識を変えました。小学校からでも、幼稚園からでもなく、「生まれる前から」子どもへの英才教育プログラムを検討し始める時代。早期教育のニーズに応えるための市場が拡大し続けています。

こうした動向を踏まえ、株式会社サーキュレーション と株式会社SEEDATA (博報堂DYグループ)は、共催セミナー「早期教育市場におけるビジネスチャンス ~早期教育に先進的に取り組んでいる母親『早育ママ』の動向分析から~」を開催しました。先進的な消費者群をリサーチするSEEDATAが見出した「早期教育に力を注ぐ母親」のトレンドから、この分野での新規事業創出につながるヒントを得ることが目的。多数の新規事業担当者を迎えて行った、当日のセミナーの模様をご紹介します。

「早期教育」の市場は拡大し続けている。胎教を早期教育の一部として考えている人も

小尻恭平さん(SEEDATA チーフアナリスト):

本日のセミナーは、早期教育に関連する市場の動向を知り、リサーチ対象者の考え方を元に新規事業のアイデアを生み出すというステップで進めていきます。

私たちが今回トライブ(先進的な消費者群)としてリサーチした”早育ママ”とは、就学前(6歳前)の子どもの教育に力を入れている母親を指します。中には、生まれる前の胎教も早期教育の一部として考えている人も。こうした早育ママの考え方を知り、皆さんと一緒に新規事業の種を見つけたいと思います。

そもそも、なぜ早期教育が注目されているのでしょうか。一つには、少子化に伴い子ども1人あたりに対する教育投資額が増加しているという背景があります。また、核家族化が進み地域社会でのつながりが薄れる中で、子育てについて相談できる相手が少なく、親が教育への自信をなくしているという理由も考えられます。

“幼いうちから子どもに高いレベルの教育を受けさせたい”というニーズに対して、幼稚園や保育所はネイティブスピーカーによる英語教育を充実させるなど、新たな対応を始めています。岐阜県のとある幼稚園は英語教育を主体としたプレスクールに転換し、地域で好評を博しています。早期教育に関するアプリも続々と開発・提供されるようになりました。今後もこの流れが続き、市場が拡大していくと見込まれています。

早育ママの実際の発言から”破壊的仮説”を導く

早期教育を取り巻く市場の動きが共有された後は、来場者参加型のワークショップが行われました。

まずは「早育ママ」へのインタビュー結果を読み込み、気になる発言や目新しさを感じた内容について、参加者それぞれがピックアップしていきます。リサーチ対象者の発言の裏側にどんな考え方が潜んでいるのかを考える作業です。ここで見つけた事実(FACT)を、新規事業アイデアの源となる解釈(FINDINGS)につなげます。

ファシリテーターを務める小尻さんからは、「できるだけ飛躍した発想でFINDINGSを導くことが、ユニークなアイデアを生むカギです。ぜひ”破壊的な仮説”を立ててください」というアドバイスもありました。

発見したFACTと導き出したFINDINGSは、参加者が2人1組になって共有。互いに異なる注目点や考え方を知ることで、イノベーションのヒントを見つけます。共有の時間をきっかけに、新しいFINDINGSも生まれていました。

「ママ友インフルエンサー」や「早育不安の解消サービス」が生まれる?

セミナーの終盤では、参加者から全体へ、FINDINGSの共有を行いました。

ある参加者は、「”子どもを東大へ現役合格させたママの本”を参考にしている」「子どもには飛び級のように上の学年の授業内容を学ばせたい」という早育ママのコメントに注目。

「早期教育の成果は、ママ友の間での地位向上につながるのではないか。こうした人は、他の早育ママに影響を与えるインフルエンサーになれる可能性もある。”子どもが○○検定に合格した”といった情報をSNSなどで発信する早育ママが増えていきそう」と予測していました。

また、「早い段階から子どもにさまざまなことを学ばせるのは、周囲の友だちに負けないようにしたいから」「何もしないと、子どもが自信喪失に陥ってしまいそう」「英語をマスターしないと、将来的に十分な収入を得られないのではないか」など、「不安」から早期教育に取り組むママの声に注目する人も。

明確な根拠はなくても、早期教育の動きが広がる中で不安を抱える親が増えそう。こうした不安を払拭できるような長期スパンのビジネスや、ポジティブな情報を伝えるサービスも求められていくのではないか」と話していました。

この後も参加者の間で議論が盛り上がり、さまざまな業界・業種の知見とともに、活発にアイデアや意見が交換されていました。今後、より注目されていくであろう「早育ママ」のトレンドを理解し、ビジネスアイデアにつなげる場となりました。

《編集後記》

サーキュレーションによる1時間の専門家相談サービス「Open Research」と、SEEDATAの「トライブレポート」を組み合わせることによって実現した今回の取り組み。レポート解説セッションおよびワークショップという形で、新しいアイデアや市場を模索し続けている企業担当者へ、新規事業を推進していくための支援を展開しています。

現在、これらのワークショップを多くの企業の新規事業担当者、経営企画部向けに提供しています。興味のある方は、以下の「専門家へ問い合わせる」からご連絡ください。

登壇者:小尻 恭平氏
株式会社SEEDATA チーフアナリスト。
早稲田大学商学部卒。2015年よりアナリストとしてSEEDATAに参画。
現在はチーフアナリストとしてトライブ調査、レポート作成及び経営企画の業務を担当。女子高生から母親まで幅広い女性に関するトライブリサーチを経て、未来の女性の社会進出のあり方や女性ならでは消費などの、女性を取り巻く未来洞察を得意とする。
<これまでにリサーチしたトライブ>
・ミックスチャネラー:ミックスチャンネルというSNSアプリを先進的に利用している女子高生トライブ
・ママ起業家:ママでありながらママのためのビジネスを独立して行っている女性トライブ
・プロ女子:プログラミングスキルやものづくりで生計を立てているプロフェッショナルな女性トライブ
・早育ママ:子供が学校に行き始める前から熱心に教育を行っている女性トライブ
など。

ノマドジャーナル編集部
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