株式会社サーキュレーション株式会社SEEDATA博報堂DYグループ)の共催セミナー「高齢化社会の未来予測〜シニアウオリアの動向分析から〜」が開催されました。本セミナーは、先進的な消費者群をリサーチするSEEDATAが発表した「シニアウオリア」のトレンドをもとに、働くアクティブシニアを対象とした新規事業を考えることを趣旨としています。

 

多数の企業の経営企画部、新規事業担当者の皆さまとともに行われたワークショップの様子を含め、当日のセミナー内容をレポートします。

5年先、10年先の市場を読み解き、新規事業につなげる

藤井陽平さん(株式会社SEEDATA COO ):

「SEEDATAは”イノベーターのシンクタンク”。新たな事業を世の中に送り出していきたいと考える方のために、ネタ帳を作成するような事業を展開しています。具体的には”トライブ”という、特徴的な価値観を持つ方を深くリサーチした資料をもとに、5年先、10年先の市場を読み解くための情報をお届けしています。今回はその中で”シニアウオリア”を取り上げていきたいと思います。

 

高齢化が進む未来で、定年退職後も高いモチベーションを保って社会で活躍しようとする方が増えていきます。”シニアウオリア”の調査にあたり、定年退職の時期を控えた50代の方を中心に、ビジネスエグゼクティブからフリーランスの方まで、6名の方にインタビューしました。本日はこうした方々のリサーチ結果をもとに、将来のビジネス創出に向けたアイデアを出し合えればと考えています」

「シニアウオリア」とは?
「顧問ウオリア」から「外資系ウオリア」まで、多様な働くシニア市場

岸田卓真さん(SEEDATA チーフアナリスト ):

「まずはアクティブシニアのこれからを説明します。2025年には平均年齢が50歳になると言われており、超高齢社会が進んでいるのですが、かつてのシニアのイメージは変わりつつあります。定年退職後、60歳、65歳を過ぎてもバリバリ働く方はすでに増え続けており、2025年時点では、こうした方々はもっと増えていくでしょう。70歳、75歳になってもアクティブに働き続けると考えられるシニア層を”シニアウオリア”と命名し、その消費トレンドについて考察したのが今回のレポートです。

私たちはシニアウオリアを4つにセグメントしています。一つは「顧問ウオリア」。エグゼクティブ層で、退職後も企業の顧問として活躍されているような方です。次に「ウオリア予備軍」。まだ定年退職前ですが、定年後も活躍するために意識して日々準備している方です。さらに「外資系ウオリア」。外資系企業は日本の一般的な企業より定年が早く、50代半ばで定年を迎えるため、さらなる活躍の場を求めて動いています。最後に「自営業ウオリア」。自営業には定年がないので、歳を重ねてもずっと活躍したいと考えている方です。

 

インタビューした方の一例をご紹介します。大手メガバンクの支店長として活躍されているシニアウオリア予備軍の方で、現在56歳です。年収は約2000万円ですが、一方で喫茶店のクーポンを活用するなど倹約意識の高い方。ただし長男の結婚式には550万円を援助していて、家族の晴れの舞台にはしっかり出費しようという考え方を持っています。趣味は奥さまとのドライブや海外旅行。健康長寿で、できることなら自分の今の仕事の延長線上で活躍したいと考えています。

このように、シニアウオリアの考え方を知るための詳細なインタビューを行いました。本日はその内容をもとに、新規事業のアイデアを一緒に考えていければと思います」

「事実」→「解釈」→「メタファー」。新規事業アイデア創出のプロセスを体験

セミナー中盤からはワークショップが行われました。

まずはお互いの人となりを理解し、良いフィードバックを通じて思考の質を高められるよう、2人1組になってアイスブレイクを兼ねた自己紹介。

続いて、シニアウオリアのインタビュー内容をインプットします。実際のインタビュー議事録を読み込み、気になった部分に線を引きながら、有益な情報をインプットする作業を行いました。インタビュー対象者が話した内容(事実=ファクト)から、どのようなことが考えられるか(解釈=ファインディングス)を共有していきます。

 

ファシリテーターの岸田さんからは、「自身で『少し飛躍し過ぎなのでは……』と思っても、遠慮なく書いてください。飛躍した解釈からこそ、イノベーションが生まれます。よくある解釈からは、よくあるサービスしか生まれません」と説明がありました。ワーク後、どのような事実と解釈が得られたかをチーム内で共有。「お金に対する価値観」「健康に対する価値観」「倹約に関する価値観」など、さまざまな視点から意見が交わされました。

 

最後は「メタファー」を考えるワークです。ファインディングスをもとに「○○のような□□」というメタファー(比喩)でアイデアを出し、シニアウオリアの価値観に応えられるようなサービスを考えます。メタファーの例としては、「宝探しのようなショッピング」(ドン・キホーテ)、「会社の母子手帳」(創業手帳)などが紹介されました。

新規事業の発想のコツをつかむ。シニアウオリアの特性から考えられる新規事業とは

個人ワーク後、手を挙げた参加者からは「積み立て預金のような食事」というメタファーが発表されました。食べたものの情報を蓄積し、健康管理に生かせる情報サービスや宅配サービスのアイデアです。シニアウオリアの高い健康意識に加え、倹約意識などの堅実さにも訴えるメタファーとして評価されていました。

この日、会場内では終止、参加者同士が和やかに議論する風景が見られました。約2時間という限られた時間のセミナーでしたが、シニアウオリアの現状や今後の傾向を理解し、その情報から具体的にビジネスアイデアを考えていく、新規事業アイデアを実際に創っていくプロセスを体験することができました。

 

サーキュレーションの1時間の専門家相談サービスOpen Researchと、SEEDATAのトライブレポートを組み合わせることによって実現した今回の取り組み。レポート解説セッションおよび新規事業ワークショップという形で、新しいアイデアや市場を模索し続けている新規事業担当者に対して、新規事業を推進していくための支援を展開しています。

現在、これらのワークショップを多くの企業の新規事業担当者、経営企画部向けに提供しています、興味のある担当者の方は以下の「専門家へ問い合わせる」からお問い合わせください。

 

取材・記事作成:多田 慎介・畠山 和也

登壇者:藤井 陽平

株式会社SEEDATA COO
COO(Chief Operating Officer)としてSEEDATAのサービス開発、生活者調査技術開発を担当。
2013年博報堂入社。嗜好品、観光業、化粧品などの分野で、生活者リサーチを基軸にした商品開発やブランディング業務に従事。自主事業として、大企業とベンチャーの事業開発推進プロジェクト、社団法人「コトの共創ラボ」の立ち上げに従事。

登壇者:岸田 卓真

株式会社SEEDATA チーフアナリスト。

京都大学建築学科にて建築設計、慶應義塾大学院メディアデザイン研究科(KMD)にてデザイン思考、エスノグラフィ元にしたデザイン手法を研究し、また、KMD在学中にイギリスのRoyal College of Art、Imperial College London、アメリカのPratt Instituteにてプロダクトデザイン、デザインエンジニアリングを学ぶ。
2015年よりSEEDATAに参加。チーフアナリストとして、学生からシニアまで10以上のトライブリサーチプロジェクトを行い、そこで得た生活者への洞察を元に電気機器・美容品等の商品企画・コンサルティング等の業務に従事。