健康意識の高まりは、消費行動にどのような影響を及ぼすのか―。「完全食」など、注目を集めるプロダクトが次々と登場するヘルスケア市場の動向を分析し、新規事業のタネを探すセミナー「ヘルスケア消費の動向予測 〜完全食ユーザー “ドクター・シューマー”の動向分析から〜」が開催されました。
本セミナーは、株式会社サーキュレーションと株式会社SEEDATA (博報堂DYグループ)の共催。多数の新規事業担当者を迎えて行われた当日の模様をご紹介します。
拡大を続ける市場に、ユニークなプロダクトが続々登場
SEEDATA 岸田卓真さん:
「ヘルスケア領域の市場分析を進めるにあたって、尖った消費行動を取る人たちのことを”ドクター・シューマー”と名付けました。栄養学をはじめ最新の技術を駆使したヘルスケアプロダクトを、その仕組みレベルから理解して使用し、健康を追求している人たちと定義。特に今回、我々は”完全食”を日常的に摂取する消費者に注目しました。
国内のヘルスケア市場は、拡大を続けています。2013年に13兆円だった市場規模は、2020年には倍の26兆円になると見られています。さらに10年後の2030年には、37兆円にまで成長するという予測もあります。この中で、健康食品に関連する市場もじわじわと伸びてきている状況です。
この領域では、話題のプロダクトが続々と登場しています。特に私たちが注目しているのは”完全食”と言われているもの。体に必要な栄養素のすべてをまかなえる食品や飲料です。アメリカでは”ソイレント”という、プロテインのような飲み物で一食分の栄養素すべてを摂取できるという商品が人気を集めています。国内では”COMP”という完全食が発売され、話題となりました。どちらもクラウドファンディングで順調に資金調達を進め、一気に市場へ展開しています。
また、良質なタンパク源として”昆虫食”を提案するベンチャーや、排泄物を記録して健康状態を知ることができるアプリ、唾液からDNAを解析して健康リスクを教えてくれるサービスなど、ヘルスケア市場ではユニークな事業が次々と生まれています。こうした動きは、今後も拡大していくのではないかと考えています。
プロボクサーの発言から、新たな事業開発のタネを探す
ヘルスケア市場の動向が共有された後は、新規事業を考えるためのミニワークショップが行われました。
岸田さん:
「新規事業を生み出すためには、消費者の発言の裏側にある”潜在的なニーズ”をつかむことが重要です。ワークショップでは実際のリサーチ結果を元にして、これを探っていきます。
今回のドクター・シューマーの調査にあたり、私たちは26歳のプロボクサーにインタビューしました。日頃から健康管理にとても気を遣っている方です。この内容を読んで、気になる回答を抜き出してみてください。その事実=”FACT”をもとに、どのような気づき=”FINDINGS”が得られるか、取り組んでいただきます。
FINDINGSを考える際に大切なのは、”いかに考え方を飛躍させるか”ということです。10人が聞いてそのほとんどが共感するような気づきは、先進的なアイデアにつながるとは言えません。むしろ、10人中9人が「なるほど!」と共感し、1人が首をかしげるような、尖ったFINDINGSを見つけていただきたいと思います」
栄養を摂るため、楽しむため……「食」の意味合いが変わっていく?
後半は、参加者それぞれが発見したFACTとFINDINGSが共有されました。
ある参加者は、「週のうち5〜6日はトレーニングを行っている。毎日ハードに練習することで心配がなくなり、心も体も健康になる」という発言に注目。身体的な部分はもちろん、メンタル面での健康維持も重要であるという観点から、「第三者の目線で健康管理の取り組みをほめてくれ、心の拠り所となってくれるようなAIやロボット」というプロダクトアイデアが出されました。
「週に数回、時間がないためコンビニ弁当を食べる」という発言に注目した参加者も。時間がないときでもしっかり栄養を摂取できる完全食のニーズが拡大していくのではないかという意見がありました。また、「栄養を摂るための義務としての食事」と「味わって食を楽しむための食事」といったように、目的に応じて食事の意味合いが変わっていくことも今後起きうるのではないかという議論が起きていました。
最終パートでは、ファシリテーターを務める岸田さんから「比喩を用いてアイデアを形にする」方法を解説。ドクター・シューマーの領域では、必要な栄養素を選んで素早く食べられる「F1ピットインのような食堂」という新規事業のアイデア例が紹介されていました。リサーチから得られたFINDINGSを、どのようにして事業アイデアにつなげていくか。参加者の間でも、活発に議論が続いていました。
現在、これらのワークショップを多くの企業の新規事業担当者、経営企画部向けに提供しています。興味のある方は、以下の「専門家へ問い合わせる」からご連絡ください。
株式会社SEEDATA チーフアナリスト。
京都大学建築学科にて建築設計、慶應義塾大学院メディアデザイン研究科(KMD)にてデザイン思考、エスノグラフィ元にしたデザイン手法を研究し、また、KMD在学中にイギリスのRoyal College of Art、Imperial College London、アメリカのPratt Instituteにてプロダクトデザイン、デザインエンジニアリングを学ぶ。
2015年よりSEEDATAに参加。チーフアナリストとして、学生からシニアまで10以上のトライブリサーチプロジェクトを行い、そこで得た生活者への洞察を元に電気機器・美容品等の商品企画・コンサルティング等の業務に従事。
専門家と1時間相談できるサービスOpen Researchを介して、企業の課題を手軽に解決します。業界リサーチから経営相談、新規事業のブレストまで幅広い形の事例を情報発信していきます。