日本企業が海外進出するにあたっては実際のところ何か重要でしょうか。本記事では、海外進出のスペシャリストの知見と、実際に日本企業の海外進出支援を海外で行ったノマドワーカーの経験から、海外展開に必要な要素をみてみることとします。

かつて海外進出を支援するノマドワーカー経験のある筆者が2016年9月に開かれた「海外事業力育成セミナー 次世代経営幹部を育てる」に参加して感じたことを、自分自身の経験に照らし合わせながら、まとめてみました。

前編では、私が海外進出の支援をすることになった経緯と、支援をしていた際に感じた海外進出を成功させるポイントについて、お話させていただきます。

*「海外事業力育成セミナー 次世代経営幹部を育てる」については、以下の記事もあわせてご覧ください
前編:https://nomad-journal.jp/archives/1400
中編:https://nomad-journal.jp/archives/1408
後編:https://nomad-journal.jp/archives/1412

■海外進出支援ノマドとして働く。中小企業向けの海外進出支援を

まずは、私自身のことを簡単に紹介いたします。学生時代に起業をした後に、金融と不動産業界で営業を経験。いわば”THE営業畑”で育った私ですが、会社に縛られる事が嫌になり「好きな時に、好きな場所で、好きなことをしたい!!!!」と、半ば勢いで会社を飛び出し、個人事業主として新規事業を中心とした相談を知人経由で何件か受けて生計を立てていました。今思えばアマチュアもいいところで、振り返ると「中学生ノマド」とでもいうべき未熟なノマドワーカーでした。

数年前、そうしてノマドワーカーをしていると、中小企業向けに海外展開の支援を行う機会がありました。「海外進出支援を現地に行ってハンズオンでやりたい!」と私は、イギリス・オーストラリア・タイ・シンガポールなど世界中を飛び回って、現地の立ち上げ含めた海外展開支援を行いました。

■ノマドワーカー時代。現地リサーチにより、海外進出先の選定を支援

個人事業主として、様々な会社の支援を行っていた当時の海外展開支援の例としては、例えば進出先のリサーチの支援があります。ある時は、クライアント企業の依頼を受けて、海外進出国の選定のため、現地でリサーチするために私を含めて3名のメンバーが海外に送り込まれました。リサーチの結果、最終的にベトナム・インド・オーストラリアの3国を選びました。進出先の選定基準としては、後述しますが、例えば進出国の法規制、政治の安定性、人件費や労働者の質、物流、外資企業の進出状況など様々な要素を勘案しています。

進出先が正しかったかはその後明らかになっていきますが、少なくとも進出先国を決め打ちでいくよりも、進出先国の市場機会やリスクを含めて比較してみて、どこに進出するかをきちんと検討しておくことが必要です。この時の海外進出先の判断は、事前の詳細なリサーチもあり、結果として間違っていなかったと思っています。

■海外進出先の選定。さまざまな角度から情報を集めることが、海外進出を成功させる鍵

国を選定する際のことを、もう少し掘り下げてみたいと思います。当時、飲食店の海外進出を支援していましたが、リサーチをするときに重視していたポイントは、以下の4つでした。

① 政治・経済・社会情勢
② 投資コスト(賃金、オフィスレンタル料、公共料金他)・物価・生計費
③ 産業・海外市場
・産業動向、生産(原材料・部品調達)
・販売(市場規模・市場特性・流通事情、輸出入状況、関税、規制等)
④ ビジネスパートナー(取引先)

私の場合は、現地に直接行き情報を集めるという手法を使っていましたが、日本から発信される情報も大事にしていました。同じ状況下であっても国や会社が違うだけで全く違う捉え方になることもあったからです。また信頼できる情報であるということが非常に重要になります。情報獲得手段としては、海外進出専門家へのヒアリングや、JETROやNNAの経済ビジネス情報(http://www.nna.jp/)なども活用し、他国との比較や、英語では理解が難しい法務や労務等の内容を日本語でプレゼンするための加工に用いていました。

椿氏もセミナーの中で、海外の戦略立案時における情報収集の重要性について述べています。
(椿氏)「この国では、どんな企業がどのように事業を伸ばしているのか。我が業界の競合は、他国ではどんな方法で成功をおさめているか。日本の常識だけでは戦えない新興国では、興味のアンテナを高くし、示唆を求めるのが効果的です。

後編へ続く

記事作成:永井 利樹

永井 利樹 プロフィール
飛び級で大検取得後、大手金融企業に勤務。その後、ITシステムを扱うベンチャー企業に入社し、法人営業を担当。
その後オーストラリアにて、中小企業の海外展開や、スタートアップ事業のアドバイザーなどをノマドとして経験。
2016年1月サーキュレーションに参画し、IT業界担当コンサルタントとして従事。

ノマドジャーナル編集部
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