今年10月21日に、ブリティッシュ・アメリカン・タバコレイノルズ・アメリカンの株式のうち57.8%を470億ドルで買収すると発表、さらに、AT&Tタイム・ワーナーの買収を検討しているなど、近年特に、超有名企業による大型のM&Aが相次いでいます。

もちろん、日本でもM&Aの件数は年々増加しており、経営者のみならず、ビジネスパーソン全員が、自社が買い手、売り手側になる可能性に備えて、一定の知識を持つべきでしょう。

そこで今回からは、M&Aの基本から学べる講座を開講いたします。
手法、留意点、さらにM&Aを成功させる方法まで、全11回に渡り、わかりやすく解説していきます。

会社を買うことは、時間を買うこと

Q:M&Aは何を目的に行われるのでしょうか。

A:まずはM&Aの意味について説明いたします。企業買収のことで、簡単にいうと、ある会社が、ある会社を取得することです。
そもそもM&A(エムアンドエー)とはMergers & Acquisitions の頭文字をとったもので、最近ではM&Aという用語も長いということでMA(エムエー)と呼ぶ人が増えてきました。
文字通りの意味だとMergers(合併)、Acquisitions(取得、獲得)となりますが、一般的には企業買収と訳されます。

会社は自然人ではないので目に見えません。そのため、ある会社を支配するには株式を取得する必要があります。たとえば、「A社がB社をM&Aした」というのはA社がB社の株式を取得し経営権を支配したことを意味します。株式を取得するという点では投資といってもいいでしょう。
また、次回のコラムでお話ししますが、事業だけを取得する事業譲渡や会社分割も広義のM&Aとして解釈されています。

M&Aをする目的は、ビジネスで必要なヒト・モノ・情報を手に入れることです。事業の規模を拡大したり新しい業界に参入したいときには、一から新たに会社を立ち上げるよりも資産やスピード面で効率が良いため、実務では「あの会社を買うことで時間が買える!」ともいわれます。

また、自社グループ内に回復する見込みのない不採算事業がある、事業承継する次世代の経営者がいない、などの場合はM&Aの売り手としてM&Aを実行することで会社や事業の継続が図れることもあります。

コスト面でのメリットは大きいが、「ヒト」の相性には要注意

Q:M&Aをするとどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。

A:買い手側、売り手側、それぞれにメリット・デメリットがあります。詳しくは以下の表をご覧ください。

【買い手側のメリット・デメリット】


【売り手側のメリット・デメリット】


M&Aにはメリットも大きいですが、違う会社が統合することから摩擦が生まれてしまうこともありますし、売り手側がリストラを求められたりと、デメリットもあります。こうしたデメリットを最小限にできるよう、どういった手法がベストなのか、細かい部分まできちんと話し合いながら進めていくようにしましょう。

次回からは、具体的な手法について解説していきます。

専門家:江黒崇史
大学卒業後、公認会計士として大手監査法人において製造業、小売業、IT企業を中心に多くの会計監査に従事。
2005年にハードウェアベンチャー企業の最高財務責任者(CFO)として、資本政策、株式公開業務、決算業務、人事業務に従事するとともに、株式上場業務を担当。
2005年より中堅監査法人に参画し、情報・通信企業、不動産業、製造業、サービス業の会計監査に従事。またM&Aにおける買収調査や企業価値評価業務、TOBやMBOの助言業務も多く担当。
2014年7月より独立し江黒公認会計士事務所を設立。
会計コンサル、経営コンサル、IPOコンサル、M&Aアドバイザリー業務の遂行に努める。
ノマドジャーナル編集部
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