みなさんは「敵対的M&A(または、敵対的買収)」という言葉をご存知でしょうか?
買収者が、買収対象会社の取締役会の同意を得ないで買収を仕掛けることで、10年前の2005年にライブドアがニッポン放送に対して敵対的M&Aを仕掛けたことは、強く記憶に残っているかと思います。

その後、敵対的M&Aをニュースで耳にすることは少なくなりましたが、世界では過去最高水準の件数に達しており(※)、将来的に日本でも、敵対的M&Aが増える可能性もあります。
※2014年に提案された敵対的買収の件数は25件で、総額2900億ドル(ディール・ロジック社調べ、引用元:http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM0901A_Z00C14A6000000/

自社の株が秘密裡に大量に買われていることを知った時点では、間に合わないこともあります。ぜひ、何も起こっていない今のうちに、対策を講じておきましょう。

敵対的M&Aを受け入れてしまえば、会社、従業員にとって最悪の結果を招く恐れも

Q:知らないうちにM&Aを仕掛けられてしまった場合には、どうしたらいいのでしょうか。

A: M&Aには、友好的M&Aと敵対的M&Aの2種類があります。前者であれば、お互いが成功のためにM&Aを実行していくことでしょう。しかし後者であれば、せっかくがんばって育ててきた会社や事業を他社に買収され、好き勝手に経営されてしまう恐れがあります。

そこで有効なのが、ライツプラン(新株予約権発行)や上場そのものを取りやめる非公開化といった防衛手段を講じることです。また、もしすでにM&Aをされてしまった場合でも、ホワイトナイトや増配策で、買収によるリスクを最小限に抑えることができます。
主な防衛策を、以下にまとめてみました。

No. 手法 内容
1   ライツプラン   既存の株主に有利な価格で株式を取得できる
  権利(ライツ)を付与し、買収者が登場した際には
  この権利を行使して、買収者の持株比率を下げる
2   黄金株   重要議案に対して拒否権を持つ特別な種類株式
3   非公開化   上場しているからこそ買収の脅威にあるため、
  非公開化を選択する
4   ホワイトナイト   敵対的買収を仕掛けられた際に、
  有効的な他社に自社の株を救って(引き取って)もらう
5   増配   買収を仕掛けられた際に、急遽、増配をすることで、
  自社の株式価値を高め、結果として市場株価が上昇し、
  買収者からの買収を困難にする
6   パックマン・
  ディフェンス
  敵対的買収を仕掛けられた際に、逆に買収を仕掛けること

自社の価値を高めることが、最高の防御になる

上記の他にも防衛策は数多くありますが、なんといっても自社の企業価値を常に向上させていくことが一番効果的です。自社の企業価値が右肩上がりで伸びていれば既存株主からの支援を受けられることはもちろん、買収価格が上がれば買収を企てる者もなかなか登場しません。

逆に、ビジネス市場が安定的で、自社の株価が割安かつキャッシュリッチで負債も少ない場合には、買収対象になりやすいです。

最大の防衛策としてはMBO(マネジメント・バイアウト:非公開化)をして株式に譲渡制限を付すことです。ただM&Aが怖いから非公開化する、というのは非常に残念なことと感じます。
常に自社の企業価値を常に向上させて、他社からのM&Aの脅威にさらされないことを目指していきましょう。

専門家:江黒崇史
大学卒業後、公認会計士として大手監査法人において製造業、小売業、IT企業を中心に多くの会計監査に従事。
2005年にハードウェアベンチャー企業の最高財務責任者(CFO)として、資本政策、株式公開業務、決算業務、人事業務に従事するとともに、株式上場業務を担当。
2005年より中堅監査法人に参画し、情報・通信企業、不動産業、製造業、サービス業の会計監査に従事。またM&Aにおける買収調査や企業価値評価業務、TOBやMBOの助言業務も多く担当。
2014年7月より独立し江黒公認会計士事務所を設立。
会計コンサル、経営コンサル、IPOコンサル、M&Aアドバイザリー業務の遂行に努める。
ノマドジャーナル編集部
専門家と1時間相談できるサービスOpen Researchを介して、企業の課題を手軽に解決します。業界リサーチから経営相談、新規事業のブレストまで幅広い形の事例を情報発信していきます。