“限られた時間の中で生産性高く働く”という意味で、仕事と家事育児を両立するワーキングマザーと、フリーランスという働き方は、実は好相性です。
私自身フリーランスのワーキングマザーですし、これまでインタビューしてきた方々も、メリット・デメリットをたくさん語ってくださいました。ここで一度、整理してご説明したいと思います。

メリット1「仕事をする時間と場所が自由」

忙しい毎日を過ごすワーキングマザーにとって、効率的な時間の使い方は生命線です。仕事に割り当てられる時間が限られているので、できるだけ無駄なく動くための工夫は数知れません。
例えば、お手洗いに行きたいと思った時。「お手洗いに向かう途中に営業部の○○さんの横を通るから、ついでにあの案件についてのメモを机に貼っておこう。お手洗いは空いている一番手前に入り、帰りに給湯室に寄ってお茶を淹れながら、今夜のお献立を考えよう。」などと考え、行動しています。極端な話に聞こえるかもしれませんが、多くのワーキングマザーがやっていることです。

 

ですがフリーランスは、何時から何時まではオフィスに居なくてはならない、というルールがある会社員とは異なり、働く時間と場所を選びません。
もちろん、案件によっては取引先に赴くこともありますが、家やカフェなどで仕事をすることがほとんど。通勤時間が発生しないので、往復2時間程度は自由になるのです。洗濯機を回して仕上がる間にメールチェックをし、干してから企画書にとりかかる、なんてことも可能。私もよく、料理を煮込んでいる間にルンバ(ロボット掃除機)を回しながら、原稿を書いています。

 

子どもは、まだ1歳8ヶ月。0歳児だった去年に比べれば、だいぶ体が丈夫になったとはいえ、突発的な病気は避けられません。一度発症したら、数日は保育園をお休みしなくてはなりません。
私個人は、病気の時くらいそばにいてあげたい、という主義です。でも、もし私が会社員だったら、「お熱が下がったら、もう保育園へ行ってもらわないと困る」と考えると思います。フリーランスになって家でも仕事ができる今は、「念のため、今日もお休みして様子を見よう。仕事は、お昼寝中または夜寝てからすればいい」と思うことができ、私自身も子どもも余裕が持てると感じています。
逆に、仕事と家事の境目をきっちりしたい人もいます。そういう人は、個人利用できる時間貸しのシェアオフィスを借りたりしているようですよ。

メリット2「やりたい仕事ができる」

会社員は、全体最適の中で仕事の割り振りが決まります。そのため、どうしても不本意な配置換えがあったり、苦手な業務がミッションになったり、忙しいのに兼務させられたり、といったことが発生してしまいます。

 

一方フリーランスは、自分で仕事を獲得するので、やりたい仕事だけをやることができます。興味のない仕事、報酬の低い仕事は、断ることができるのです。
また、自分の得意分野で勝負をしますから、経験を積むことでさらに磨かれ、能力を上げていくことができます。苦手な仕事は、そもそも依頼が来ません。

 

もちろん私も、最初から仕事を選ぶという贅沢ができたわけではありません。きちんと稼ぐために、やりたい仕事だけを選んでいるわけにはいかない場合もあります。でも、全て自分の意思で決めて選んでいるので、前向きに取り組むことができると感じています。

メリット3「付き合う相手を選べる」

上司と合わない、会社の方向性に共感できない、といった不満は、転職理由にも多く挙がっています。エン・ジャパン株式会社が2015年に1304名の女性を対象に行った、仕事のストレスについてのアンケートによれば、ストレス原因の1位が”上司との人間関係”、2位が”給与の低さ”、3位が”同僚・部下との人間関係”という結果になりました。いずれも40%以上のポイントを占めており、仕事のストレスの原因の多くが、人間関係や組織に起因していることを窺わせます。(http://corp.en-japan.com/newsrelease/2015/3042.html

 

私は、フリーランスになって、仕事のストレスがほぼなくなったと感じています。
会社員時代がストレスフルだったわけではありません。尊敬できる上司・同僚・後輩たちに囲まれ、やりがいのある仕事を任せてもらい、刺激的な日々を送っていたと感じています。この文章が世に出るから取り繕っているのではなく、本心です。
それでも、決められた人間関係の中で業務を推進する中で、時にやりづらさを抱えていたのだと気づかされました。

 

その点、フリーランスであれば、一緒に働く人や組織を選ぶことができます。
私の場合は、”大切にしたい理念や思いが共感できる”ことを基準に、一緒にお仕事させていただくかどうかを最終決定しています。キャリアコンサルタントという仕事の特性上、他人の人生の一部を扱いますから、理念が共感できないと厳しいのです。
仕事ですから、今でも「仕事の進め方が合わない」と感じる相手と働くことはあります。でも、オフィスで四六時中顔を合わせているわけではありませんし、プロジェクトによって相対する人が変わるので、閉塞感を抱えることもなく、あまり気になりません。

 

また、事前に業務内容と報酬を合意してから仕事が始まるので、納得できない評価によって報酬が下がることもありません。(こちらに契約違反行為があった場合は、話は別です。契約は、人として、社会人として、守るべき最低ラインなので、契約違反はほぼありえませんが。)フリーランスにとって最良の評価は、”次にまたお仕事をいただけること”なのです。

 

もしどうしても我慢できないことがあれば、次の契約を更新しなければ済むことです。このドライさを寂しいと感じることもありますが、限られた時間の中で働くことを考えると、余計なことに煩わされないので、気に入っています。

メリット4「業務量をコントロールできる」

業務量を自分でコントロールすることができるのも、ワーキングマザーにとっては大きな魅力だと思います。自分の決めたキャパシティを超えないようにすれば、子どもにしわ寄せが行くこともありません。
私は、キャリアコンサルタント・ライター・チアダンスインストラクターという3足のわらじをはいています。キャリアコンサルタント業が忙しいのは、採用や研修が増える2月~6月くらい。インストラクター業は、子どもたちの夏休み中が一番忙しい時期です。チアダンスの大会やイベントも多く開催されますし、サマースクールと称した短期集中テクニッククラスも行うからです。

 

一方、インフルエンザや胃腸炎などの病気が流行りやすい冬の時期は、子どもがいつ体調を崩すかわからないので、外出を伴う仕事を控え、在宅でできるライターの仕事を増やすようにしています。夫の繁忙期には、サポートに回れるよう、仕事量そのものを抑えることもあります。
当然、クライアントの要望や都合で業務量が一時的に増えることもあります。そういう時には、夫に協力してもらったり、実家の母を頼ったりして、きちんと責任を果たすようにしています。
このように、繁忙期の異なる仕事を組み合わせたり、家族の都合で業務を抑えたり増やしたりできる点も、フリーランスならではの魅力だと思います。

専門家:天田有美

慶應義塾大学文学部人間科学科卒業後、株式会社リクルート(現リクルートキャリア)へ入社。一貫してHR事業に携わる。2012年、フリーランスへ転身。
キャリアコンサルタントとしてカウンセリングを行うほか、研修講師・面接官などを務める。ライター、チアダンスインストラクターとしても活動中。