会社員、フリーランス、起業、副業など、実に多様になりつつある働き方。結婚や出産など、ライフイベントに左右されやすい女性にとって、柔軟な働き方ができるのは理想的ですよね。また、一定のキャリアを積むと、どうしても出てくるのが管理職への昇進の話。そんな時、あなたはどのような選択をしますか?

 

ライフイベントに左右されづらいキャリアを積むために、そして、ライフイベントで仕事が中断しても再び仕事を始めやすくするために。キャリアの分岐点で自身の市場価値をどうすれば高められるのか―これまでの調査や取材、私自身の経験も踏まえて、まとめてみました。

働き方を、自分で自由に選べる時代がやってくる

2012年、イギリスの経営学者リンダ・グラットン著の「ワーク・シフト」という本が出版され、大きな話題を呼びました。「グローバル化が進むビジネス環境において、誰と、どこで、どのように働くかは、主体的に選ぶ時代にきている」という主旨で、働き方の未来予想図について語られたものでした。

 

また、日本国内でもフリーランスとして働く人が1千万人を突破したことを受け、つい先日”プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会“という組織が誕生しました。経済産業省もフリーランス、アライアンスといった働き方に注目し、「『雇用関係によらない働き方』に関する勉強会」を開催し、意見交換の場を持つなどしています。

 

このように、世界的にも、日本国内でも、大きく注目を集めつつあるフリーランスという働き方。かつては、アナウンサーやライター、Webデザイナーなど、一部の職種に限った働き方でした。しかし現在では、営業、経営企画、マーケティング、広報、人事など、事務系総合職を中心に広がりつつあります。

 

「ワークライフバランスを意識した働き方をするには、キャリアを中断して、派遣で事務をするか、パートでレジ打ちするかしかない」と思っていませんか?それは一昔前までの話。今や、自分のこれまでのキャリアを生かしつつ、自由な働き方ができる時代が目の前まで来ているのです。

スキルの掛け合わせで、新しい可能性が見つかる

転職のほかにも、今後は独立(フリーランス)・起業・副業を含めた、4つの選択肢が並列で検討される時代になってくるのではないでしょうか。

終身雇用制の崩壊とともに一社でキャリアを終えることは減り、転職は、もはや当たり前の時代となりました。フリーランス人口も増え、国や自治体による起業家を支援する取り組みもなされています。また、副業を許可する企業は、ますます増えてきています。昨年、ロート製薬が副業を認める人事制度を導入したことは、話題になりましたね。会社員として収入は確保しつつ、やりたいことに挑戦できる副業は、起業や独立に比べてリスクが低いもの。起業や独立(本番)前の練習として副業に挑戦する人も、どんどん増えていくことでしょう。

 

ちなみに、仕事の肩書が複数ある人のことを”スラッシャー” (名刺に「プロデューサー/研究者/講師」など、「/(スラッシュ)」が入ることから生まれたもの)と呼びます。

実は、複数の名刺を持つ経営者は案外多く、会社員でも起業や副業を行うなど、仕事を複数持つ人はどんどん増えています。その理由の一つに、掛け合わせによる相乗効果が挙げられると思います。ある業務で得た知識や経験が、違う仕事でも活きてくるのです。

 

私の場合は、キャリアコンサルタント・ライター・チアインストラクターという3つの仕事を持っています。一見繋がりがないように思えるかもしれませんが、それぞれの業務で培われたポータブルスキルは、他の仕事でも大いに役立っているのです。

 

例えば、チアインストラクターを務める中で培った力の一つに、”わかりやすく伝える力“があります。教え子の最年少は4歳。集中できる時間もまだ短く、1時間先生の話を聞いて体を動かすには大変な年齢です。いかに噛み砕いて、テンポよくレッスンをするか、が非常に重要になります。同じ動作をしてもらうのにも、小学校高学年には「太ももの裏が伸びているのを意識してストレッチして」と言えば通じますが、4歳には「お腹を折って、太ももとお胸をギューッと近づけよう。伸ばしたお膝とおでこがゴッツンコしますよ」と、言わないと通じません。

 

このように噛み砕いて話す力は、キャリアコンサルタントとしても役立ちます。キャリアコンサルタントは、学生さんからリタイア後の方まで、幅広い年齢とキャリアを持つ方々とお会いします。働いた経験のない学生さんには、当然わかりやすい言葉で伝える必要があります。また、異業種・異職種への転職となると、社会人でもわからないことだらけです。未知の領域へ挑戦しようとしている人へ、不安を少しでも取り除けるよう、わかりやすい言葉で丁寧に伝える必要があるのです。

 

さらに、キャリアコンサルタントとして相手の立場に立ち、先を見据えて今どんな挑戦をすべきかを見極め、アドバイスする力は、年齢も得意領域も性格も異なるチアの教え子たちと対峙した時に助けとなってくれます。

私の経験はあくまで一例ですが、他の業務で培った力が生きれば、仕事の質は上がります。それは、個人にとっても組織にとっても、良いことなのです。

 

副業をしたり、複数の肩書を持ったりすることだけが、掛け合わせの要素ではありません。子育て、PTA活動、地域の活動など、仕事以外での取り組みを通じて得られた力も、もちろん掛け合わせの要素となります。むしろ、仕事ではない分、非合理的・非生産的な中での調整力や交渉力が身に付きますから、鍛えられやすい場と言えるかもしれませんね。

どんな働き方を選ぼうと、どんな仕事に就こうと、働き続けるためには、社会から求められる必要があります。当たり前のことではありますが、これは女性に限った話ではありません。しかし、現状子育てや介護などの担い手である女性にとって、柔軟な働き方の受け入れはより急務といえるでしょう。必要とされるために、自分の付加価値を高められる掛け合わせを見つけて、挑戦してみてください。

専門家:天田有美

慶應義塾大学文学部人間科学科卒業後、株式会社リクルート(現リクルートキャリア)へ入社。一貫してHR事業に携わる。2012年、フリーランスへ転身。
キャリアコンサルタントとしてカウンセリングを行うほか、研修講師・面接官などを務める。ライター、チアダンスインストラクターとしても活動中。