以下のグラフをご覧ください。OECD(経済協力開発機構)が調べた2015年1年間の国別平均労働時間の比較です。この平均労働時間は、1年間の実際の労働時間数の合計を、1年間の平均労働者数で割ったものです。

これによると、労働時間が一番短いのはドイツで、一番長いのがメキシコ、日本はこのグラフの真ん中より少し左あたり(黄色で表示)のところにあります。

日本の年間平均労働時間は、1,719時間となっています。これを「1日8時間労働・週5日勤務」で単純計算すると、1年間の労働時間は、8時間 x 5日 x 4週間 x 12カ月 = 1,920時間。この数字と1,719時間との差は、201時間。それを24時間で割ると8.375日となり、これが日本人の平均年間休日数(週休2日以外の年間休日数)ということになるでしょうか。これはあくまでも平均労働時間から単純計算で逆算したものですから、現状の反映とは言えません。

それでは、実際の年間休暇日数はどうなっているでしょうか。

法で定められた年次休暇日数

以下の表は、OECD が加盟国を対象に行った、法律で定められた年次休暇日数の比較調査結果から抜粋したものです。

これによると、日本には年に15日間の祝祭日のほかに、法律で認められた年次休暇が10日あり、合計で年間25日間の休みがあることになります。

法で定められた年次休暇日数(OECD調べ)


 

ほとんどのOECDとEU(欧州連合)諸国には、法律で定められた最低年次休暇があります。正確な日数は国ごとに異なりますが、これらほとんどの国では年間20日ほどの休暇が認められています。その日数に国の祝祭日を加えると、OECD加盟国(特に欧州諸国)には年間30~35日間の休暇があることになります。

日本や韓国には祝祭日が多いため、年次休暇は少なくても、合計の休暇日数は欧州諸国とほぼ同じくらいになっています。
病気休暇について言えば、一番手厚いのはオランダで、労働者は給与の70%を支給されながら、2年間まで休暇を取ることができるそうです。

米国は法で定められた年次休暇のない、先進諸国の中でも数少ない国の一つです。

法律で定められた年次休暇のない米国

ここでやはりどうしても気になるのが、先進国でありながら、法律で定められた年次休暇のない米国の事情でしょう。昨年9月11日の同時テロ追悼記念日の集会に、体の不調を押して出席した大統領候補者のクリントン氏を、米国メディアは「何百万もの米国人が毎日行っていることを大統領候補も行った」と報じました。体調不良でも出勤する米国人のマインドセットは「自分でなければ埒のあかない仕事がある」あるいは「被雇用者の自分が休んだら、周りはどう見るだろう」といったもの。米国には休暇を取り過ぎる被雇用者は、責任感が足りないと見なされる考え方があり、フロリダアトランティック大学のリー・アン・デリーグ准教授は「働き者であることは、米国人のコアだ」とも述べています。このような労働観は、日本人にも通じるところがありそうです。

1993年にビル・クリントン大統領が署名した育児介護休業法の下、この法律の対象労働者は仕事を失うことを恐れることなく、病気や新生児のために最高12週間まで休暇を取ることができるようになり、多くの企業は従業員の福利厚生の一環として、数日までの病気休暇を認めています。しかし何百万もの低賃金労働者には、出勤しなければその日の報酬はありません。

英国BBCが、米国人に「昨年何日休暇を取ったか」を紙に書いてもらったビデオでは、「0」と答えた人がたくさんいました。2015年に休暇をまったく取らなかった米国人は全体の40%。その理由は「仕事が心配で、休暇をとってもリラックスできないから。」その中で唯一「30」と書いた人は「実は僕はドイツ人なんだ。自分が休みの間は、同僚がサポートしてくれるから心配ない」と答えています。

米国で病後の療養や介護のために休暇を取り過ぎて解雇、または解雇すると脅された人は、成人の25%近くもいるとこの記事は伝えています。政府の対策が遅れる中、カリフォルニアやニューヨーク州では独自の法律を可決して、今では推定1,130万人の米国労働者がある程度の有給を手にしているようです。しかし世論調査は、未使用の休暇の率は常に高いことを示しています。このあたりは日本の現状と似ていそうです。

有給休暇を使い切るドイツ

有給を使い切ることに関して言えば、ドイツ企業で働く大半の人は、毎年30日間の有給を全部使いきるそうです。上記のビデオで、昨年取った休暇は「30」日と答えた人も例外ではありません。ドイツでは有給のほかにも、労働時間の超過部分に対して年に10日間前後の代休を取ることができます。

ドイツ人は、誰にも休暇を取る権利があるのは当たり前と考え、社員が交代で休暇を取り、残った同僚が業務をカバーするのは当然だと考えています。休暇をまとめて取っても、職場で問題になることはありません。日本や米国労働者のように、休暇中にもメールのチェックを怠らないような労働観は見られません。

有給と病休も厳密に区別されています。日本のように最高90日まで病欠中も給料が支払われる制度があるところでも、体裁のために病欠ではなく、有休を取るといったこともありません。ドイツ人にとって有給は健康に過ごすための休暇で、病休とは違ったものなのです。

日本では現行の休日出勤に関しても、ドイツでは簡単に許可が下りないような制度が確立されています。

まとめ

休暇の取り方一つにも、国民性の違いや労働への考え方がよく表れているのではないでしょうか。それは国の法律にも反映しています。

会社に対する忠誠心が依然と強い日本人が、周囲に気兼ねをしながら休暇を取り、休暇先でも意識が仕事から離れられないところは、意外と米国人と共通しています。その一方で、一つの職場に縛られず、キャリアを伸ばすための転職の多い西洋社会にあるドイツと米国の間で、労働観がこれだけ違うのはなかなか興味深いと言えるでしょう。

記事制作/シャヴィット・コハヴ (Shavit Kokhav)

ノマドジャーナル編集部
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