日ごろ私たちには、アフリカ経済を気にかける機会はあまりないのではないでしょうか。そこで今回は、私たちが見落としがちなアフリカに焦点を当てて見たいと思います。

アフリカは資源の豊富な大陸です。一方で、現実にアフリカ大陸にある54カ国は依然として貧しい状態です。アフリカの貧困の根底には、地域紛争、独裁政権、20世紀のアフリカ諸国の独立に伴った経済、政治、社会的混乱、感染症の蔓延、国民の低水準なリテラシーや不得手な外交などがあります。しかしこの大陸のいくつかの国では近年経済的な発展が見られるようになっており、2000年代以降はアフリカの経済ブームの黎明期と呼べそうです。

現在アフリカ最大の経済大国は、南アフリカとナイジェリア。赤道ギニアは、アフリカで最大の一人当たりのGDPをもっています。石油の豊富なアルジェリア、リビア、ガボンなどのほか、鉱物が豊富なボツワナも経済のトップに浮上しています。その一方、世界で最も豊かな国になり得るジンバブエやコンゴは、広範囲の治的腐敗、戦争、頭脳の流出のために、世界で最も貧しい状態のままです。

近年のアフリカの成長は、商品、サービス、製造業の売上の増加によるもので、特にサブサハラアフリカ(Sub-Saharan Africa、サハラ砂漠より南のアラブ諸国を除いた地域)では、2050年にはGDPが29兆ドルに達するだろうと予想されています。
Brexit(英国の欧州連合からの脱退)や、内向化を増す米国の政策の影響で経済の激動が予想される2017年にも、一部のアフリカ諸国は持続した成長を見せています。

経済発展の鍵は多様化

世界経済フォーラム(World Economic Forum)のコンサルタント、リチャード・アティアス氏は「経済を多様化させる国が成功する」と述べており、今後実質的に成長できる国とは、再生可能エネルギーだけに焦点を当てるのではなく、工業化と製造に向けても動き出している国ということになります。製造業が原材料を地元で処理するようになれば、2017年が〝Made in Africa″ 製品の年になることもあり得るでしょう。

アフリカ経済2大国の停滞

アフリカの2経済大国であるナイジェリアと南アフリカは、それぞれ政治不安やスキャンダルで、このところ評判を落としています。

アフリカで最も人口の多い国ナイジェリアが、アフリカ最大の経済大国として浮上したのはわずか3年前のことですが、石油の値下がりと、石油生産地域への過激派の攻撃で、昨年くみ上げられた原油量は過去30年間で最低となっています。また政府の不良債権管理や、ブハリ大統領政権のビジネス環境の改善への妨げで、同国は世界銀行Doing Business 2017レポートでは190カ国中169位に沈み込んでいます。

ナイジェリアに代わって、昨年アフリカ最大の石油生産国となったアンゴラも、急激なインフレ、通貨の急落、不安定な原油価格に今後悩まされることが予想されます。2017年には、採掘産業依存の経済は成長を遂げられそうにありません。
ナイジェリアと南アフリカの停滞は、アフリカのフランス語圏諸国に台頭の機会を与えそうです。現在投資家が注目しているアフリカ経済のいくつかをここにご紹介してみましょう。

コートジボワール

コートジボワールは多様化した経済で、2016年の成長率が世界で2番目に高い8.5%と、アフリカの新しい経済大国になる兆しを見せています。IMF(国際通貨基金)の地域経済見通しでは、この先数年間、コートジボワールのGDPは年間約8%の成長を続けると見込まれています。(サブサハラアフリカの中央値は4.5%です。)

3,000人以上が死亡した2011年の政治危機の後、コートジボワールは生まれ変わったことを世界にアピールするのに奮闘し、2015年のウアッタラ大統領の再選と4年間の国家開発計画で投資家への信頼を回復しています。この開発計画は2016年から2020年まで、グラントとクレジットで154億ドル相当の外国投資を得ています。

セネガル

ブレイズ・ディアグ新国際空港と中央ダカール間の高速列車は、この国の発展の象徴のようです。セネガルのGDPは2015年に6.5%増え、世界銀行によると、アフリカで2番目に速い経済成長を遂げています。経済学者たちはこの傾向が2017年も続くだろうと見ています。
2014年に開始された新興セネガル計画には、インフラと輸送、エネルギー、水と衛生開発に至るまでのプロジェクトがカバーされています。

トーゴ

ガーナとベナンの間の小国トーゴは、シンガポールやドバイの経済的成功をモデル化しています。同国はGDPの成長を、アフリカ中西部の天然の深海港であるロメ港の開発などのインフラ整備事業に費やしています。
トーゴは事業主への制限を緩和し、事業を立ち上げるまでの時間を2012年の38日から、2014・2015年には10日間に短縮しています。腐敗防止機関も設立され、国際的な透明性評価が向上しています。

ベナン

ベナンの経済成長は一貫していますが、近年は綿花生産の停滞でわずかに減少。それでも過去10年間の政治の安定と新たな経済計画が、この国に経済成長をもたらすと見られています。

昨年ビジネス界から政治家になったタロン大統領の下、政府は綿花産業の改革と経済の多様化に取り組んでいます。港湾への投資、電力網の強化、電気通信産業の開発は持続的な成長につながる可能性があります。

モロッコ

アフリカ最大の風力発電所の本拠地であるモロッコは、再生可能エネルギーの世界的リーダーとしての役割を担い、2020年までに再生可能エネルギー(主に日光と風力)を利用して必要なエネルギーの40%以上を満たす計画を軌道に乗せています。

サハラ砂漠に広がるタルファヤ複合体は、グリーンエネルギーの世界的リーダーになろうとする国王モハメド6世の野望を具現化しています。世界最大のソーラーファームの構築もあります。
モハメド6世は、モロッコをアフリカ商業の玄関口および欧州への架け橋にする目的で、外交政策を最優先課題にしています。

まとめ

アフリカでのイノベーションの可能性について、ウォールストリートジャーナルのインタビューに応えた汎アフリカ投資グループMara Groupの創設者アシーシュ・タッカー氏は、昨年アフリカ諸国の政府高官に配られたアフリカ連合のパスポートを、経済改革への望ましい一歩だと評価しています。現在、英米の旅券を持つ人はアフリカ大陸を自由に行き来できるのに対して、アフリカ市民はビザを獲得することが必要です。このパスポートはたしかにアフリカ経済の発達に貢献すべきものですが、それが市民の手に渡るにはまだ数年かかるもようです。

アフリカ諸国は2017年にも多くの課題に直面していますが、同時に現在のアフリカ経済は、労働力の増加、都市化の推進、技術の進歩など肯定的な要素をたくさん含んでいます。

この先アフリカが現在の課題を克服して成功するためには、エネルギーインフラに焦点を当てると同時に経済の多様化に努め、産業化を推進していくことが必要です。そのための市民教育ももちろん欠かすことはできません。

記事制作/シャヴィット・コハヴ (Shavit Kokhav)

ノマドジャーナル編集部
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