アフリカは、人口年齢が世界で最も若い大陸です。老齢化の進む日本からはうらやましい限りですが、アフリカの若者の失業率の高さは依然として大きな問題です。国連の専門機関、国際労働機関(ILO)の「世界の雇用と社会的展望2016年:青年の動向」 によると、北アフリカでは引き続き高い失業率が続く一方、サハラ砂漠以南のサブサハラアフリカでは、貧困線以下で労働する、ワーキングプアの若者が増加することが予想されています。

ハイテクのフロンティア、ルワンダ

今回は中部アフリカの小国ルワンダを取り上げて、若い労働力を活用するためにどのような開発が行われているのか見てみましょう。

ルワンダはアフリカ大陸の中央、赤道直下に位置する面積2万6000平方km、日本の近畿地方ほどの大きさの、アフリカで最も人口密度の高い国です。そして人口のほぼ6割が24歳以下です。

現在アフリカには、エジプト、ケニア、南アフリカ、ナイジェリアのビジネスの4拠点がありますが、ルワンダは天然資源を持たないため、これらの経済ハブとつながるためには、技術を開発しなければなりません。

たとえば、ルワンダの病院には血液バンクを維持する費用も電力もなく、農村部で患者への緊急輸血が必要になれば、中央の発送センターからジープで運ばれる血液を5時間も待たなければならなくなります。ジープは険しい泥道や、谷間に木材を渡した臨時の橋を通るため、雨期には激しい雨に流されて、配送はほとんど不可能です。

しかしルワンダ西部にはZiplineという、医師がテキストメッセージを送ると、20分以内に無人機が血液を搭載した赤いパッケージを病院の外に白いパラシュートで落としていってくれる画期的なアプリケーションが開発されています。

仕事を作り出すこと

ルワンダにもアフリカの発展途上国特有の様々な困難があります。しかしこの国が他の国と異なるのは、政府がこれらの問題を解決しようとする技術イニシアチブのためのインフラを支援していることです。2015年末までにルワンダ政府は、4,169の中小ICT(情報通信技術)企業を登録しています。周辺国では事業免許の申請に数カ月かかったり、賄賂の横行する中、ルワンダ政府は新起業家が事業免許の申請をわずか3時間で済ませられるよう配慮しています。

農業などの低技術レベルの革新も重視され、高校生全員が卒業前に「起業家クラス」を修了することになっています。

失業率を下げる最善の方法は、仕事を作り出すこと。若者が起業すれば、他の者を雇うことができるだろうという考えの下、ルワンダ政府は勝者に会社を始める資金を与えるスタートアップ・コンテストを行い、投資家探しも後押ししています。

ベンチャーキャピタル不足への対策

ハイテク投資家が頻繁に言及する深刻な課題の1つは、新興企業へのベンチャーキャピタルの不足です。その対策として、ルワンダ・イノベーションファンドと呼ばれる1億ドルのベンチャー投資設備が用意され、 ルワンダ政府が30%の資金を調達、民間の国際ベンチャーキャピタリストが残りの資金を投入しています。

さらにルワンダ政府は国際的な技術者の雇用を促進するため、従来のビジネスビザよりも入手しやすい特別ビザを、情報技術関係の起業家に提供しています。

周囲の理解の遅れ

このように国が若者へ起業教育を施し、起業家に有利な制度を次々導入しても、課題はまだあります。ハイテク先進国ならば、「今〇〇のアプリを開発している」と言えば、「大いにやれ」と言われるところが、人口の9割が農業に携わる環境では、若者がハイテクで「無形の」製品を扱っていることは周囲にはなかなか理解されません。

ルワンダの経済的な可能性

ルワンダ自体は小国ですが、アフリカの他の地域には巨大な市場があります。アフリカで事業を始めたい国や人にとって、ルワンダは事業本部を構えるのに最適な場所と言えます。ルワンダは近隣諸国よりも安全かつ容易に事業を行うことができるため、国際企業や非政府組織に人気があります。 過去15年間GDPは年率8%の伸びを続けています。

ルワンダの今後

技術イニシアチブへの政府の積極的な関与にもかかわらず、ルワンダにはまだ多くのハードルが残っています。 国は光ファイバー高速インターネットアクセスを全国的に実現するためのインフラを整備していますが、 現在インターネットアクセスは断続的で遅いと言われています。インフラが整っていても、コンピュータとインターネット接続は、通常のルワンダ人には非常に高価です。携帯電話を持っているルワンダ人は約7割。しかし、インターネットにアクセスできるのはわずか2割です。

まとめ

サブサハラアフリカは、世界で最も若く成長率の早い人口をかかえた地域です。この地域の農村人口は2050年までに1.5億人に増加すると推定されます。

2000年からの8年間にアフリカで生成された7,400万人分の仕事の約3分の1は、24歳までの若者向けのものでした。しかし毎年労働市場に参入する1千万~1,200万人の若者を雇用するには、仕事はまだまだ不足しています。

特に農村部の若者には、雇用の機会を掴むためのスキルや知識の不足が見られます。東アフリカの農業は経済的に重要な成長しつつある分野で、持続可能な雇用と収入の機会を創出する可能性を秘めています。農業雇用をより魅力的なものにすれば、活力を持った若者を取り入れることは可能でしょう。

また若者に十分なスキルと自信をつければ、ルワンダの例のように起業を促進して、仕事を作り出すこともできます。政府が率先して経済改革に取り組むルワンダの例は、非常に好ましいものと言えるでしょう。

記事制作/シャヴィット・コハヴ (Shavit Kokhav)

ノマドジャーナル編集部
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