以下の地図は、アジアの労働人口の2つの傾向を表したものです。貧しく若い南アジアと東南アジア諸国は労働者数が過剰で不完全雇用に悩み、北部の裕福で高齢化した国々は、労働力を強化するためにより多くの人々を必要としています。

(国連Taiwan National Development Councilによる)
2016年の依存率を維持するために、2030年までに必要な生産年齢者数
赤色=移民を必要とする国、緑色=労働者数が過剰な国
(濃い色から順に現生産年齢者数に対する比率が30%以上、20~30%、10~20%、0~10%)

アジアの労働人口の理想と現実

労働人口のシェアを一定に保つためには、東アジアは2030年までに15歳から64歳の労働者を2億7500万人、東南アジアは6百万人誘致しなければなりません。韓国、中国、台湾、日本、タイ、シンガポール、マレーシア、ベトナムでは労働者がもっと必要ですが、ミャンマー、インドネシア、フィリピンなどは労働者数が過剰です。南アジアには1億3400万人の労働者を削減する余裕があり、インドは依存人口比率を悪化させることなく、8千万人の労働者を外国へ送り出すことができます。

理論的には、何百万人もの若年労働者がアジアの北方と東方へ移ればよいということになります。それによって受け入れ国は外国人労働者の労働の恩恵を受け、労働者の祖国は送金で潤い、最終的には多くの出稼ぎ労働者がスキルをもって帰国するという利益を得ることもできるのです。

しかし現実には移民労働者への制限はどこでも厳しく、移民を食い止めようという政策がアジアの各地でとられています。

中国の事情

上海の繁華街で中国の中産階級に奉仕するフィリピン人労働者を斡旋する業者たち。このような労働者の斡旋は不法ですが、何でも言われたことを正確にこなしてくれるフィリピン人労働者は、中国では人気の的です。香港のフィリピン領事館は、20万人以上のフィリピン人が中国でヘルパーとして働き、月額5000元(728ドル=約8万円)を稼いでいると推定しています。罰金は多額でも、法的トラブルには斡旋業者が対応してくれるので心強く、罰金が科せられることはまれです。

中国は依然、労働力の純輸出国の座を保ってはいます。しかしこのバランスは急速にシフトしつつあります。過去30年間に1億5千万人の農村住民を都市へ移動させ、労働力の需要を満たしてきたこの国も、人口の高齢化で外国人労働者に頼らざるを得なくなっています。南部では毎春5万人のベトナム人がサトウキビの収穫を助けるために、国境を越えて入国しています。

2015年には地方政府が、ベトナム人労働者を都市の工場へ導入するプログラムも開始されました。

この先の30年間に中国の生産年齢人口は1億8千万人縮小されると見込まれています。これへの中国の対応が、アジアの労働力の移動パターンに大きく影響を与えるのは確実です。

タイ

タイは近隣のミャンマー、カンボジア、ラオスからの約500万人の出稼ぎ労働者を抱えています。これらの労働者の多くもビザなしです。3年前の不法労働に関する噂の取り締まりで、20万人のカンボジア人が国外へ逃れました。以来建設業界が弱体し、タイ政府は恩赦を設けて労働者に一時的な書類を整えさせる手続きを始めましたが、このプロセスには時間がかかり、高価でもあることから、何百万人もの外国人労働者が違法や反合法的に働き続けています。

シンガポール

シンガポールでは外国人労働者が労働人口の約4割を占めています。外国人の労働が国内賃金を下げることを防ぐために、雇用者は雇う外国人一人一人について課徴金を支払わなければなりません。

韓国

韓国は2003年に、貧しい国からの労働者を期限付き(最長4年10カ月まで)で雇う割当制度を小規模製造業に導入しました。労働者の滞在が長引かないように、帰国費用は事前に徴収されています。雇用者はまた、労働者が出国する際に支払う部分給与も差し引いています。労働者は出国手続き完了後にそれを受け取るのです。これらの期間限定労働者は、現在韓国で働く96万2千人の外国人の4分の1(労働力の3.5%)程度を占めています。

日本

日本は資本を輸出して、労働力を輸入する政策をとっています。日本製品を製造する工場を東南アジア全体に施設して、外国人労働者を雇っています。しかしこの方法には、国内の医療や介護など高齢化社会に需要のある非貿易サービスには役立たないという限界があります。日本企業はベトナムで自動車を製造することはできても、高齢者をベトナムへ送ることはできないからです。

香港

香港は外国人看護師、乳母やメイドに国境を開いています。2015年末までに、7.3世帯に一人に当たる、34万人の外国人ヘルパーが就労しています。その半数以上はフィリピンから、残りの44%はインドネシアからの労働者です。雇用者は労働者の食費、香港までの旅費と少なくともHK $ 4310(556ドル=約6万1000円)の月額賃金を支払わねばなりません。これらの労働者は、香港人が最低賃金で週60時間働いた時の賃金より、多少少なめの賃金を受け取っています。

2000年代半ばには、大学学位を持つ香港の既婚の母親の半数以上が外国人メイドを雇うようになりました。これらの外国人メイドは、地元女性の無償の家事労働と取り替わり、香港女性は家の外の有給雇用を得ることができるようになっています。

まとめ

米国の研究では、移民の流入は子育てコストを下げ、学位を持つ地元女性の出生率を多少高めていることがわかっています。この結果からは、移民は必要な国へ労働力を与え、地元女性が家の外の仕事に就き、明日の労働力も養えるという三重の利点をアジアの高齢化社会にもたらしていると言えます。こうしてみると、アジアの多くの場所でこれらの利点が十分に活かされていないのは実に残念なことです。

アジアの人口は、世界人口のほぼ半数。故国を離れたアジア人の約3分の1はアジアの別の場所に移住しており、そのうちの3分の2が、南アジア人は南アジアに、東アジア人は東アジアにというように出身国と同じ地域に留まっています。アジア内の収入と人口年齢には地域によって大きなギャップがあるので、労働人口を必要としている地域、若い人口を必要としている地域へ、移民がこの先移動していくことが理想的です。

経済的な利点があるとはいえ、移民の受け入れはそう簡単ではありませんが、日本を含めた高齢化の進む国々がこの先対応を迫られるのは必至です。

参考記事:
http://www.economist.com/news/asia/21716584-there-obvious-solution-asias-looming-labour-shortage

記事制作/シャヴィット・コハヴ (Shavit Kokhav)

ノマドジャーナル編集部
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