アロマテラピーや石鹸づくりなど、「好きを仕事に」している末吉さん。大きな壁が立ちふさがっても、自らの意思と力で人生を切り開いていく姿は、女性にとっては憧れであり、勇気づけてくれる存在でもあります。

 

後編では、ビジネスをすることの喜び、そして仕事やプライベートで大切にしていることを、お聞きしました。

会社員ではなかなか味わえない。自分でビジネスをしているからこその感動がある

Q:サロネーゼとして活動していたところから、本格的なビジネスへと転換されたきっかけを教えてください。

末吉さん(以下、末吉):

福岡から始まり横浜で教室を主宰し、来年で10年になります。今から4~5年前、子どもが中学に入るタイミングで踏み切りました。
実は当時、会社員に戻るか、教室を続けていくか、迷っていたんです。それまでも趣味ではなく仕事のつもりでやっていましたが、収入と時間が見合っていなかったんです。経済的なこと、将来のことを見据え、悩みました。

これは周囲には言っていなかったことなのですが、そのタイミングで、生徒さんからお手紙をいただいたんです。「先生のおかげで人生が変わりました」という内容で、便箋3枚くらいびっしり思いが綴られたお手紙で、読み進むうちに、泣けてきてしまって。会社員に戻れば、収入は安定するかもしれない。でも、こんなに感動させてもらえること、自分がやってきたことに対するフィードバックを直接もらえて、やりがいを感じられることは、他にはないかもしれないと思いました。それで、このサロンをしっかりビジネス化して、やりがいある仕事にしていこうと心に決めました。

 

Q:ビジネス化すると決めた、というのは、具体的に今までと何を変えたんですか?

末吉:

やっていることは何も変えていません。自分の意識のスイッチを変えただけ。そうすると、見るもの・考えること・集まる情報がまるっきり変わりました。それまでは目の前にあった情報も、目に入っていなかったんですね。経営・起業・ビジネスに関わる本などを手に取るようになり、起業しようとしている人とのお付き合いが増え、行くところも変わりました。

 

すると、必要なビジネス情報が入ってくるようになりました。商標登録をどうすればいいか、法人化するには、といったことも、かつては「遠い世界」「一部の人がすること」と感じていました。ですが、とても身近になり、「私にもできそう」と思えるようになったんです。

自分の心や身体を観察することで、本当に大切にしたいことに気づくことができる

Q:ご自身の思いが「伝わっている」と実感するのは、どんな瞬間ですか?

末吉:

ここで学んだり得たりしたことを、家で実践し、効果があったと報告してくれる時ですね。私は、ただ石鹸のレシピやその作り方を伝えているわけではありません。相手を観察し、心身の状態をよく知ることに一番重きを置いています。

 

例えば、息子さんに石鹸を作ろうと思った時、「いつもは乾燥気味なのに、最近油っぽいな。じゃあすっきりする石鹸にしてあげよう」「この香りが好きだっていってたな」と考え、最適なレシピを組む、という感じです。相手を思いやる気持ちに知識を掛け合わせ、石鹸という形に変えていくんです。それがコミュニケーションのきっかけにもなります。「思いを込めた石鹸を使った息子がうれしそうな顔をしていて、幸せな気持ちになれた」といった話を聞くと、私もすごくうれしいですね。

 

Q:家族や大切な人の身も心もしっかり観察するって、実践するのは難しいですよね。

末吉:

石鹸レッスンを1つの例にとると、重要なのは身近なもので作れる「香り」と「肌あたりの好み」です。レッスンでは、ただ単に「いい香り」「好き・嫌い」「肌にいい」で終わらせるのではなく、そこから感じたものをシェアしあっています。感じようと意識を向けることで、普段目に入らなかったことに、だんだん目が行くようになる、と生徒さんも言ってくれています。五感を使って相手を観察するには、まずは自分が安定していることが大切です。

このアトリエに来ると、他のことを忘れて作業に没頭したり、自分のことを顧みたりする時間にしてもらえているかな、と思います。帰宅後も、「じゃあ今日は5分時間を作って、自分のために美味しいお茶を淹れよう」と実行できたり。時間ができたらやりたかったことをやろう、ではなくて、先にその時間を優先してしまうんです。そうすると、穏やかなモードを作り出せ、やるべきことへの活力が湧くと思います。

 

Q:最後に、今後のことについて教えてください。

末吉:

恋する石けん®のアイデンティティーとなる石けんを販売したいと考えています。
また、理念を伝える仲間を増やすという意味で、生徒さんが自分でお教室を持つことを支援していきたいです。”恋する石けん”というコースについては、私が直接教えるのではなく、生徒さんのお教室に人が集まるよう支援する側に回りたいと考えています。講座内容は同じですが、その人ならではの個性を引き出し、付加価値をつけるお手伝いをしたいんです。私一人では伝えられる範囲や人数も限られますが、仲間が増えれば、輪がどんどん広がりますから。どう整えるかは、現在模索中です。

 

また法人化することで、新たなチャレンジも可能になります。オリジナルの講座を展開してきたので、この教室ではアロマテラピーアドバイザーの資格までしか取れないんです。これまで、その上のアロマ資格を希望する方は、さらに大手スクールに通って資格取得されていました。今後は、ここで取れるように支援していきたいですね。

プロフィール:暮らしハーバルアドバイザー・末吉 真由美さん

外資系化粧品会社の品質管理部にて製造業責任技術者として従事。育児と夫の転勤により退職。
8年のブランク後、興味があって勉強を始めたアロマで資格を取得し、
転居先の福岡でアロマテラピー&ハーブ講師活動を始める。
アトリエfaire ma vie(フェールマヴィ)を主宰、
薬用植物の美容・健康成分をいかしたライフスタイルを広めている。
HP:http://fairemavie.com
ブログ:http://kurashi-aroma.com

専門家:天田有美

慶應義塾大学文学部人間科学科卒業後、株式会社リクルート(現リクルートキャリア)へ入社。一貫してHR事業に携わる。2012年、フリーランスへ転身。
キャリアコンサルタントとしてカウンセリングを行うほか、研修講師・面接官などを務める。ライター、チアダンスインストラクターとしても活動中。