あなたは、ビジネスパーソンとしての自分の強みを一言で言えますか? 転職経験がある人や、会社で上司や同僚と常にスキルアップについての話をしている人は言えるかもしれませんね。ですが、日々の業務に追われてなかなか言語化できていない、という人も意外と多いのではないでしょうか。

 

そこで本連載では、フリーランスキャリアコンサルタントである筆者が、自分の強みの整理とアピールの仕方についてお話していきたいと思います。

 

強みを整理する方法はたくさんあります。
1.職務経歴書を書く
2.上司や同僚に聞く
3.キャリアコンサルタントと話す

などが代表的な方法でしょう。

 

何やら、懐かしい感じがしませんか? そうです、新卒で就職活動をした時の”自己分析”と手法はほぼ同じ。かつては、自分史を書いたり、ゼミの先輩やサークル仲間に聞いたり、就職課に相談したりしていたのではないでしょうか。社会人経験のない学生時代は、学生時代に頑張ったことを振り返ってアピール材料にしていたと思いますが、ビジネスパーソンとなった今は、仕事での経験がそのままアピール材料となります。

 

上記手法の中でオススメなのは、まずは職務経歴書を書いてみることです。転職の予定の有無は関係ありません。目的は、自分がこれまでしてきた仕事を、客観的にまとめてみること、です。一度書いておけば、実際に転職する時に使えますし、上司とのキャリア面談や査定面談の時、あるいはフリーランスとして仕事を取りに行く時に、自分をアピールする材料を揃えておけますよ。

やってきた仕事から得たもの=あなたの強み

職務経歴書の書き方は、大きく二つあります。一つは編年体式といって、その時々の業務を時系列に並べるもの。経歴がわかりやすいのがメリットです。もう一つはキャリア式といって、経験分野ごとにまとめて書くもの。担当してきた業務がはっきりしているエンジニア・スペシャリストに向いています。強みの整理を目的とする際には、編年体式が書きやすいと思います。

 

職務経歴書を書くときのポイントは、下記の通りです。
1.できるものは数値化する
2.どんな環境でどんな人を相手に仕事していたのか
3.その経験から何を得たのかをまとめる

 

それでは、1つずつ具体的に見て行きましょう。

1.できるものは数値化する

過去から順に自分の担当業務を並べてみましょう。そして、数値化できるものはすべてしてみてください。会社の人数規模、資本金、プロジェクトの人数規模、達成目標と達成率(売上額、動員人数、PV数、工数削減数など)、予算規模などです。自分のしてきたことを客観的に数値化して眺めてみると、「意外と大きな仕事をしてきたな」「こんなにたくさんの人巻き込んできたんだな」と実感することができますよ。もちろん、職務経歴書として提出した時も、相手に伝わりやすいです。

2.どんな環境で、どんな人を相手に仕事していたのか

置かれていた環境はどんなだったか、どんな人を相手に仕事をしてきたのか、具体的に書いてみましょう。会社の中でのプロジェクトの位置づけ、クライアントの業界や会社規模・部署やポジションについてなどです。自分が力を発揮しやすい環境や相手が誰なのか、逆に苦手な環境や相手は誰なのかが、きっとわかると思います。
この時に一緒に思い出してほしいのは、楽しかった瞬間・苦しかった瞬間について。楽しかったと思える瞬間は、自分が強みを発揮できていた可能性が高いからです。

3.その経験から何を得たのかをまとめる

一番大切なのは、ここです。例え同じ経験をしても、そこから得る経験則や教訓は、人それぞれ違うもの。学んだこと、身に付けた力、以後取り入れるようになった考え方や手法について、思い起こして整理してみてください。成功体験から学ぶことももちろんありますが、失敗体験から学ぶことの方が多く、その後の行動に影響を与えたり、教訓が心に深く刻まれたりするものです。失敗体験についても、しっかり振り返っておきましょう。

 

ここまでできたら、自分の強みが見えてくると思いますので、言語化してみます。”○○力”という風に一言で言えるとわかりやすいですね。うまく言葉にできない、という方は、経済産業省が定める社会人基礎力(参考URL http://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/)を参考にしてみるのも良いかもしれません。専門知識とは別に、社会人として身に付けておいてほしいと多くの企業が望んでいる12の能力要素が言語化されていますので、ヒントになると思います。

自分の「強み」と企業から「求められていること」をマッチングさせる

言語化できたら、特にアピールしたいものについて5~7個くらいピックアップしておきましょう。実際に職務経歴書を提出する際には、相手が求めている能力が自分にあることをアピールしなくてはいけないので、相手が求めている要件の中で、自分にある能力を3つほど書くと良いと思います。

 

例えば、筆者が企業の面接官としての業務を請け負う場合であれば、
・傾聴力
・良い所を引き出す質問力
・チーム力
などをアピールします。

 

私は、キャリアコンサルタントとして、傾聴する訓練を受けてきています。
また、これまで新卒採用に関わることが多く、緊張したり、ビジネス向けの話し方ができなかったりして、本領を発揮できない学生をたくさん見て来ました。限られた時間の中で、彼らの良い所を最大限に引き出すために、あの手この手でいろんな角度からボールを投げてみることができるのも、自分の強みかなと思います。

 

加えて、面接官の仕事は、その会社の人事の一員として動くものです。たいてい、採用チームが組まれ、設計・オペレーション・管理を会社の人がやり、面接官は業務委託で複数の会社・人が請け負っている、というスタイルになっています。そのため、フリーランスでも組織の中でチームワーク良く働ける人かどうか、という点を気にする人も多いのです。会社員時代にチームリーダーとしてメンバーを率いた経験や、フリーランスとして面接官を請け負ってきた経験などから、チームワークを大切に働ける人間だということを理解してもらえるよう、努力しています。

 

もちろん、私よりすごい人はたくさんいらっしゃいます。5分話しただけで心の鎧を全部脱ぎたくなるような傾聴力の持ち主もいますし、人事一筋20年というような方の質問力には叶いません。でも、自分よりすごい人たちと比べて「私なんて・・・」と思っていたら、仕事は取れません。自分として、多少は人より優れていると思える能力をしっかり認めてあげること。一つ一つの能力については、極めた人には劣るかもしれないけれど、複数の強みが掛け合わされば、その人のオリジナリティです。自分ならではの強みのラインナップに自信を持つこと。この二つが大切だと、私は思っています。

 

これとは逆に意外と多いのは、自分の強みを一方的にアピールする人。「この業界・この会社・この職種・この仕事ならば、こういう力が求められるはず。」と想像力を働かせたり、実際に見聞きして、相手が求めていることと自分の能力のラインナップの中の接点を見出してアピールしなくては、相手には響きません。経験したことのある仕事ならば別ですが、未経験だったり、少し背伸びして挑戦しようとしている場合は、特に気を付けてみてくださいね。

専門家:天田有美

慶應義塾大学文学部人間科学科卒業後、株式会社リクルート(現リクルートキャリア)へ入社。一貫してHR事業に携わる。2012年、フリーランスへ転身。
キャリアコンサルタントとしてカウンセリングを行うほか、研修講師・面接官などを務める。ライター、チアダンスインストラクターとしても活動中。