前回は準備編(1)として、法律上の手続きや営業方法などについて、お話いたしました。ここまでで、個人事業主として登録して仕事を獲得する、というところまではクリアしていますが、やはり仕事をいただいてからが成功の分かれ目となります。
特に注意が必要なのが、スケジュール管理です。複数の仕事を並行して進めているため、抜け漏れや間違いがないよう、慎重に進めなくてはなりません。
家族と共有することで、仕事もプライベートもスムーズに
私は、連絡をもらったらすぐカレンダーに入力します。そして、直前に先方からリマインドが来たら、再確認。来ない場合は、こちらから「明後日よろしくお願いいたします。」などのご挨拶メールをお送りし、間違いないか確認するようにしています。
ツールは、Googleカレンダーを活用しています。フリーランスになった当初は、手帳で管理していました。紙に慣れている、タスクも合わせて一目で確認しやすい、といったメリットがあったからです。
ですが、東日本大震災を経験したこと、結婚したり子どもが生まれたりしたことにより、オンラインでのスケジュール管理に切り替えました。
フリーランスは、仕事する場所や時間が日によって異なります。そのため、夫にスケジュール表をシェアし、いつ・どこで仕事しているのかを把握してもらっています。万が一天災があった時、また子どもが熱を出したりした場合に、どちらがより早く保育園に駆けつけられるかがわかりますし、帰宅までにどのくらいの時間を要するのかも、だいたいわかります。
子どもの保育園の行事、土日の予定や夫の飲み会もここでシェアしているので、「この日は晩ごはんいらないんだな」と早めに把握できたり、「この日出張の依頼があったので、保育園のお迎え頼める?」などのお願いもスムーズにできています。
手帳時代はスケジュールと一元管理できていたタスクは、別のアプリで管理しています。いろいろ試した結果、私は「Todoist」というアプリに落ち着きました。仕事のタスクはもちろん、お買い物リスト、保育園への提出物なども管理。思いついたらすぐ入力する他、電車に乗っている時間などにタスクを見直す時間を作り、頭を整理して、抜け漏れを防いでいます。
びっしり詰めすぎず、不測の事態に対応できるよう空き時間をつくる
スケジュールの立て方についても、少しご紹介します。
私の場合は、月曜の夕方と土曜にチアのレッスンが固定である他は、流動的です。空いている時間に、キャリアコンサルタント、ライターとしての仕事を入れています。土曜が仕事の日なので、平日のんびりする日を作ることもあります。
キャリアコンサルタントとして、面接官や研修講師をしたり、就活イベントに話者として登壇したり、個別の相談に乗ったり。ライターとして、取材に行ったり、原稿を書いたり。
キャリアコンサルタントとしての仕事は、採用活動や研修が活発になる春は、やはり立て込みます。夏は、子どもたちが夏休みのため、チアのイベントや大会、テクニック強化講座などで大忙し。ライターの仕事には、季節ごとの繁閑の差はありません。
午前中は、家事をしながら、メールチェックや経費入力などをして過ごします。午後は、じっくり原稿に向き合ったり、研修の準備をしたり、チアの振りを考えたりして過ごすことが多いです。原稿執筆や振り作成は、乗ってる時はすごく進むのですが、まったく思いつかない時は一向に進まない、という類のものです。そのため、子どもの寝かしつけ中に閃いて、寝たあとに急いでノートに書き留めることもよくあります。
また、子どもがまだ幼く、いつ熱を出すか読めないため、インフルエンザやノロなどが流行る冬は、あまり仕事を詰め込みすぎないように心がけています。加えて、これまでの経験から、仕事が忙しい時のしわ寄せは、結果的に子どもに行ってしまいがちなので、気をつけてコントロールしています。
実はこの春、研修担当として来てくれないか、とお声がけいただいたのですが、稼働時間の面で条件が折り合わず、見送りとなった案件がありました。結果的に、それでよかったと今実感しています。
4月に保育園で一つ上のクラスに上がった我が子。昨年は、4月に認可外保育園から認可保育園に転園したため、慣れるまでに時間を要しました。
ですが、今年はお教室が変わっただけ。お世話になっている保育園では、担任の先生はいますが、常にいろんな先生が関わってくださる仕組みになっており、どの先生も子どもの名前を呼んでくれます。加えて、我が子は全く人見知りしない性格。担任が変わってもそこまで影響ないのでは、と淡い期待を抱いていました。
ですが、大好きだった先生が異動となり、他の系列園から来た初めてお会いする先生が担任となり、お教室も変わって、イヤイヤ期も重なり、想像以上に影響が出てしまったのです。
朝、家を出る時にまず、イヤイヤ。保育園について、先生に引き渡そうとすると、しがみついて離れない。仕方なく引き剥がすと、大泣き。帰宅後も、「ごはんの支度してくるね」と言っても、「行かないでー!」と泣きます。日中の緊張や不安からか、なかなかうまく眠れない日々が続いており、先日の寝かしつけは、なんと6時間もかかってしまいました。私の方が先に疲れて、思わず寝落ちしそうになりました。
私は、子どもに手がかかるうちは、子ども優先で仕事しようと決めているので、スケジューリングに裁量権があるフリーランスは、ありがたい働き方です。
もちろん、会社員時代より稼いでいるフリーランスの方も、たくさんいらっしゃいます。どんな働き方をしたいか、ご自身に合ったスタイルを模索してください。
親しき仲にも礼儀あり、が上手くいく秘訣
最後に、報酬の取り決めと契約書についてお話ししたいと思います。
私は、新しいパートナーと仕事を始めたり、既存パートナーでも新しい業務を請け負ったりする際には、業務委託契約書を取り交すようにしています。当たり前のように聞こえるかもしれませんが、人づてで紹介があった場合、契約周りがうやむやなまま業務に突入することも、よくあることです。先方が契約書について何も言わない場合は、こちらからお願いするようにしています。
・報酬の中に、交通費やその他の経費は含むのか、別請求か
・キャンセルがあった場合、支払いはどうなるのか
・報酬が上がる可能性はあるのか
・どのくらいの頻度で仕事依頼が見込まれるのか
・請求書を出すタイミング、支払いのタイミング
などの確認が不可欠です。
「金の切れ目が縁の切れ目」ということわざもあるほど、お金は非常にデリケートで重要なものです。
そのため、私は最初に必ずこれらを確認し、書面にしてもらっています。もともとの知り合いだったり、出会って間もないパートナーだったりすると、言い出しづらさを感じることもありますが、あとでトラブルを招かないためには、絶対必要なことですよ。
いかがでしたでしょうか。
スケジュールにしろ、案件獲得にしろ、お金にしろ、フリーランスは全て自分に責任が降りかかります。取引先や周りの人に迷惑をかけないように、また自分自身のためにも、慎重に物事を進めていく必要があると言えます。
副業や複業を目指す方、これからフリーランスになる方に、少しでも参考になれば幸いです。
専門家:天田有美
慶應義塾大学文学部人間科学科卒業後、株式会社リクルート(現リクルートキャリア)へ入社。一貫してHR事業に携わる。2012年、フリーランスへ転身。
キャリアコンサルタントとしてカウンセリングを行うほか、研修講師・面接官などを務める。ライター、チアダンスインストラクターとしても活動中。