副業や複業がメジャーになりつつある中、興味はあるものの、「自分にはどんなことができるのかわからない」「フリーランスは、ライターやアナウンサーなど限られた専門職のみの働き方だと思っていた」という人が、まだまだ多いと思います。ですが、営業や企画・マーケティングといった文系総合職にも、フリーの働き方は広がりつつあるのです。

 

「文系学生の6〜7割が営業職に就く」と言われるほど、営業職経験者は多いもの。でも、転職に際し、営業経験をどう活かしていけばいいのか?と悩む声をよく耳にします。副業にトライする際も、引き続き営業をしたり、コンサルティング営業をしていた方がコンサルタントになったり、という派生の仕方が多いのではないでしょうか。

 

では、フリーランスという働き方において、営業力はどのように活用できるのか?延長線ではなく、他の職種にトライしていくにはどうしたら良いのか?ポイントをお話していきたいと思います。

営業力活用法

私がフリーランスになって思うことは、営業力はまさに万能!ということ。やっておいてよかった!とつくづく感じます。当時は大変だと感じており、営業が大好き!というタイプではなかったのですが。
そもそもフリーランスは、自分で営業をして新しい仕事をとっていかなくてはいけませんから、営業力は絶対に使う力なのです。あらゆる場面で営業力の有効性を感じることができますが、一番実感したのは、意外な場面でした。

 

私は、ライター・キャリアコンサルタントのほか、チアダンスのインストラクターという仕事をしています。主に子ども向けに指導をしているため、メインで接するのは子どもたちです。ですが、「クライアントは誰か」と考えると、ある意味では保護者の皆さんであるとも言えます。例え子どもたちが楽しくレッスンを受けてくれていても、保護者が「通わせない」と決めたら、私は生徒を失うことになるからです。
そのため、保護者の方にチーム運営や指導の方向性をご理解いただくこと、密なコミュニケーションを取ること、を心がけています。ですが、時にコミュニケーションロスが起き、トラブルに発展してしまうこともあります。そんな時は、保護者の方が何に不満を感じ、何を解決したいと思っているのか、しっかりと耳を傾ける必要があります。

 

このエピソードには、営業で鍛えられた力が活きる場面が、いくつも詰まっています。皆さんはお気づきになりましたか?

 

まずは、多様な考え方を持つ相手に自分の考えを示し、理解してもらう『プレゼン力』。相手が望んでいることを察し、『先回りする力』。そして、トラブルに向き合う『逃げない姿勢』と、『傾聴力』。私は営業時代、「怒っているお客様には、解決したいことがある。まだお前に期待してくださっている証拠だ。何を望んでいるのか、逃げずに耳を傾けなさい」と言われていました。

 

チアのスクール運営に営業の経験が活きるなんて、思ってもみませんでした。やってみて、初めて気づいたことです。これはあくまで一例ですが、他にも意外な場面で活躍することは、きっと大いにあるでしょう。
“営業力”と一言で言っても、こうして分解してみると、いろいろな要素が合わさっていることがわかりますよね。そして、それぞれの要素を抜き出してみると、その中でも自分は何が得意なのか、その力をどう活用できるか、見えてくると思いますよ。

営業以外の経験のない職種にトライするには?

経験がない職種で、プロフェッショナルとして仕事をしていくためには、手っ取り早いのは、やはり資格を取ることでしょう。直接活かせる資格があるなら、取得することをオススメします。専門的な知識を身に付けられることはもちろん、実践の場でどう活用するかを学ぶことができます。資格の種類や提供してくれる学校・協会にも寄りますが、仕事を紹介・情報提供してくれるケースもありますので、大きな助けになるでしょう。

 

私の場合、チアダンスインストラクター及びキャリアコンサルタントの資格を取得しました。会社員をやりながら、いずれも3ヶ月から半年ほどかけて、週末に講座に通い、試験を受けました。
チアダンスは20年以上続けていましたが、指導方法をちゃんと学ぶのは初めてのこと。今まで自分が受けてきた指導をベースに教えてきましたが、体系的に知識を得て、レッスンの組み立て方など実践的なことも学び、模擬レッスンをしてみた経験などは、その後大いに役立ちました。

 

キャリアコンサルタントの資格の勉強は、当時リーダーとしてチームをまとめる立場にあったので、業務ですぐ使える手法も多くありました。キャリアカウンセリングの歴史、様々な学説などの知識については、正直覚えるのが大変でした。ですが、背景を知ることで、現在なぜこのようなカウンセリング手法が確立されているのか理解が深まり、興味を持って取り組めたことを覚えています。
通常業務に加えて、受験生のように週末勉強する生活はなかなか大変でしたが、自分が強く興味を持っている分野なので、学んでいて面白く、やり切ることができたと思います。

 

資格以外の道は、フリーランスとして仕事を始める前に、会社員として経験を積んでおくことです。やはり、経験がない職種でいきなりプロとしてやっていくのは難しいからです。異動願いを出す、プロジェクトに参加する、転職するなどして、希望する業務を数年経験をしておくだけでも、仕事始めの立ち上がりは全然違ってくるはずですよ。

 

これらが難しい場合は、これまで培った力を軸に、少しずつ領域を広げていくのが良いでしょう。例えば、組織で営業力を強化するための営業企画に挑戦する、マネジメント経験を生かして研修トレーナーをやる、といった感じです。今までの経験をベースとしているので、結果を出しやすく、新しい領域への挑戦もすることができます。
この仕事の広げ方は、フリーランスをやっていく上で、仕事の幅や強みを広げるにもとても有効な手段ですよ。

 

また、その領域に詳しいパートナーや、信頼して仕事を任せてくれるクライアントを見つけることも、大切なことです。営業職であれば、お得意様と言えるクライアントを抱えていることも多いはずですね。すでに信頼関係ができていたり、人となりを理解して応援してくれる人に、仕事をもらったり、紹介してもらったりすることができると思います。もちろん、現職や古巣の仕事を奪うような不義理があってはいけませんが、業務展開の足掛かりとして力を貸してもらえるようならば、お願いすると良いでしょう。

 

いかがでしたでしょうか?
あなたもぜひ、営業力を分解し、その中からさらに自分が得意と言えるものを探し、活用できる場面を想像してみてください。
また、資格を取る、なるべく会社員時代に経験しておく、得意を軸に領域を広げる、信頼できる人を頼るなどして、少しずつ営業以外の業務に挑戦していってくださいね!

専門家:天田有美

慶應義塾大学文学部人間科学科卒業後、株式会社リクルート(現リクルートキャリア)へ入社。一貫してHR事業に携わる。2012年、フリーランスへ転身。
キャリアコンサルタントとしてカウンセリングを行うほか、研修講師・面接官などを務める。ライター、チアダンスインストラクターとしても活動中。