ファッション系のシェアビジネスは月額固定でサービス競争

シェアリングエコノミーに関して、本連載でいろいろな分野のビジネスを取り上げてきましたが、今回は、みなさんの身近な服やバッグなどのファッション、家具、家庭用品、DIY、工具などのモノに焦点を当てて世の中の動きをレポートします。

まずは、月々のレンタル料金が決まっていて、何着でも服が手元に届く女性向けのオンラインファッション・レンタルサービスを行うairCloset。会員ユーザーが好みのスタイルや気に入ったアイテムを設定すると、スタイリストがリクエストにマッチする服を3点選び、届けてくれるというサービスです。
2015年2月にサービスを開始し、2016年8月にはスマホ用アプリも登場。ライト会員は月額6800円、レギュラー会員は月額9800円と、2種類の価格設定をしています。気軽にいろんな服を試せて、普段自分で感じているコーディネートとは違う取り合わせを提案してもらえるというメリットが人気のようです。

airClosetと似たようなサービスに、mechakari(メチャカリ)があります。月々5800円でアースミュージックアンドエコロジーをはじめとするブランドの”新品の服だけ”をレンタルしてくれるのは、女性にとっては嬉しいもの。アプリで、ニーズに迅速に応えられることも大きなポイントかもしれません。
一回に手元に残しておけるのが3点という縛りがありますが、1か月間に何回も借り換えることが可能。60日借りれば自動的にもらえるというシステムです。こちらはスタイリストの提案はありませんが、アプリ上でコーディネートしてくれるので、参考になります。

このほか、ブランドバッグを月6800円で借り放題できるLaxusというアプリも誕生。ルイ・ヴィトン、グッチ、シャネル、プラダ、エルメスといった高級ブランドをはじめとする14,000種類のバッグを簡単に借りることができます。
今や、ファッションも所有するのではなく、気軽に借りて楽しむのが普通になりつつあるのかもしれません。

質よりも量を重視する子供服ならではのシェアリングサービス

上記で紹介したファッションレンタルは、企業と個人を取り持つBtoCのサービスですが、CtoCでのシェアを形にしているサービスもあります。コンピュータソフト開発の株式会社VONOVO寺田倉庫株式会社が2015年6月に開始した子供服シェアリングサービスMycleでは、Web上で簡単にサイズの合った子供服を借りることができます。

月額1200円の会費でチケット1枚と交換。それを使ってひと月分の服を借りるサービスで、送料800円を合わせて合計2000円で利用できます。サイズが小さくなった服を出す側は、着られなくなった服をサイズごとに仕分けしてダンボール箱に入れて送付するだけ。借りる側は、その内容をweb上で閲覧しながら、好みのものを選ぶことができるシステムです。設立1周年を迎えた2016年の報告では、10,000万着を超える服の交換を実現したと発表されています。

専門性に特化、細分化される日用品、機械工具

家具・家電の分野では、家電レンタルの「かして!どっとこむ」のように30年以上続いているサービスに、根強い人気があるようです。また、CtoCのシェアリングでは、機械工具日用品雑貨のシェアリングサイトができ、旋盤の四爪スクロールチャックや芯出し顕微鏡など、プロ用ともいえるレンタル商品を扱うサイトも見られるようになってきました。

ここでひとつ、おもしろい取り組みを紹介しましょう。沖縄県内のシェアサービス「モノシェア」ではアプリを使って、ギター、自転車、ミシン、抱っこ紐、発電機など今すぐ借りたいニーズに応えるサービスを展開。「もったいない」を「ありがとう」へ変える、をキャッチフレーズに、地味ではあるけれど地域のつながりを強くする活動として力を入れています。

これ以上伸びない?「モノ」のシェアリングビジネス

これまで挙げたサービス以外にも、フリマサービスのメルカリ、地域を区切って「売ります、あげます」やレンタル、就職情報までを集約して地元に貢献しようとするジモティ、楽天のモノシェアなど、「モノ」のシェアリングビジネスは急成長しています。しかし、CtoCで共有するモノシェアリングビジネスは、まだ巨大な市場を創造したとはいえないのが現状ではないでしょうか。

たしかに、スマホアプリによって、使いやすさが向上したことでCtoCにおけるシェアリングビジネスは、成長エンジンがかかっているように見えます。ただ、CtoCのモノシェアリングに関しては、民泊の爆発的な成長と比べ、今一つ社会の関心の高まりを感じられません。

ですが考え直してみれば、単価の安いモノをシェアするのは、それほど大きな経済効果は期待できないのかもしれず、そこに注目するのは間違いかもしれないという見方も出てきます。
先に紹介した沖縄のシェアサイトのように、地域のつながりのために役立てる発想も大事ではないかと思ったりもします。それも含め、モノに関するシェアリングビジネスは、これからどう進化していくのか、市場をウォッチする側の視点も探りながら見守っていきたい分野です。

取材・記事制作/ナカツカサ ミチユキ

ノマドジャーナル編集部
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