これまで、評価に関して、どのようなHR Techの活用が可能なのか、どのようなサービスがあるのかについて説明してきました。今回は、実際に企業がどうやってHR Techを活用しているのか、まずはアメリカの事例にフォーカスしてご紹介したいと思います。

アメリカでの最近のトレンドについて

◎従来型の評価を廃止する企業が増えている

日本の人事評価システムは、その昔、アメリカのシステムを倣って導入されたといわれています。しかし、そのアメリカで、近年、評価システムに変化が起きています。何が変わったかというと、「評価をしない」という選択をする企業が今、増えてきているのです。
その変わりとなるものとして現在、「パフォーマンスマネジメント(パフォーマンス管理)」という手法が注目されています。

◎単純なランクづけは人を育てることができない

アメリカや日本ではこれまで、MBO(目標管理)という手法をとる企業が多く、これは目標への達成度でランク付けや点数付けを行うものでした。SABCDといったランクやプラスマイナス、もしくは点数によって、目標項目をどの程度達成できたのかを測ってきたのです。しかし、社員をランクづけしても成果にはつながらない、人材育成にも役に立てにくい、という問題点があります。

◎統一基準での評価にはそもそも限界がある

点数やランクをつけるためには、基準が必要となります。しかし、多様なキャリア・スキル・バックグラウンドを持つ大勢の人を一つの基準で測る事自体が、本来、無理な話です。人材=人財という考えが出てきて、ようやくそのことに多くの企業が気づき始めました。

◎パフォーマンスマネジメントで、どう変わる?

パフォーマンスマネジメントは、社員の能力とモチベーションを引きだすと同時に、ビジネス上の目標達成を目的としたマネジメント手法です。MBOや年次評価では半期ごと・年次ごとに評価していきますが、行動に対してできるだけリアルタイムでこまめなフィードバックをすることで、目標の再確認と軌道修正を素早く行うことができます。これを繰り返すことで、社員は自主的に仕事に取り組むようになり、そうなればパフォーマンスが上がり、最終的に会社の利益にもつながるといったわけです。また、社員間のコミュニケーションが増えるといったメリットもあります。

こうした変化を理解した上で、評価に関するHR Techの導入事例をご覧いただければと思います。

AOL × BetterWorks(ベターワークス)

BetterWorksはパフォーマンス管理プラットフォームです。社員自らが目標設定し、上司からリアルタイムで継続的なフィードバックをP2P(ピアツーピア方式)でダイレクトに受けることができます。プロセスを見える化することで、チームで目標達成を目指すことができるツールです。

AOL社は、大手インターネットサービス会社です。日々変化の激しい業界にあって、成長を続けるためには、スピーディーでリアルタイムのマネジメントが必要でした。BetterWorksを導入することで、変化の早いビジネスのスピードに合わせて目標管理をリアルタイムで行い、プロセスを透明化することができるようになり、企業ビジョンの浸透スピードがアップしたそうです。また、社員間の連帯感が生まれ、個人のパフォーマンスの向上も期待できます。

BetterWorks:https://www.betterworks.com

参考:http://content.betterworks.com/betterworks-case-studies/aol-case-study

Beachbody × BetterWorks(ベターワークス)

BetterWorksの導入事例をもうひとつご紹介します。

Beachbody(ビーチボディ) はフィットネス製品の人気ブランドで、日本にもたくさんの商品が輸入されています。これまではPDFによる年次評価を行っていましたが、マネージャーと社員の関係をもっと密にしたいと考えていました。そこでBetterWorksを導入し、全社統一的な目標管理をすることにしました。これにより社員は、自分の日々の仕事と経営レベルの目標がどうつながっているのかを自覚しながら、仕事ができるようになったといいます。また、フィードバックのサイクルを年次から4半期ごとにしたことで、社員の生産性が上がり、軌道修正が素早く行えるようになったそうです。評価システムを変え、企業体質を変えることに成功した好例といえます。

参考:http://content.betterworks.com/betterworks-case-studies/beachbody-case-study

Hargray × SilkRoad Performance(シルクロードパフォーマンス)

SilkRoad Performanceは、シンプルな操作性や柔軟性を備えたクラウド型パフォーマンスマネジメントソリューションを提供しています。パフォーマンスマネジメントでは、マネージャーと社員とがコミュニケーションを密に取りながら短期目標の設定や評価、P2P方式のフィードバックを行うことができます。

通信事業者であるHargray社は、積極的な人事改革に取り組もうとしていました。しかし、これまでのような画一的なシステムでは全社員に適用できないとして、ニーズに合わせた柔軟な管理ができるSilkRoad Performanceを導入しました。これにより、マネージャー毎に異なるフォーマット、異なる頻度でパフォーマンス管理ができるようになったといいます。社内ニーズに合わせたカスタマイズが手軽にできるのも、ITを活用したサービスならではのメリットといえます。

SilkRoad Performance:http://www.silkroad.com/

参考:http://www.silkroad.com/hr-resource-center/benefit-mall/

まとめ

評価手法については、いま大きな変化の波が押し寄せてきています。アメリカのトレンドは日本にも影響を与え、日本でもさまざまなHR Techが登場しています。次回は、評価の業務におけるHR Techの日本での導入事例を取りあげてみたいと思います。

記事制作/神尾 マキ

ノマドジャーナル編集部
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